第33話

 紅蓮の炎に加入したオレは、パーティーメンバーからプレゼントをもらった。

 そのプレゼントはプラチナメイルLV3。

 新しい鎧を装備したオレのことを囲んで、エルマ、エレン、アレク、サックがオレのことを見ている。

「なかなか似合っているな」

 というエレン。

「まあ悪くないわね」

 というエルマ。

「うんうん」

 というアレク。

「まあこんなもんだろ」

 防具を買いそろえたら、その次は回復アイテムを揃えるようで、ハイポーションを八個ほどプレゼントされた。

 A級のパーティーに入ると、こんなにいい防具をプレゼントされるのか。

 アイテムだってプレゼントされるし。

 今までどこのパーティーにも所属せず、ソロでモンスター討伐していたのが馬鹿みたいだ。

 とはいえ、召喚されてすぐに加入したパーティーでは、勇者パーティーでは加入どころか、すぐにパーティーから追い出されたわけだけれど。

 オレの装備品を見て、うんうんとエルマは満足した顔をすると、

「まあこんなもんかしらね。サトウ、期待しているからね」

 と、オレの背中をどんと叩いてきた。

 痛いな。

 さすがはA級の冒険者の力である。

 女なのに男のオレよりもパワーがありそうである。

「まああまり過度な期待はしないでくれ。あまりに過度な期待をされると、その期待にこたえられるかはわからないからな」

 というのはオレ。

 オレはあくまでFランクの冒険者なので、控えめな期待をしてもらえるように、そういった。

 まああまり過度な期待をかけられて、このせっかくオレを仲間に誘ってくれた紅蓮の炎に、がっかりさせてしまっても申し訳ない。

 Fランクの冒険者らしく、新人の冒険者らしく、最初はあまり期待をしないで見守ってくれるとありがたい。

 だがエルマ、エレン、アレク、サックはそんなふうには思っていないようで、アレクとの戦闘のせいか、その目はかなりオレに期待しているような、そんな期待のまなざしでオレを見てくるというそんな目だった。

 マジかよ。

 あんまり期待されて、異世界召喚されたあのときの繰り返しになったら嫌なんだがな。

 そんなふうに思ってはいるが、期待されるのは悪い気分にはならない。

 むしろいい気分にはなるのだが、あんまり期待されると、それはそれで少し不安になるのである。

 大丈夫なのだろうか、と。

 さて、回復術士のエルマの魔法で、瞬間移動のように、一瞬で魔の森の奥深くへとやってきた。

 その魔法はテレポートというらしい。

 勇者や僧侶、賢者がテレポートという魔法を使うことができるらしい。

 オレも一応勇者のはずなのだが、どうしてオレはテレポートという魔法が使えないのだろうか。

 才能がないからか。

 いや、オレってどうして一つのスキルしか使えないんだろうか。

 無能だからだろうか。

 なんて悲しいことを考えていても、仲間がいると、そんなことをゆっくり考えさせてくれる暇もないようだ。

 一瞬のうちに魔の森の奥深くまでやってくる。

 つうか、オレは毎日毎日走って魔の森までいっていたというのに、こんなに便利な魔法があったなんて……。

 それを最初のうちにいってほしい。

 そりゃあFランクの冒険者のこのオレが、ただ一人で魔の森の攻略ができないはずである。

 毎日毎日いちいち魔の森まで走って、そして空が暗くなれば、村まで走って帰っていたのだから……。

 そんな無駄な時間を過ごしていたことを今さらになって痛感しながら、オレは魔の森奥深くを進む。

 なんだか森の気配は同じように見えるが、だいぶこの辺りは森の雰囲気が暗いように感じる。

 なんだか強いモンスターでも出現しそうな気がする。

 紅蓮の炎はAランクのエルマと、Bランクの冒険者エレン、アレク、サックで構成されている。

 そこにFランクの新人の冒険者、オレが加わった形だ。

 つまり出現するモンスターもBランク以上のモンスターの可能性が高い。

 Fランクの冒険者であるこのオレに、Bランク以上のモンスターと戦うことなんてできるのだろうか。

 ちょっと不安になっていると、モンスターが出現した。


大ガエルLV42


大ガエルLV45


大ガエルLV48


 いやあ、ちょっと敵のモンスターのレベルおかしくないですか?

