第23話 開眼。

パキン!!


戦場に謎の音が響き渡る。

今まで戦っていたイェスト族、レアト、スカルは攻撃の手を止める。

その音の正体はフツロフェリシダットから鳴るものだった。


「掴んだ俺の魔法の真髄。見せてやるよ。」

幸福の目フォルトゥナ開眼。」


フツロは自分の魔法を巨大恐竜アンフィコエリアスを倒すときに掴みかけていた。

それを使用するのを躊躇っていたのはまだ掴みかけていただけであること。

この大量の敵の中使いこなせるかが不安だということ。

そして、この真の魔法に恐怖していたということ。

フツロは気づいていた。

この魔法、この目を使うということは運命を操るということに。


今ここに幸福の目が開眼した。それは神を起こすきっかけにすぎないが。


フツロの眼球が白く染まる。それがこの目の特徴。白く染まったその目は未来を見通す力を増大させ、さらなる力をフツロに与えることになる。


レアトとスカルの周りにいたイェスト族、フツロの開眼を目の当たりにしたイェスト族が一斉にフツロに襲う。


「見えてんだよ。カスが。」


スッ


フツロが手を動かす。

すると一体のイェスト族が盛大に躓き、そのイェスト族が持っていた剣が近くのイェスト族を刺し、さらにそのイェスト族が持っていた武器が別のイェスト族を攻撃する。まるでドミノ倒しのようにイェスト族が倒れていく。

フツロはイェスト族に触れず手を動かしただけ。それに応えるかのようにイェスト族は倒れただけ。

レアトとスカルから見るとただイェスト族が倒れたその状況だが、イェスト族は分かっていた。フツロがやったということを。


「なんだ?もう来ないのか?雑魚が。」


フツロの煽りにイェスト族は怒り狂う。


「キェー!!!」


「きっしょ。死ね。」


ブシャ!


フツロの視界にいたイェスト族の首が飛ぶ。

イェスト族は理解した。触れてはいけないものに自分たちは触れてしまったのを。


ドンドンドンドン!!


どこからか太鼓の音が鳴る。


バッ!

その音と同時にイェスト族はその場を離れた。


「なんだぁ?お前ら。」


「いや〜強いね。君たち。」


その声の主に気づいたのは未来を見ていたフツロともう1人だけだった。しかし、今はその1人は現れることはない。


その声の主はいつからか分からないが上からレアトたちを見ていた。その横には巨大な太鼓。

「長のオナーリー!」


「やぁ諸君。私の名はムッジーナイェスト。聞いてのとおりイェスト族の長だ。」


「イェスト族が喋った?」


「驚きましたね。」


「バカの中にも賢いのがいたもんだな。」


「えぇ、そこの馬鹿どもはただの雑魚です。

ここにいる私含め私の周りにいるイェスト族は賢いのでご安心を。」


ムッジーナの周りには本人を含め5人のイェスト族が立っていた。その身なりは人間と同じで、違うのは肌の色。


「今からあれを相手に?」


「なに言ってんだ!レアト!あいつら俺らにビビって降りてこない。あいつらも雑魚なんだよ!」

(正直この目はそう長く使えない。やるしかないか。)

「レアト!スカル!来い!」


「‼︎‼︎」


バッ


レアトとスカルはフツロの異変に気づきすぐにフツロの元に向かう。


「フツロ大丈夫??」


「なんとかな。だが、正直もうこの目は長く使えねぇ。詳細を話す時間も無いし手短に言う。俺がこの目であいつらを下に落とす。この雑魚らはもう手を出せねぇからあの5人を3人で倒す。」


「了解。」


幸いこちらにはレアトがガキツカイで出したアルピナクラスの才器がある。人数的には負けているがこの才器の差で勝てると踏んだフツロは行動に移す。


スッ


先ほどと同じように手を動かす。それと同時に上にいた5人のイェスト族の床が崩れ下に落ちてきた。


ドガン!


「よぉ、遅いからお迎えきてやったぜ。」


「ありがとうございます。」


それと同時にフツロの目が元に戻る。


「おや?目の色が変わりましたね。てことは先ほどまでの謎の力は使えないということでしょうか!」


これと同時にムッジーナは手に持っていた瓦礫をフツロに飛ばす。

この不意打ちにフツロは反応できなかった。


「‼︎!」


ボゥ!


