リハビリ最終段階、外へ
水曜日、晴れた。佐々野さんがやってきて「さ、今日は外に行くわよ」と言われ、帽子を被って病室を出た。
エレベーターで地下へ、そこは駐車場になっている。「こっちよ」駐車場から外に出るスロープや、階段を歩かされた。それから外に出た。
入り口前の一段下がったところに出たのだが、そこの坂を上ったり下りたり、階段を上ったり下りたりした。
「そういえば、家の前坂って言ってたよね。どれくらいの勾配?ここぐらい?」と佐々野さんは私が今上り下りした坂を指さした。
「勾配はこれくらいですが、もっと長いです。もう少し急なところもあると思います。でも、階段で降りることも出来ますから」と私は答えた。
「そうね、坂より、階段の方が危なくないかもね、じゃ、少し歩くよ」と佐々野さんは言い、病院の裏へと民家の間を歩きだした。私はここ当たりの道は知っていたので、難なくついて行った。細い道を歩いていると、私の病室の窓から見える工事現場に着いた。「あ、ここに繋がっていたんだ、あれ、託児所?」私は病院の裏口近くに『椿が丘病院託児所』と書いてある看板を見つけた。
「あ、それね、看護師のお子さんを預かっているのよ。不規則な勤務だから、一般の保育園もなかなか使えないからね。病院で託児所があるのもここの自慢なの」と佐々野さんは誇らしげに言った。確かに夜勤などもあり、年中無休の病院だと、小さいお子様を預けて働くのは大変。そういえば、私の知り合いの看護師は、子どもが熱が出ると、勤務している病院に連れてきて、様子を見ながら仕事していたって言ってたな。本当に大変な仕事なんだ。と、改めて思った。
「さ、ここから中に入るわよ」階段を下りて、また私は地下駐車場に戻ってきた。「えっとリハビリ室に行くね」と佐々野さんに言われ、エレベーターで2回に戻った。
「体の動きの確認」と言われ、座ったり立ったり、色々な場合の動きをさせられた。
「外も難なく歩けるし、動きもスムーズ、これなら退院しても大丈夫そうね。明日も外に行きましょう」と佐々野さんは言い、「今日はこれで終了、部屋に戻りましょう」と言って病室に戻った。
久しぶりの外は気持ちよかった。でも階段が少しあっても平地に変わりない。家の前は坂だし、近所のスーパーまでは普通に歩いても片道20分かかる。階段は使わなくても行けるが坂の上り下りがあるし、まして怪我の身だとなかなか大変なことになりそう。でも行けるようにならないと。帰ったら毎日外歩きをしなくては。私はお茶を飲みおやつを食べながらそんなことを考えていた。
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