第90話 つまり、ラギオスとモグランはすごいってこと
さてどうしたものか。ここでラギオスに”なぎ払えー”とか言う勇気はないぞ。ラギオス、ちゃんと手加減できるかな?
「ラギオス、今の小さい状態だと、魔法の威力も小さくなるとかそんなことないよね?」
『ないですね』
「そっか~」
まずいな。あの程度の魔法的ではきっとラギオスの魔法を防ぐことはできないだろう。そうなると、室内魔法訓練場はラギオスによっていともたやすく破壊されることになるだろう。それならば。
「よし、モグラン、あの的の手前にめちゃくちゃ固い壁を出してよ」
『任せるんだな~』
フンスとモグランが鼻から息を吐くと、すごく固そうな壁が出現した。黒光りしてるけど、何かの金属とか、希少な岩石とかじゃないよね?
それを見た周囲の人たちがざわめいている。
いかんな。悪い予感がする。これ以上、時間をかけると騒ぎが大きくなるかもしれない。早めにパァンだ。シュッとしてパァン。俺はラギオスに向き合った。
「ラギオスには魔法であの壁を壊してもらいたいんだけど、キレイに壁だけ壊すように。他のものは壊しちゃダメだよ」
『承知いたしました。しかしあの壁、かなり固いですよ?』
「そうなんだ? ラギオスがそう言うからにはすごいんだろうね」
『ええ、それはもう。スゴクカタイを押し固めたものですからね』
「へぇ……」
なんだそのスゴクカタイって。初めて聞く鉱石? だな。まあいいや。今からラギオスがそれを破壊するのだから、なんの問題もないはずだ。
そんなラギオスは壁を前にして、どうやって破壊するかを考えているようだった。
だがそれもほんの少しのことで、ラギオスが一歩前に足を踏み出した。するとラギオスの周囲に光のドリルがいくつも生み出された。ドリル!?
その高速回転しているであろうドリルは壁に当たるとギャリギャリという高い音を出しながら火花を散らせた。なんだか工事現場にいるようである。安全確認、ヨシ!
その様子を見て、口をあんぐりと大きく開けているオーディエンスの皆さん。ようやく音と火花が収まったあとには、キレイさっぱり壁はなくなっていた。
よしよし、ちゃんと指示を守ってくれたみたいだな。さすがはラギオス。
「よくやったぞ、ラギオス。さすがだね。モグランもありがとう」
『この程度のこと、大したことではありませんよ』
『いえいえなんだな~』
大したことはないと言いつつも、しっかりと胸を張っているラギオス。ようやく自分の実力を示すことができたようで、誇らしげな様子だ。それにしてもさっきのドリルの魔法が気になるな。
「ラギオス、さっきの魔法はなんと言う名前なの?」
『ゴッドドリルですね』
「なるほどね。あんまり使わない方がよさそうな名前だね」
これはまずいような気がする。神の名のつく魔法なんて、聞いたことがない。もしかするとこの世界にはゴッドファイヤーボールとかもあるのかな? 聞くのが怖い。
よし、ごまかそう。さいわいなことに、小さな声でラギオスと会話したので、他には聞こえていないはずだ。
「どうだった? 俺のラギオスとモグランはすごいだろう?」
「すごいです! どちらも知らない魔法でした。私でも使えるようになりますか?」
「あー、たぶん無理なんじゃないかな? どちらも火属性魔法じゃないみたいだからね」
目を輝かせるフレアちゃんには悪いが、どちらも教えるわけにはいかない。使えるようになれば、どちらも絶対に大問題になる。間違いない。ここで俺が対応を間違ったら、大惨事になるぞ。
考えろ、考えるんだ。これ以上、大騒ぎにならない方法を。
「次はフレア嬢の番だよ。フレア嬢の日頃の鍛錬を見せてもらおうじゃないか」
「もちろんですわ!」
気合いを入れたフレアちゃんがファイヤーボールを使った。それは見事に魔法的に命中し、的を揺らした。
すごいな。さすがにさっきのドリルを見たあとだと色々と思うところはあるけど、ちゃんと自分で魔法を使えて偉い。
俺はここぞとばかりにフレアちゃんを褒めちぎった。それはもう、俺に関心が向かないようにしっかりと。
そのかいあってか、フレアちゃんはすっかりご機嫌になった。三回くらいファイヤーボールを使ったところで、魔力切れに近くなり、ストップさせられたけど。
「王子殿下は魔力量が多いのでしょうか?」
「どうなんだろう? 呼び出した魔法生物が使う魔法は、俺の魔力とは関係ないみたいなんだよね。あとそれから、俺のことはルーファスでいいよ」
「ルーファス様……」
何? なんでフレアちゃんはそんなに感慨深そうに俺の名前をつぶやいた? もしかして、特別な人みたいな感じにとらえちゃった!?
そんなつもりはなかったのだが、今からそんなことを言う勇気はない。これからは気をつけないと。
「フレア嬢は魔力量が多いのかな?」
「私の年齢にしては多いそうです」
「そうなんだね。魔力量を調べることはできるのかな?」
「正確には調べられないみたいです。私の場合はファイヤーボールを何回使うことができるかで判断したみたいです」
「そのやり方なら俺だと無理そうだな」
魔法生物を何体、呼び出すことができるかで判断するか? でも、ラギオスを呼び出した時点で、”すごく、多いです”ってことになっていると思う。
つまり、調べられないってこと。
********************
ここまで読んでいただき、まことにありがとうございます!
もし、面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録と、星での評価をいただけると、今後の創作の励みになります。
よろしくお願いします!
********************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。