第65話
「この奥に進むと、もうあと戻りはできないわよ? それでもいい? 準備はできた? グレアちゃん」
ときいてくるエルマ。
オレはいつでも準備ができていた。
準備が整っていた。
そもそもモンスターと戦うのに、モンスターを討伐するのに、いつでも準備は整っていた。
準備はできていた。
オレは毎日の飯と毎日の酒のために戦っているからな。
日銭を稼ぐために戦っているからな。
むしろ回復アイテムだとか、武器レベルを上げるだとか、そんなことは後回しになっているが。
自慢ではないが。
と、グレアは言った。
「うん。わたしもう準備はできているよ」
というグレア。
だがオレは一応、グレアにいった。
「グレア、ちゃんとヒットポイントが回復していたか? マジックポイントは回復したか、そういったことをちゃんと確認してから、奥に進もう」
「うん。そうだね。ヒットポイントと……マジックポイントと……うん。大丈夫だよ。心の準備も整ったし、戦闘準備も整っている」
というグレア。
グレアとともに、オレたちは魔の森の奥へと向かった。
そしてそこにはボスモンスターが待ち構えていた。
そこにいるのはゴブリンキング。
ゴブリンにしてはずいぶんかっこいいゴブリンがそこにいた。
かっこいい槍を持っているゴブリンキング。
見た目もなんだかゴブリンよりもかっこいいな。
ホブゴブリンよりもかっこいいな。
これは強そうだ。
ゴブリンキングLV62
ゴブリンLV30
ゴブリンLV32
ゴブリンLV34
ゴブリンLV36
これがゴブリンキングか。
ずいぶんと能力が高いゴブリンだな。
「ゴブリンキングは仲間を呼ぶからな。気をつけろよ」
というのはエレン。
「え? ゴブリンキングって仲間を呼ぶの?」
というのはグレアだった。
ゲームとかで仲間を呼び寄せるモンスターは厄介である。
そんなモンスターが現実に出てきてほしくはなかったんだが。
異世界に出てきてはほしくなかったんだが。
なんてたってそういうモンスターは、ゲームでも本当にめんどくさいモンスターだからな。
ゲームでも倒しずらいモンスターだからな。
そういった相手は。
倒すのに時間がかかる面倒なモンスターだからな。
「倒すなら、最初はゴブリンキングからにしたほうがいいわよ。ゴブリンキングに仲間を呼び寄せられたら、面倒だからね。厄介だからねっ」
というエルマ。
「うん。わかってる。まずは最初はゴブリンキングからやっつけるよっ」
というグレア。
だがゴブリンキングは先制攻撃をしてきたようで、最初から雄たけびを上げた。
まじかよ。
最初から先制攻撃とかひどすぎる。
ずるすぎる。
それってずるいだろ。
まずはこちらの攻撃を待ってからにしてほしかった。
「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ゴブリンキングは雄たけびを上げた。
と、周りから、次から次へとゴブリンが湧いて出てくる。
森の奥からゴブリンが湧き出てくる。
その中にはゴブリンだけではなく、ホブゴブリンもいた。
後ろから横から湧き出てくるゴブリンたち。
ゴブリンLV34
ゴブリンLV35
ゴブリンLV36
ホブゴブリンLV52
おいおい。
そんなにゴブリンを呼び寄せるのかよ。
ちょっとゴブリン呼び寄せすぎじゃないですかね。
そして一体のゴブリンがレベルの高い、高レベルのゴブリンなんですけど?
ホブゴブリンなんですけど?
