第40話 突然の殺害予告!?
「助けただろうが! 二度もな!」
「こ、殺さないでええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええーっ!」
逆ナン女がゲドゲドの恐怖面で命乞いをしてきた。
「オメーら、『この俺を殺そうとしておいて』、自分は殺されたくないってのは、どーいうこったよ? どんだけ自己中で身勝手なんだ、ふざけんなッ!」
「ゆ、許してくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいーッ!」
だってさ。
自分たちから上から目線で攻撃しかけてきて、負けが込んだら命乞い……。
なんて、自分勝手で不愉快な連中なんだ。
「なんで、許さなければいけないのだ? お前らは、俺を殺そうとしたんだ。殺されもするだろ? 感情的なバカでもわかる理屈だよ」
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいィッ!」
まあ~、逆ナン女はぶっ殺してしまってもいいのだけれども……。
無抵抗の奴を喜んで殺すのは、童貞ちんぽこ剣聖みたいだから嫌だよなぁ~。
「お、お願いッ! なんでもするから許してっ!」
「なんでもするねぇ~……本当に、なんでもするのかい?」
「なんでもする! なんでもするからッ! 殺さないでェェェーッ!」
「そこまで言うなら、殺さないでやるよ」
よし! 生かして利用しよう!
まだ使えるものは、もったいない精神でなんでも利用する――。
隠居生活で身に着いた生活の知恵だ。
「魔王、やめろ! 殺すなーっ!」
「うるせぇなぁ。今、殺さないつったろがッ! ちゃんと話を聞いとけッ!」
殺すな、殺すな、うっさいんじゃい! 自分は平気で人を殺すくせによぉっ!
さっきの童貞ちんぽこ剣聖野郎と一緒に始末しておけばよかったわ!
「勇者、死ねェーッ!」
「はあーっ!? 『死ねェーッ!』とはなんだ!? 私を助けに来たのではないのかーっ!?」
バカは無視。
なんなのだ、こいつは?
人が死にまくってるのに、この間の抜けた空気感……。
おびただしい流血と親しかった者の死を目の当たりにしても、まったくマジになってないのが怖い。
というか、きしょい!
きっと、人が目の前で死ぬ生活が当たり前なんだ……恐ろしいねぇ。
「ひぃぃーっ! 勇者様、助けてくださいいいいいいいいいいいいいいいっ!」
それはともかく、逆ナン女を片付けてしまおう。
「おい、逆ナン女。寛大にも見逃してやるから、国に帰ってお前を使ってる連中に伝えろ。『勇者様は現地民に食い殺されてうんこになっていたから、もうこの世にはいません』ってな」
迷惑で有害な不愉快な凡愚どもに、寄ってたかって来られるのはごめんだ。
面倒な厄介事が猖獗を極めるようなことになる前に、ケリをつけねばならない。
「わかったな? わかったら、復唱しろ」
しっかりと逆ナン女に言いつけるなり――
「あーひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!」
逆ナン女が正気を失った顔で、笑い狂った。
ええ~……。
「……やれやれ。狂ってしまったか」
軟弱過ぎて雑魚過ぎる……凡愚は、イキってるやつはいっつもこうだ。
「お、おい……どうしたのだっ!? 恐怖のあまり気がふれてしまったのか……?」
「こいつらみたいな雑魚じゃ、俺の強大な魔力に耐えられないんだよ。雑魚どもにすれば、俺の魔力に触れるってのは、『猛毒を吸い込む』みてーなもんだからな」
なんだかなぁ……。
ちょっと本気を出しただけで、このざまだ。
世俗に溶け込むには、本当に力を抑えなければいけないのだな……。
ある意味で、勇者にぶっ殺されて弱体化していてよかったよ。
でなければ、この島の全住人が発狂して廃人になっとたわ。
「なんだとっ!? 絶対嘘だっ! 私は何ともないぞっ!」
「バカが風邪をひかないように、お前は俺の魔力を浴びても何も感じないのだ」
「誰がバカだ! 私は勇者だぞーっ!」
「そう、お前は勇者だ。だから、この俺を前にしても正気を失うこともなく、バカ面下げてはしゃげるのだ」
ほーんっと、ろくでもねぇ存在だわ。
「まぁ、いいや。バカどもはみんな片付いたし、店に帰るぞ」
厄介な面倒事に矢継ぎ早に巻き込まれたが、なんとか当初の目的を果たした。
あとは、このバカを連れて店に帰るだけだ。
そして店に帰り次第、メイに特別勤務手当および労災をもらう。
そんで、酒飲んで寝る! 今日のお仕事、終了でいっ!
