花見

花見

昨日のことがあり疲れ切っていた僕はリビングで一晩を過ごしてしまった。

まだ眠い中で遠くから


「侑斗くん。起きて、朝だよ」


と伊豆奈の声が聞こえたから仕方なく重い瞼を開いた。


「あ、起きちゃった」

「…お前は俺を起こしに来たんじゃないのか?」


これが本日最初の会話だった。


「だって、先輩の寝顔とってもかわいいんですもん」

「…人をからかうのはあまり止した方がいいぞ」

「ええ~本当の事なのに~」


全く。何て可愛いんだ僕の彼女は。


「ごめんね、伊豆奈ちゃん。うちのバカ息子が全然起きないから…」

「自分の息子を馬鹿呼ばわりとは…中々ひどいな」

「あんたが早く起きればいいでしょ?」

「まあまあ、私も楽しいですし!」


中々険悪ムードになっていたのを察したのだろう。


「ほ、ほら!先輩。せっかく作った朝ごはんが冷めちゃいます!」


テーブルを見てみると、輝いてるじゃ表しきれない立派な朝ごはんが並んでいた。


「本当、伊豆奈ちゃんのおかげで助かってるわ~。侑斗も見習いなさい?」

「うるさいなぁ…」


まだ重い瞼をこじ開け椅子に座る。


「いえいえ。まだまだですよ。…お義母さん」

「まあ!」


照れた伊豆奈の顔を見て、思わずご飯を一口頬張った。

味は、言うまでもないだろう。



「いやー、毎朝すみませんねぇ」

「別にいいよ。母さんも来てくれて嬉しいって言ってるし」


まあ、毎朝一人分の食事の準備の手間が省けるんだ。そりゃ助かるだろう。

それに、毎朝冴えない息子に好意を寄せてくれている可愛い美人さんが家にいるのは誇らしいだろうしいい自慢にもなるんだろう。


そう考えながら、前に部屋で呟いたことを思い出し聞いてみる。


「そういえば、今度花見にでも行こうと思ってるんだけどどう?」


そう聞いてみると伊豆奈は目を見開いて


「花見…ですか…?」

「あ、嫌だった?嫌なら」

「行きます!!!というか行かせてください!」


どうやら、呟いていたことを間違えて聞いていた、なんてことはないらしい。


「そっか。なら、また日時決めでも…」

「先輩!週末は何もないんですよね!?」

「え?ま、まあそうだけど…」


ここまで食いついて予定を合わそうとしている所を初めて見たかもしれない。


「じゃあ今週末の日曜でいいですか!!!?」

「あ、うん。じゃあ日曜ね」


と言いながらスマホのカレンダーアプリに予定を書き込む。

そういえば…

そう考えながら遅れないように彼女の隣を歩いた。


心なしか歩く速度が速い気もした。

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