ろく. 悩みといざない ~囚われております。助けにいかなきゃ、その彼、死んじゃうかも~
ろく. 1
ちゃぽん…。
止めたつもりのシャワーから、お湯のしずくがこぼれ落ちた。
しっかり止まっていなかったのだろう。
浴槽のお湯につかっていっていた
『…
その頭のなかで再現されたのは、その日、耳にした
「あたし、何か
考えるばかりで、答えなど思いつかない。
『あたしはぁ! あの子が、機会があれば謝りたい、仲直りしたいって言ってるって聞いたから、みんなを誘ったんだよ?』
『それで、あたしは強制参加だったの…』
『そうだよ。ちゃんと、都合聞いてあげたでしょ(
なのに伊藤さん、話すこと、ないって言ったんでしょう?
あの子なりに、あんたのこと考えて、理想の押しつけか何かで、あんたの選択に反対してるのかと思っていたけど、そうでもなさそうだしさ…。
あの
たしか、あの子も
いまになって、そりがあわない、気にくわないっていうなら、距離、計り直せばいいだけのことじゃない。
あの子が受かって、あんたが落ちたら、学年だって違うくなるんだし。
それで、いいじゃないよ、ねぇ?』
〈…——……————♪…〉
ぼぅっと、友人とのやりとりを回想していると、なにか聞こえたような気がして、
(…
テレビの音とも思えない、幻聴めいた気配。
意識して耳を澄ましてみたが、なにも聞こえてくるようすはない。
妙な気分になったが、
『正直、あたし、あの子とうまくやっていく自信、なくなっちゃった』
(あたしも、なくなっちゃったなー…)
数時間前、耳にした
このままやり過ごしてしまうのは、かなり後味が悪い。
伊藤
〈——…
お湯につかりながら、うとうとしかけていた
「…コウ?」
現実で耳にするはずのない声を聞いたと思ったのだ。
その名を口にしたことで、そうした感覚もうやむやになってしまったが…。
今、自分は眠っていたのだろうか?
疑問に思ったところで自覚する。
(いけない。ここで寝たら、ふやけちゃう)
すっかり目が醒めてしまった
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