第70話
大賢者になると、レベル1の状態でお掃除魔法が使えた。
お掃除魔法とは、部屋の中を魔法できれいにする魔法である。
「これがお掃除魔法か……」
今までオレは光魔法しか使えなかったので、ほかの魔法を使えるようになったことに軽い感動を覚えていた。
まあ魔法を使って部屋の中をただ掃除しただけのことだが。
部屋の中をただきれいにしただけのことだが。
そしてこの大賢者の職業を得たことによって、次に覚えることができる魔法がわかるようになった。
どのレベルで魔法を覚えるのかそれがわかるようになった。
それは大賢者のスキルがどのレベルでどの魔法を覚えるのか、それを教えてくるからである。
大賢者、どうすればいい?
と聞くと、主様、こうすればいいですよ、というふうに教えてくれるようになったからである。
そして修復魔法はレベル2で使えるようだ。
修復魔法とは壊した壁を修復することができる魔法である。
そしてオレがもっとも欲している魔法は、レベルが3で習得することができるみたいだった。
それはヒール。
ヒールという回復魔法。
ヒールという回復魔法は、エリクサーと同等の効果がある。
エリクサーなんてものはダンジョンの奥深く、ダンジョンのつまりかなり下の階層までいかないと手に入れられないものだと思っていたが、大賢者はレベル3でそれを覚えるらしい。
このヒールは、体力を全回復するだけではなくて、怪我を全回復するだけではなくて、失った髪の毛まで全回復する、というものらしかった。
大賢者、すごすぎ。
そして大賢者のスキルによれば、大魔法使いもレベル1の状態でファイアーボール、ウォーターボール、ウインドカッター、アースクエイクが使え、レベル2になればサンダーボルトが使えるそうだ。
大魔法使いすごすぎだろ。
お掃除魔法を使ってレベルを上げ、修復魔法を使ってレベルを上げ、そしてヒール使ってレベルを上げ、そしてオレの髪の毛は完全復活していた。
鏡の中のオレはガッツポーズをしていた。
そしてオレは一つ目の職業、格闘家のレベルをほかの職業にも引き継げたので、オレの各種パラメーターはかなり上昇していた。
とそう思っていたら、グレアに声をかけられた。
「サトウさん、あれ? サトウさん……ですよね? なんだか少し違うような……どこが違うのかそれをうまく説明するのは難しいことですが……」
「オレはサトウだ。大賢者になってヒールを覚えたから、少し見た目が変わったんだ。容姿が変わったんだ」
「そうなんですか。そんなことよりサトウさん、今日はちょっとお出かけしませんか? わたしたちいつもいつもクエストばっかりしているじゃないですか? 今日くらいはお出かけしたいです」
というグレア。
グレアよ、そんなことより……だと?
オレにとっては重要なことだと思っていたが、グレアから言わせれば、そんなことは別にどうでもいいことだったらしい。
ええ。
せっかくヒールを覚えて髪の毛を全回復したのに、まじかよ。
「まあ……そうだな。久しぶりに、お出かけするか」
「はい」
というわけで、オレはグレアとともに、どこかに出かけることにした。
ということで、宿屋から出てその辺を出歩くことにした。
ぶらぶらとその辺を歩いていたら出店がある。
出店で何か買うか。
そういえば最近はクエストばかりでこういったふうにグレアとお出かけすることもなかった。
ほかの人とお出かけすることもなかったな。
横を歩くグレアは、冒険しているときとは違ってとても楽しそうな顔をしている。
冒険のときはいつも真剣な顔だ。
モンスターを倒したときは嬉しそうな顔をしているが。
グレアが隣でとても楽しそうな顔をしているので、またグレアとどこかに出かけるのもいいかもしれないな。
なんてことを考えてみる。
そして串肉が売っている出店の前でグレアは足を止めた。
「なんだ? グレア、もしかして串肉を食べたいのか?」
「はいっ」
というグレア。
「おっさん、串肉二つ」
といって、オレは出店のおじさんから串肉を買った。
串肉の値段は銅貨六枚。
銀貨一枚を渡すと、おつりがかえってきた。
「串肉、おいしいっ」
「うまいな」
グレアとともに、歩くながら串肉を食べる。
グレアが串肉を食べながらとても幸せそうな顔をしているので、こちらも同じように幸せそうな気持ちになった。
いつもはクエスト。
クエスト。
クエスト。
日銭を稼ぐ。
日銭を稼ぐ。
日銭を稼ぐ。
モンスターを倒してレベル上げ。
モンスターを倒してレベル上げ。
モンスターを倒してレベル上げしかしてこなかったからな。
さすがに冒険ばかりしすぎたか。
たまにはこういうことをしてもいいのかもしれない。
お出かけしてやる気を上げるのもいいのかもしれない。
「お出かけ、楽しいね」
とグレアは言うので。
オレもまた、
「ああ。お出かけ、楽しいな」
と言った。
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