第42話

「朝ごはんですよ、おっさん」

 という声が聞こえて、ユイカが入ってくる。

「おはよう。ユイカ。今日も元気だね」

「おっさんも元気そうですね。なんだか毎日毎日筋肉が鍛えられているみたいで、わたしも嬉しいです」

 というユイカ。

 ユイカは筋肉フェチなんだろうか。

 それくらいオレの筋肉の発達ぶりに見惚れているようだ。

「今日はオーク肉の角煮ですよ。さあ召し上がれ。おっさん」

 というユイカ。

「おー。今日はオーク肉の角煮か。うまそうだな」

 オレはオーク肉の角煮をうまそうに食べた。

 うまい。

 これがオーク肉の角煮か。

 普通の角煮とも違う味わい深さがあるな。

 うん。

 うまいな。

 これに酒があったら最高なんだけど、クエストをやる前から酒を飲むわけにはいかない。

 酒なんて飲んで、モンスターにやられでもしたら、それは馬鹿な冒険者だからな。

 オレは朝飯を食べると、冒険者ギルドに向かった。

 今日の冒険者ギルドにいく目的は、昇格試験を受けるためだった。

 昨日冒険者ギルドにいったら、受付のお姉さんミリカさんにこんなことを言われたことを思い出す。

「サトウ様、そろそろ昇格試験を受けてはいかがでしょうか?」

「昇格試験?」

 オレはEランクの冒険者としては実力が抜きんでているから昇格試験を受けないか? ということだった。

 だから一日も早く、Dランクの冒険者になるべきだと、そうミリカさんから言われたのだ。

 もうオレの実力なら、昇格試験に受かることは間違いないだろう、といわれた。

 そしてほかの冒険者からも、あいつはもうEランクの冒険者じゃねえ、すでにその能力はBランク級だろ。

 なんていう不満の声が、そういった声が冒険者ギルドに寄せられているらしい。

 強いやつがEランクにいると、弱いEランクの冒険者、普通のEランクの実力を持つ冒険者が迷惑らしい。

 Eランクなのにその程度の実力なのかと。

 新人の、サトウとかいう名前の冒険者はEランクなのに、もっと強いモンスターを倒せるとそういわれるらしい。

 というわけで、冒険者ギルドにやってきて、ミリカさんの列に並ぶ。

 今日もミリカの列はいっぱい冒険者が並んでいて、待ち時間はちょっと長いようだ。

 でもほかの受付のお姉さんよりは、ミリカさんの列のほうがいい。

 それがオレたち冒険者にとっての日常なのだ。

 さて、前の冒険者が一人、二人と進んでいき、そしてオレの番がやってきた。

「サトウ様、おはようございます。今日は昇格試験を受けるということでよろしかったでしょうか?」

 今日はクエストの選択肢はないようである。

 昇格試験だけがある。

 昇格試験か。

 オレはその試験に受かることができるのだろうか。

 Dランクの冒険者になることができるのだろうか。

 オレって試験とか、テストとか、そういったことって苦手なんだよな。

 そういったことって、あんまり得意じゃないんだよなあ。

 そんなことを思いながら、オレは言った。

「はい。昇格試験、受けます」

 と。

 ミリカさんは言った。

「それではサトウ様、昇格試験、頑張ってくださいねっ」

 オレは昇格試験の会場という、冒険者ギルド二階へと向かった。

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