おうちデート 2
そうして、僕らが起きたのは3時ごろ。胸に顔を埋めている伊豆奈はまだかわいらしく寝息を立て寝ていた。
少し崩れた掛け布団をかけなおしながら、僕は伊豆奈を見ていた。そうすること30分。
「…んん…ふわぁ…」
「あ、起きちゃった」
「起きちゃったってどういうこと?」
眠りから覚めた伊豆奈にそういうと、伊豆奈はぷくっと膨れながらそう言った。全く、伊豆奈の両親にさえ今なら土下座できる気がする。
「ははは。冗談だよ」
「むぅ。本当だよね?」
「もちろん。僕は伊豆奈一筋だから 」
そういうと伊豆奈はパァっと顔を明るくさせて「私も!大好き!」と純粋な腕で抱きしめてきた。僕もそれに応えるように正義が染みついた腕で抱きしめた。
「あら、起きたの?これおやつ。二人で仲良く食べてね。…ふふっ」
母親がおやつと言って持ってきた二つの皿の中にはショートケーキが乗っていた。
「ああ、これ知ってる。駅前にできた新しいケーキのお店のやつだよ」
「へぇ。おいしいの?」
「わかんない!」
元気にそう答える。これがまたかわいらしいのだ。
そう思いながら、僕はケーキにフォークを入れた。柔らかいスポンジが豆腐みたいにすっと切れていく。だけどいざ食べようと持ち上げると形は全く崩れず、その形を保っていた。
一口。ふわっとスポンジは溶け、やさしい甘さが口に広がり、その甘さはイチゴの甘酸っぱさとクリームの濃厚だけどさっぱりした甘さを包み込んで…とにかく、めちゃくちゃうまかった。
「…うまっ」
「んん~!おいしい~!」
伊豆奈は口元にクリームをつけながらそう言った。
「伊豆奈。口元」
「え?あ、本当だ」
伊豆奈は口元を人差し指でなぞり、クリームをふき取った。
そのクリームを数秒眺めた後。伊豆奈はクリームを鼻に付けた。
「…何してるの?」
「ん?いや~、これをとってくれるやさしい彼氏がいないかなって」
「…」
伊豆奈はその可愛い顔を差し出してきた。
可愛い。いつしか僕はその顔に引き込まれていった。
「…えいっ!」
「わぁ!」
僕は鼻に付いたクリームを舐めて取った。
「…えへへ。幸せ!」
「そりゃよかった。俺も幸せだよ」
ああ。本当に。
この空間が楽しくて楽しくてたまらない。
この先、なにがあるかはわからない。だからこそ。この先の不確定な日々の癒しの為に、僕はこの幸せで満ちた時間をいっぱいに抱え込むように堪能した。
その晩ご飯にはなぜか赤飯が炊かれていた。母さんに理由を聞いても
「そりゃぁ、あんたらを見てたら自然と炊いてしまっただけや」
と言って、目をそらされた。一体何だったんだろうか。
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