第10話 魔法の講師
「は、初めましてプレセア様! この度は何とお礼を申し上げればよいか。本当に、本当にありがとうございました!!! つきましては、私、プレセア様には精一杯仕えさせていただきますので、宜しくお願いいたします!!!」
私と目が合うなり、少女は私にペコペコと頭を下げ始めた。
えーっと、魔法の講師じゃなかったのかしら?
とにかく顔をあげて落ち着いてもらって、あら、折角セットされていた髪がもう乱れているわ。直してあげてっと…うん。やっぱりこの子可愛い。日本人形みたいね。今度は着物を作ってあげようかしら? 動きづらくて嫌がるかしら…
「プレセア、そんなに見つめたらルシアが困ると思うよ。」
「ルシア? …そう、貴方ルシアって言うのね。初めまして。私はプレセアよ。」
私の顔をじーっと見つめて惚けていたルシアは、そこで初めて名乗っていない事に気づいたみたい。ハッと肩を震わせてから「ルシアです」と丁寧にお辞儀をしてくれたわ。
年は私の1つ下だそうよ。
「ルシアは今日から我が家の一員として、アンナの下で働いてもらう事になった。住み込みメイドと兼任してプレセアの魔法指導も受け持つ。プレセア、彼女からしっかり学びなさい。」
「…かしこまりました。」
返事はしたけれど少しだけ腑に落ちないわね。
いくら魔法の勉強から遠ざかっていたとはいえ、素性の知れない拾い子を教師とするなんて、学ばせる気が無いのかしら?
「ご不満は尤もですプレセア様。ですが、騙されたと思って一度私の授業を受けてください。プレセア様にお教えするのに私が相応しいと分かっていただけるはずです!」
あら、顔に出ていたかしら。ごめんなさい。でも、不満があった訳じゃないのよ。
ただ…お父様の思惑がさっぱり読めないだけよ。
でも、今の言葉で少し話は変わったわね。
ルシアは私の特異性を承知の上で講師役を引き受けたんだわ。
きっと素晴らしい魔術師の方なのでしょうね…
ってあら、それはそれで心が少しモヤモヤするわ。これは―――嫉妬ね。
魔法が使えないというコンプレックスは、思った以上に深い傷だったみたい。
でも、駄目よ。嫉妬なんてプリンセスに相応しくないわ。そんなもの、丸めてゴミ箱へ投げ捨ててしまいましょう。ポーイっ!!
っと、雑念を捨ててよく考えたらこれ、実は最高の状況って気づいてしまったわ。
歌魔法は未知数の力、それを駆使して聖女様は魔物を退けた。
なら、使いこなせればダンジョンに行けるじゃない!
ふふふっ、俄然やる気が出て来たわ!
「不満なんて、私はこの年まで魔法について学ぶことが出来ませんでした。知識は殆どありません。ご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんがよろしくお願いします。」
私は敬意を持って懇切丁寧に頭を下げた。
相手が年下? プライド? そんなのどうだっていい事よ。
これからは歌の練習も堂々とできるし、相棒ゲットのチャンスも到来。
プリンセスに一歩近づいたわ!
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