レアトがその瓦礫を炎龍で燃やし消す。


「ギリギリセーフですね。」


「助かった。」


体力を操るものラファエラ

「気休め程度でしょうが。やっておきます。」


「魔法はかなり使えるようですね。」

ズキン!

謎の頭痛がムッジーナを襲う。


(ッ!今のは?)

「まぁいいでしょう!なかなか楽しめそうな3人ですね。」


「相手の内3人は任せてくれませんか?」


「いけるのか?」


「いけるかはわかりませんが、やります。やりたいんです。」


「スカル!」


「はい!」


「お前にも1人任せていいか?」


「了解です。」


「案外余裕そうですね。お前たち!相手してこい!」


バッ!


ムッジーナの部下がそれぞれレアトの前に3人、スカルの前に1人。そしてフツロの前にムッジーナが立ち尽くす。


「やり合おうか。」


「楽しみましょう!」


***


「おい雑魚1.2.3.。死ぬ覚悟はできてるか?」


「雑魚じゃなくてジーコ兄弟。」


「ほぼ一緒じゃねぇか。」


***


「また戦うことになるとは。」

(確か太鼓を叩いていた方でしょうか。)


「オ、オレのナマエはベル。ムッジーナさまにたすけられた。オレのからだはムッジーナさまのもの。

ムッジーナさまのてき。オレのてき。」


「ベル?いかにもペットにつけそうな名前だ。あなた、ただのペットなのでは?」


「オマエはころす。」


***


三者それぞれ敵と相対する。イェスト族の猛攻を耐え凌ぎ体力と魔力が減らされた彼らだが、

大丈夫という自覚があった。

なぜかというと、相手がカイードではないから。特にレアトはフェリシダットの中でカイードと敵対した数少ないフェリス。カイードではない安心感は大きい。

そのため今回レアトは3人を相手取ることに決めた。


「おい。ほぼ雑魚兄弟。3人でやっと一人前ってことでよかったか?」


「あなた煽りに煽りますね。」


「自分より弱いやつに煽る必要あるか?魔法なしで戦ってやるよ。」


この時レアトはミハエルアルマの使用時に魔法の底上げを行ってしまったこと。フツロに使用したラファエラで思ったよりも魔力が減ったこと炎龍では倒せないと考えこの3人を魔法なしで戦うことを決めていた。

魔力を込めた体術に使う魔力の量は魔法を使う時に比べると大幅に少ない。


ブォン


レアトが体に魔力を流し込む。

魔力を体に流すというのは即ち血液と魔力を混ぜ合わせることを意味する。

だが、レアトの師匠はヌエボ。体術の達人である。

レアトはさらに一段階上のレベルに達していた。


「おい雑魚ども。魔法なしでお前らは殺す。」


ドン!

レアトの筋肉が少し膨張する。

フェリシダット流の体術の中で習得できる最高到達点。

花火化。

血液と魔力を混ぜ合わせるだけでなく。魔力で心臓の鼓動のスピードを上げる。そうすることで魔力と血液の循環スピードが上がり、全てのパラメータが上昇する。

しかし、心臓に負荷がかかるためレアトの場合は5分間だけ使用可能となっている。

この時魔力と血液の循環スピードが早すぎるため魔力が少し外に漏れるようになっている。その時の魔力がまるで花火のように弾けることから、ヌエボは花火化と命名した。


「時間がないんだ。死ね。」


ボグン!


「ナッ!」


兄弟の1人を遠くに蹴り飛ばす。


「次。」


バキバキ!


「ブハァ!」


次男の心臓部分をブン殴る。

この時全ての肋骨が折れた。


「ラスト。」


ブシャッ!


「ガハッ!」


腹に穴が空く。

「終わり。」


瞬殺。まさしく瞬殺。この間実に8秒。レアトはほとんど魔力を消費せずに3人を倒すことに成功した。

レアトはスカルの助けに向かう。


レアトとスカルはフツロの邪魔をしないよう離れた場所で戦闘を行っていた。なのでレアトはスカルがどこにいるか分からない状態なので、早く合流しないといけない。


「スカルさーん。」

(さすがにスカルさんでも勝てると思うけどな。まぁでもあの人元々は本だから死にはしないけど。)


「オ、オイ、スカルってこれか?」


「‼︎‼︎」


振り向くとそこにはスカルの髪の毛をもって引きずってきたベルが立っていた。


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