3月14日(火)

 ホワイトデーとやらなので、甘いものを買って帰るつもり。夫はそういうのに無頓着なタイプなので、セルフです。そういえば昨晩はバラの花束を抱えて歩く男性を見かけました。すごいなぁ。

 寒の戻りで気温が低めなのに、木に咲く花や水道から出る水の温度から、何となく春を感じるせいで常にアイスクリームが食べたい気持ちになります。もう、自動的に口にアイスクリームを放り込むマシンが誕生し……たら困るな。終わってしまう、色々なものが。

 中学生のときに(始祖鳥が大空を滑空していたころ)、国語担当の教諭が「アイスクリームが食べたい、って英語で何て言うか知ってる?」と聞いてきたことがあって、真面目だった私たちは「うーん、I want ……、いや、I want to eat ……?」など考え込んだんだけど、教諭の答えはこうだった。

「アイスクリーム! アイスクリーム! って言う」

 ……うん、そうね、それだわ。というのを偶に思い出します。

 ルールに没頭しすぎない、ささやかな自由を持って過ごしたいなんて、思ったり思わなかったり。


 昨日の夜の話をします。

 雨が通り過ぎた後でとても寒くて、スプリングコートにマフラーをぐるぐる巻いて帰宅したら、あの男の子が我が家のドアの前に座り込んでまして。すごく驚いたのはもちろんですが、これは本格的に何か問題のあるお子さんかも知れません。

 それでも怪しいと思わないのは、服装がきちんとしているからです。服も汚れてないし、靴もきれい。キャラクターのついた服とかではない、どことなく品のある格好。

「こんばんは。あのー、どうしたの?」

 話しかけると、男の子はこちらを見てから小さな声で「こんばんは」と返事をしましたが、それだけです。うーんと、何か、会話をしなければなりません。

「えーと、お家の人は?」

「あ、もしかして鍵を失くしたの?」

「うーんと、このマンションの子だよね?」

 ……おーう、返事がない。どうしよう。

 手元のエコバッグにはさっき買ったバナナが入っておりますが、これをあげてしまうと餌付けになってしまうし、万が一バナナがアレルギーだったら困る。親御さんが出てきて「夕飯前に食べ物を与えるなんて」と言われたらとりあえず食べ物を与えて様子を見るという安易すぎる自分の考えを恥じるしかないし、責任取れないし、何しろこの年頃のお子さんとのコミュニケーションの取り方がわからん……なんも、わからん……はい、考えすぎ。

 どうしたものか。考え込んでいたらその子はすくっと立ち上がって、階段をのぼって行きましたとさ。


 思い出したんですけど。あの男の子、すごく、幼い頃の弟に似てるんですよね。それでちょっと他人な気がしないのかも知れません。

 ちゃんとお家に帰れてると良いのですが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る