 いや、Bランクの冒険者の仲間になった時点で、Aランクの冒険者が仲間になった時点で、もしかしたらこんなこともあるのかと思っていたけれど、いやあちょっとこれはないです。

 勘弁してください。

 なんで今まで戦ってきたモンスターより、ゴブリンやロック鳥より、レベルがはるかに高いモンスターなんですか?

 こんなん絶対モンスターに殺されてしまうじゃないですか、だってオレ、Fランクの冒険者なんですよ?

 と思っていると、

「サトウ、アレクっ」

 とエルマに声をかけられた。

 どうやら近接戦闘が向いている、オレ、アレクがまず最初にモンスターとやりあって、ということらしい。

 まじかよ。

 とはいえ、オレも冒険者である。

 相手がどんなに強いモンスターであろうと、おくしたりはしない。

 死んだらそれはそれでしょうがないよな。

 うまい飯、うまい酒がもう飲めなくなるのか、なんてことを考えながら、だがその甘い考えを振り切って、

「スキル、まぶしい光っ」

 ぴかっ。

 まぶしい光が辺りを照らし出す。

 大ガエルはまぶしい光のせいで、目の前が見えなくなっていた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」

 大ガエルの腹に向けて、その右こぶしをぶちかます。

 ずどんっ。

 ぬるっ。

 という音がした。

 よし。

 大ガエルに大ダメージを与えた感触が右手に残る。

 だがこの大ガエル、その肌がぬめぬめしていたせいか、一撃では大ガエルを倒すことはできない。

「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」

 アレクは大ガエルLV45に向かっていく。

 そしてそのアレクの右のこぶしは大ガエルの腹を捕らえていた。

 どごん。

 という音がするが、やはり大ガエルの身体はぬめぬめしているため、その身体の防御力は高いためか、一撃で大ガエルを倒すことはできなかった。

 大ガエルLV45の反撃。

 アレクの腹に直撃し、その腹に大穴を開いたのかと思った。

 だがアレクは言った。

「残像だ」

 と。

 いつの間にかアレクは大ガエルの上へと移動していて、その足で大ガエルの顔面をキックする。

 どん!

 という音がして、大ガエルの顔面がねじれる。

 大ガエルは後方へと吹っ飛んでいった。

 どどどどどど、地面を削り、吹っ飛んで行った。

 おー、まじか。

 アレクのやつ、意外にやるじゃん、と思いながら、オレはアレクの戦闘を横目で見ていた。

 そして吹っ飛んだ大ガエルLV48の顔の上に乗り、その目にナイフを突き立てたのは、エレンだった。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 という悲鳴を上げる大ガエルLV48。

 エレンはすぐに大ガエルLV48の顔から飛び降りた。

 と、エレンがその場所から離れたすぐにあとのことだった。

 大ガエルLV48の真上から落ちてきたものは、雷だった。

「サンダーボルトっ!!!」

 という声がして、エルマの声である、その雷魔法が大ガエルLV48に直撃する。

 真っ黒こげになっている大ガエルLV48。

 そのエルマの魔法を見て、オレは思った。

 これがA級の冒険者か。

 強い。

 強すぎる。

 LV48の大ガエルを一撃で倒すのか。

 オレも負けてはいられない。

 と思って、大ガエルLV42にスキルまぶしい光を使いながら攻撃を仕掛けるが、その身体がぬめぬめしすぎているせいで、いまいちその身体をこぶしで捕らえきれない。

 くそっ。

 敵の身体がぬめぬめしすぎているせいで、なかなか大ガエルを倒しきれないぞ。

 なんだこの身体。

 そしてこの大ガエルの口から飛んでくる粘液がすげえ臭いし、このモンスターと戦うのすごい嫌なんですけど。

 と思っていると、

「サンダーボルトっ!!!」

 という声がして、オレと戦っていたLV42の大ガエルの頭上から落雷が落ちて、それは大ガエルLV42を真っ黒こげにする。

 大ガエルには雷魔法が有効ってことか。

 さすがにすべてのモンスターを、高レベルのモンスターをこぶしで倒すってのは、無理があるみたいだ。

 そしてアレク、エレンの二人でLV45の大ガエルを引き寄せるように戦っていた。

 エレンの攻撃はモンスターの目ばかりを狙うので、結構えぐい、そこでもまたエルマの魔法がさく裂した。

「サンダーボルトっ!!!」

 どっかーん!

 という音がして、大ガエルLV45が真っ黒こげになった。

 大ガエルを倒した。

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