「帰るって……魔王、お前っ! 私の仲間を皆殺しにしておいて、よくもそんな口が利けるなっ!」
突然、勇者がブチキレた。心の病気かもしれん。
「あのさぁ~……お前を利用してさんざん傷つけたあげく、都合のいい時だけ勇者様~とかおべっか使って助けを求めるような人間の屑が、『仲間』なの?」
「え……?」
「え? じゃねぇよ。お前、愚弄されてコケにされてんだぞ。悔しくはないのか?」
正論を突きつけてやるなり、勇者が苦い顔をして唇を噛んだ。
「あいつらは、お前を捕まえて祖国に戻れば、文句なしの英雄よ。でも、お前は依然、罪人のままなんだぜ?」
「私は罪人ではないっ! 何度言わせるのだっ!」
「オメーがどう思っているかなんてかんけーないんだよ。世界中の人間がみんな、オメーのことを罪人だって思っているんだからよ」
勇者が俺にを睨み付けてくるが、俺を睨んでも仕方がないだろ?
「だから、祖国に帰り次第、お前は刑に処されるのだ。そして、純情清純派の俺では口にできないようなありとあらゆる恥辱的な拷問を受けた後、残虐に殺されるのだ」
「そ、そんなことは……」
俺の話を聞いて自分の置かれた状況を理解したであろう勇者が、泣きそうな顔で言いよどむ。
「……ない」
「ない? ない、と言ったのか?」
「う……うむ……」
自信のない自己肯定……自分に言い聞かせているのに、声に力がない。
いい気味だ、今までの迷惑料代わりにいじめてやる。
「いいや、『ない』なんてないねッ! 『そんなことしかない』ねッ!」
「なにぃっ!?」
「お前はもう、みんなにとっての勇者様じゃねぇんだ! 信じていたかつての仲間が、お前をボコボコにして拉致しようとしたのが、なによりの証拠でいッ!」
「それを言うなあああああああああああああああああああああああああああーっ!」
また勇者がキレてきた。
いちいち面倒なやつだなぁ。
こいつのご機嫌うかがいなんて、絶対にせんぞ!
なんで、偉大なる魔王のこの俺が、こんなバカ娘に気を遣わねばならぬのだ!
こいつがどんなに複雑な心境をし、そして苦悩していようが、俺は知ったこっちゃない! こっちは、かわいそーな被害者なのだ!
「黙って聞いていれば、好き放題言いおってーっ!」
「ムキになるなよ。人間関係なんて半分以上は上辺だけの付き合いの騙し合いなんだから、卑劣な性悪バカに裏切られたからって、そんな気に病まなくていーんだよ」
嗚呼、魔王様って優しい。
いきなり、逆ギレして襲いかかってきた無礼なバカな小娘に対して、金銀財宝よりも価値のある言葉を授けてあげるんだね! すげーや!
「なんだとっ!? 奴らは私を裏切った者だが……魔王を倒す戦いの仲間だったんだぞっ! お前に悪く言われるいわれはないっ!」
「あっそ、おやさしーこって。じゃ、話も終わったみてーだし、とっとと店に帰るぞ」
とはいえ、こいつ手足折られてるから、自分で歩けないんじゃないのか?
「え~。こいつ、おぶるの~? 絶対やなんだけど~!」
「その必要はない……」
手負いの勇者が、ゆっくりと立ち上がった。
「なんだ、元気じゃん。じゃあ、さっさと帰るぞ。出勤が遅れると、メイにどやされるし、遅刻の罰金が発生するからな」
言ってて気づいたが、メイの奴はとんでもなく極悪な経営者だなッ!
なんで、俺は偉大なる魔王なのに、あんな悪辣な小娘に顎で使われているのだ?
一回真剣に、今後の隠居生活について考えねばならんな。
「帰るぞ、勇者……いや、新人ホステス」
などと言うなり――。
「魔王。お前を成敗してくれるっ!」
唐突に勇者が、殺害予告をしてきたッ!?
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