好きがゆえの行動
今更だが、自己紹介をしよう。
僕の名前は
これといって何か特技があるわけでもないが、これでも一応就職が決まっている安泰人だ。
そして、僕の人生を語るうえでいなくてはいけないのが
「おはよう、侑斗くん」
彼女、浜宮伊豆奈だ。
まさに優等生な彼女が、僕の恋人だなんて未だに信じられないが、そんな感情も、毎日の彼女のあいさつでどこかに飛んで行ってしまう。
それほどの魅力的な彼女に今日もみとられてしまい
「おーい、侑斗くん?もしも~し」
「ん?ああ、ごめん。ボーっとしてた」
「む~。そんなこと言ってよそ見してたんじゃないの?」
「そんなことしてないよ」
と怒られてしまった。
こうしてぷくっと脹れた顔も国宝級に可愛い。
「そいえば、侑斗くん放課後暇?」
「うん。今日は何もないけど」
僕はあと何回この顔を拝めるのだろうと考える。
まあもちろん死ぬまで拝むつもりではある。
「やったあ!じゃあ、私にも何もないんで駅前のカフェ行きましょ!」
「うん、いいよ。伊豆奈は何食べるの?」
「私はやっぱり…」
伊豆奈のスイッチが入ったことを確認してまた考えようとしたが、結局何を考えていたか忘れてしまった。
夜。
明かりが一つも付いてない部屋で、僕はパソコンとにらめっこをしていた。
見ているのは、僕らの通う高校の裏掲示板である。
この裏掲示板では学校にまつわる暗い噂が多く張られていた。
校長一つとってもかなり多くある。
校長のカツラにまつわる噂から昔にあった犯罪の話など、挙げだしたらキリがないほどだ。
そんな魔境ともいえるここに、伊豆奈の噂がないわけがなく
「夜の街に裏商売。おまけにこの前人殺しだなんだのデマ流してたやつは今度は既婚政治家とワンナイトラブ…」
もちろん、全部と言っても過言じゃない程ほとんどが嘘である。
だが、伊豆奈を愛する僕にとっては
「…ムカつくなぁ…」
そう思い、内容とIDを控える。
胸糞悪い物を見てしまったので、気分転換に違う画面を開く。
「はあ…やっぱかわいいなぁ…伊豆奈…」
そう呟くと、その声を聞いたらしく自作の伊豆奈人形が復唱した。
「ふふ…よしよし。もう敵はいなくなるようにしてあげるからね」
そう言い、またパソコンの画面に目を移した。
「ふぅ…つかれたぁ〜」
愛する人の、その一つ一つを漏らさないために。
「よいしょ…よいしょ…ふぅ~」
山のように積まれた荷物を積んだ荷台を引きながら途中にあるちょうどいい石に腰を掛けた。
「ほんと、何でこうも面倒な事させるかねぇ…」
想い人を浮かべながらそんなことを呟く。
「君たちもそう思うだろ?」
返事はない。ただただ流されるだけになったモノたちに独り言を零すようにそう言った。
「でも、努力は大事だし、仕方ないからもっと頑張るよ」
そう言って、また荷台を動かした。
もちろん、伊豆奈は知らない。だが、それでいい。
それが、いい。
正義は、人知られず行われていることが一番かっこいいんだから。
そうして、遠くから響くサイレンを聞き、なるべく急いで事を済ませた。
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