新人潰し

「じゃあ、おやすみ。侑斗くん」

「うん。おやすみ。夜更かししすぎたらだめだよ?」

「は~い!えへへ」


そうはにかみ、伊豆奈は家へと入って行った。

その後ろ姿と、家に入るまで見守った後、僕も家に帰った。まだ昼の熱が漂いつつも、気持ちの良い夏風の吹く住宅街を辿っていった。


「……もしもし?」

“…はい、どうしましたか?”

「後ろに5人。多分、私服警官」

“了解しました”


やっぱり、なんやかんやで警察も動いてるんだな。

後ろで聞こえた「やめろ!うぁぁぁぁぁ!」という鳴き声を無視しながら、そんなことを思った。



「ただいま~」と言って家に入ると、母親がお帰りと言いながら玄関に来た。時刻は10時。僕の為にこんな時間まで…とあきれながらも、心の奥底で感謝した。

自室に戻り、PCを起動して目の前に座った。

可愛い可愛い伊豆奈を右上に表示しながら、今日も掲示板を訪ねた。


「はぁ…ほんと、こいつらは頭がないなぁ…」


今回の旅行で邪魔を仕掛けてきていた奴らのリスト。無事に、阻止して除去することが出来てよかった。

ふと、携帯が鳴り響いた。


“【臨時】従業員の逆恨みか!?有名テーマパークで殺人事件発生”


と書かれたネットニュースが通知された。


「…やっぱ、新人に任せたらいけなかったかな」


まあ、後始末は任せてあるし、大丈夫でしょう。



「うう…昌山さん…」


警察署の中にある独房の中で、僕はうずくまりながら泣いていた。

僕は、どうして昌山さんを殺したのかと心のうちに問いかける。正当化するための言い訳はいくらでも思いつくが、その根底にはいつも侑斗がいた。


「あいつさえいなければ…あいつさえ…」

「なら、復讐するか?」


窓の外から、急に声が聞こえた。

振り返ると、そこには昌山さんを持って行った二人の姿があった。


「…すまなかった。あの時は、俺らもああしなければいけなかったのだ。だが、もう大丈夫だ。今は、お前を助けに来た」

「ああ。復讐の方法をじっくり考えよう」

「う…あ、ああ!」


俺は、彼らに賛同して、窓を開けてもらい彼らの元へ身を乗り出した。

この地獄を、終わらせる。そのために、この人たちと___


「…なんて、言う訳がないだろう」

「……な、ん___」


喉を、何かが貫通していた。すぐに声は出なくなった。

喉を貫通しているのは、日本刀。刃の根元までしっかりと刺されていた。

まもなくして、耐えきれないほどの痛みで、意識が吹っ飛んでいった。

ああ、昌山さん。僕、僕__________。



体から、力がすべて消え去り、そのまま窓から落ちていった。


「…行くぞ」

「ああ」


可愛そうに…。そう思いながら、見つかる前に逃げることにした。

俺らがこうした間にも、侑斗はきっといちゃいちゃしているのだろう。

それがたまらなく許せなかったが、逆らったら何をされるかわからない以上俺らには何もできることはなかった。




「………以上が、すべてです。もう、罪は償いますので、どうか捕まえてください」

「そう…」


あの男。本当にでよかったのだろうかと、私は不安を感じた。それほどまでに、この事件は痛々しすぎるものだった。


これで、見つかるまで残り半月分。そのすべての話を、私は書き留めておこうと思った。

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