替え玉
Rotten flower
第1話
熱い麺に息を吹きかける学生。特に仕事もないのでただその姿を見つめる店主。
ただその店の中に吹くなんとも言えない静寂は外から見ても伝わってくるのではないかと思えるほどだ。
「兄ちゃん、どうだい。こだわりのスープと麺は。」
店主が話しかける。よく漫画などで見る頭にタオルを巻いたようなとてもあきりたりな店主だ。
「美味しいです。」
学生はそう答えた。高校3年生である彼は今年度は「勉強の年」と言えるほどに勉強をしていた。
それもそのはず、彼の行きたい大学はとても偏差値が高かった。しかも、医学部志望の彼はとても狭き門を越えなければならないのだ。
彼は推薦もなければAOも受けない。一般入試というやつだ。
彼は店主に向けてこう言った。
「大学入試の結果が出たらまたここに来ますよ。」
「ありがとう。」
店主は心からそう返事した。
ラーメンはとても熱かった。
3月後半。彼はまたこのお店へ来た。店主は来るか来るかと待ちわびていた。
「入試どうだったの。」
店主が早速訊いた。
「後で言います。」
彼はそう言った。
彼はさまざまなことを話した。友達のことから彼女のこと。そして、大学のこと。
話しきれない内容だったので替え玉をするほどだった。
「でどうだったの?」
彼が最後のひとくちを口に入れた瞬間、店主は食い気味にそう訊いた。
彼は麺を飲み込みこう応えた。
「落ちました。」
店主は残念そうな顔をした。
「頑張ってたのになぁ。」
「しなきゃよかったです。」
「何をだ。」
「替え玉。」
替え玉 Rotten flower @Rotten_flower
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