「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
という雄たけびを上げるホブゴブリン。
魔法の詠唱を始めるグレア。
グレアの周りに巻き起こるのは、風。
その風を見た瞬間、ゴブリンキングは、
「!」
こんなふうにグレアに対し危機感を感じ、逃げ出した。
この場から逃げ出した。
なぜか向こうに逃げていくゴブリンキング。
ゴブリンキングよ、見た目はかっこいいのになぜ逃げていく。
グレアと戦え。
たしかにグレアは強すぎるから、逃げたくなる気持ちもわかるのだけれど。
「ウインドカッター」
前方にいたゴブリンたちにグレアの風の魔法が襲い掛かる。
それは前方にいたゴブリンたちをすべて上空へと吹き飛ばしていた。
その上空で、身体が切り刻まれるゴブリンたち。
そしてゴブリンキングはその風の魔法の範囲からなんとか逃げだしていた。
逃げ延びていた。
だがゴブリンキングの足だけが、その範囲に巻き込まれてる。
ゴブリンたちはその身体が切り刻まれて、そして地面へとたたきつけられる。
ゴブリンキングもまたその風の魔法を範囲内だった足だけには食らって、なくなったのは、ゴブリンキングの足。
その足は胴体がから離れてしまった。
ほかの部分は元の身体のままだったが、足だけは失ってしまった。
ゴブリンキングは足はなくなり、移動するスピードが減少した。
とはいえ、逃げるゴブリンキングをまだ倒したわけではない。
まだゴブリンキングは生きている。
「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
という雄たけびを上げるゴブリンキング。
ゴブリンキングは一斉にこいつらに襲い掛かれ、オレはなんとか逃げ延びる、オレさえ生き延びればあとはどうとでもなる、というように命令を出していた。
ゴブリンたちがオレたちに向かってくる。
「ちっ、ゴブリンキングを一撃で仕留められなかったか」
舌打ちするエレン。
「エルマ」
エレンはエルマの名前を呼び、お前が魔法でゴブリンキングを攻撃しろ、ゴブリンキングにとどめをさせというふうに促した。
エルマはうんとうなずき、魔法の詠唱を始めた。
そして。
「サンダーボルトっ!!!」
といって、雷がゴブリンキングに向かって、落ちていく。
だがゴブリンキングは隣に置いてあったゴブリンの死骸を盾にする。
そしてなんとかダメージを軽減するゴブリンキング。
ゴブリンは悲鳴を上げない。
ゴブリンの死体は悲鳴を上げない。
ゴブリンキングは敵が強すぎて泣きそうな顔をしていた。
早くここから逃げ出したいという顔をしていた。
どうしてこんなやつらと、こんな獣人族とかいう化け物と出会ってしまったのだと、そんな顔をしていた。
だがゴブリンキングはまたも雄たけびを上げる。
「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
やれと。
オレは逃げるぞと。
なんとしても生き延びてやると、ゴブリンキングはそんなことを言っている顔に見えた。
ゴブリンキングはなくなった足を引きずりながら、片足だけで、逃げる。
自分だけが逃げる。
ゴブリンキングは後ろを見て雄たけびを上げ、その雄たけびに答えるように、新たなゴブリンが後ろから出現した。
ゴブリンLV34
ゴブリンLV35
ゴブリンプリーストLV37
ホブゴブリンLV52
にやっと笑うゴブリンキング。
ゴブリンプリーストは回復魔法が使えるのである。
これでいける、これでいけるはずだ。
と笑うゴブリンキング。
そのゴブリンキングの期待に応えるように、ゴブリンプリーストLV37はゴブリンキングのことを回復魔法を使って癒した。
回復魔法をあびて、ヒットポイントが回復するゴブリンキング。
だが回復魔法をかけてもらっても、ゴブリンキングの足が治るわけではない。
ゴブリンキングの足がもとに戻るわけではない。
ゴブリンキングの足がまた生えてくるわけではなかった。
ゴブリンキングは必死に片足でグレアから逃げている。
逃げようとしている。
そんなにもグレアのことが怖いのだろうか。
そんなにも獣人族のことが怖いのだろうか。
そんな必死の形相に見える、ゴブリンキング。
だがグレアは無慈悲だった。
グレアは風の魔法の詠唱を始めた。
グレアの周りに風がふく。
そして。
「ウインドカッター」
というグレア。
グレアの風の魔法が発動し、なんとか逃げようとしているゴブリンキング、ゴブリンLV34、ゴブリンLV35、ゴブリンプリーストLV37、ホブゴブリンLV52を上空へと吹き飛ばす。
風がすべてのゴブリンの身体を切り刻んだ。
そしてその身体が上空で切り刻まれ、地面に落ちてくる。
ゴブリンキングの胴体が地面に落ちていた。
ゴブリンキングの頭部が地面に落ちていた。
「よし。あとは右から来る敵の討伐だ。エレン、いくぞっ」
オレはゴブリンは横から来るゴブリンたちをに討伐しにいく。
「オレもいくっ。お前たちは左から来る敵の討伐を頼む」
というのはエレン。
「わかったわ」
というエルマ。
オレは右から来るゴブリンLV34の顔面をぶん殴り、ゴブリンLV35の顔面をぶん殴っていた。
「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
という悲鳴を上げているのはゴブリンLV34、ゴブリンLV35。
よし。
二体のゴブリンを倒したぞ。
「ふん、やっとオレたちの出番がきたかっ」
といって、エレンはホブゴブリンLV52の首を後ろからかききっていた。
「オレのことも忘れるなっっ」
というのはアレク。
「最近、活躍するところが少なくてよお、オレだってB級の冒険者なんだぜ?」
というアレクはゴブリンLV35のことをぶん殴っていた。
「ぼくのことも忘れないでっ」
サックが火の魔法で残りのゴブリンを倒す。
次々から次へとモンスターが地面に倒れていく。
そしてモンスターを倒し、エルマたちのほうを見ると、左側から来たモンスターたちのことはすでに倒し終わっていた。
地面にはゴブリンキング、ホブゴブリン、そしてゴブリンプリースト、そしてゴブリンの身体の一部が落ちていた。
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