捜査
「…以上が調査報告となります」
「…」
そのすべての報告を聞いた後。ここにいるほとんどがため息をついた。
「…本当にそれだけなのか?」
「は、はい…申し訳ありません
「いや、怒ってるわけではない」
ため息の理由はおそらく、ほとんど大半がその証拠のなさだろう。
人が殺された時にあるアリバイやら証拠やらが全く出てこないのだ。
それはいくら捜査しても、いくら検証しても変わらない。そもそも返り血の一つも残さずに死体が消えるため、どこでどう殺されたのかの見当が全くもって見あたらない。
頼りになる防犯カメラさえ、その犯行現場は全く映らない。
「そういや、例の山の証拠はどうなった?」
「全て掘り出して調査したんですけど…指紋どころか本人以外の細胞が全く検出されないんですよ…」
もうここまでこれば、ある種の天災なのではないかと一同が錯覚してしまう。
ただ、証拠と呼べるものこそないが、とある法則がある。
それは、被害者は必ず、夜に出歩いた男性ということだ。
最近、この町では「愛の為に人を殺す猟奇殺人鬼」の噂が広がっている。もしかしたら、それは根も葉もない嘘なんかじゃなく、本当のことかもしれない。
そんなこと考えている俺らのもとに、ある一報が届いた。
「…それ、本当か?」
「…はい…」
その一報は、俺らの頭に打ち付けるような痛みを感じさせた。
「…ここが現場か」
その現場には、最近頭を悩ませるように見る残酷な死体が埋まっていた。
「頭部を一刀両断…いよいよ何をしたいのかわからねぇぞ…」
その死体を見て、思わずため息を漏らした。
全く。犯人は何を考えてるんだ。これまでの法則性はどうしたってんだ。だって、今回の被害者は…
「被害者は、新谷香苗。高校1年生の、女子高生です…」
「…っくそ!」
もはや、法則性なんてないかのように前例にない殺人をしてきやがった。
「…なるほど…ありがとうございました」
「はい。頑張ってくださいね、おまわりさん」
純粋なその言葉にも、「ははは…はい」としか返せないほど疲弊しきっていた。
色々と整理すると、彼女の死亡推定時刻は深夜の2時。その時間の2~4時間前後の情報をかき集めるもそれと言って証拠が現れることはなかった。
「先輩…」
「…くそっ!あぁ!」
思わず癇癪を起してしまう。当たり前だ。どうして。あいつはここまで人を殺しておいてまだ生きていられるっていうのだ。
それも今回は未来ある高校生を。とっくに限界を迎えていた怒りもそろそろ心すらも満たしてしまいそうだ。
「…こうなると、今まで話を聞いてきたやつらにも疑いをかけるしかないかな…」
「そうですね…取り合えず、まずはいろんな人の事情聴取をしましょう。もしかしたら、もしかするかもしれません」
俺はその言葉を聞き、藁にも縋る思いでとりあえずほかの話を聞くことにした。
しかし、そのすべてに惨敗し今日は家へと帰った。
「…うん。うん。そっか」
電話越しに、今回の件についてなんと言ってきたかの確認が終わった。
「わかったよ。ありがとう。あとは時間さえ流れちゃえばそれで終わりさ」
とはいえ、死体が見つかるたびにその調査の時間が増えていっているような気がした。
全く。こちとら不安だっていうのに。と思いながらも、しばらくの盲目生活。彼女しか見えない世界が一体どれほどに美しいのか。そんな想像をしながら
「あ!侑斗くん!こっち!早く~!」
「わかったよ~!」
僕は、この世界の主人公の元へと走っていった。
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