いち. 2
とりあえず、目的の情報はゲットした。
けれども、思いもしなかった問題が浮上だ。
(気になってるヤツって誰?
『ゆき』って、まさか…)
父の仕事の都合などという理由ではなく、小さくてもいいから庭つきの一戸建てを望んだ一家の一大転機で、誰も反対はしなかった。
以前、住んでいた街と二駅しか違わないので、引っ越したにしては環境変化が少ない方。
意欲さえあれば、以前の友達とも交友が保てる距離だ。
それでも、学区が変わったので、交友関係はかなり変化した。
そんななか、二年あまりの空白をへて再会し、彼女を感動させた少年がいたのだ。
実際は劇的でもなんでもなく、必然的な要因がいくつか重なった結果だったが、
本人が『あまね』と呼ばれることを嫌うらしく、
弟の友人とはいえ、ごくまれにすれ違うていど。まともに話したこともない。
親しいといえるほどの間柄ではなくとも、その彼は、ただ者とも思えない、こましゃくれた気性の持ち主で、
小学生だった当時から、年下という抵抗をおしやるほど、ひとの目をひく存在だった。
『ガキよガキ…』と、つきはなして考えようとするなかにも
引越して姿を見かけることもなくなると、それもこれも、若さと思春期にありがちなホルモンバランスによる気の迷いと、忘れかけていたのに…。
中学生活、最後の学校祭。
もれなく
もとより弟のお墨つき――驚くほど音感のよい美声の持ち主で、ルックスも悪くなかったが…。
一コ級下の彼が、自分のことをあまりおぼえていなくても、運命的なものを感じた
だが思いかえしてみれば、その日、彼がすすんで話しかけていたのは、彼女のクラスメイト。
なにを思ってか彼は、初対面の
学年では、いつも一〇番以内。
それも、総合点が一致し順位が並列しがちな上位にくい込んでいる
(一生を左右することなのに、そんな理由で決めちゃうなんて信じられない…。
まだ二年だし。そこそこ
もしかして…。彼が気になってるヤツって、ひぃさん?)
(
進路の話題なんて社交辞令で…。ひと目ボレで、情報収集とか? まさか!
いくらなんでも、そんなの、ありえないって)
自分は、少し思いこみが激しいところがある――
それでも、客観的な目も多少は持っていたから重症ではない。
自覚してるつもりだった。
そそっかしいと言われるし、早合点して、よく間違える。
だから、これも思い違いだと。
(たしかに、ひぃさん、もてそうだし、事実もてるけど、でも…。
あの時、まだ幽霊の格好してたよね?
やり過ぎた感じで…。 眉、描き直して、ナタでも持たせれば山婆なみの…。
パープルのリップだって無惨にはみだして…。
そうだ…。
ちょっとくらいきれいでも、いや、素でも、かなりかわいいけど、ありえない。きっと、笹中に『ゆき』って子がいるんだ。その可能性の方が高いじゃない…)
思い直してみたが…。
(でも…。じゃぁ、
いちど思いついてしまうと、きちんと納得できる理由でもないことには、ぬけだすこともできなくて…。
重く湿った雲のようなものが、
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