第10話

 そんなある日のことだった。

 オレは異世界に呼ばれた勇者たちと、このまま魔王を討伐するまで一緒にやっていく、そうなると思っていた。

 だが王宮の一室に呼ばれ、王様からこう告げられることになった。

「サトウ、今日限りでお前は勇者を首になることになった。こんなことになって本当に申し訳ないが、だがそれはサトウ自身の努力が足りなかったせいでもある。サトウの努力が足りなかったのはサトウの責任だ」

 なぜなのだろうか。

 異世界から召喚されたからこの異世界にきたというのに、勇者から首になるなんて……。

 勇者を首になったら、オレはどうすればいいのだろうか。

「な……。なんでですか?」

 理由を聞こう。

 オレは突然の首の宣告にはらわたが煮えくり返っていたが、冷静になるよう心を落ち着かせていた。

 王様は言った。

「サトウ、お前は異世界召喚者のくせに無能すぎた。スキルはまぶしい光だけ。そんなスキルで魔王と戦えるわけがない。どうしてお前がこの異世界に召喚されたのか、それが不思議でならないくらいだ」

 そんな……。

 人のことを勝手に異世界に召喚しておいて、いらなくなったら、能力が思ったよりも低いことがわかったら、ぽいっとその辺にまるでゴミのように投げ捨てるのか。

 オレは少し仲良くなりかけたリュウノスケ、ミコトのことを思い出す。

 だが彼らなら、彼女たちなら、モンスターを一撃で倒すことができる彼らなら、きっと魔王だって倒すことができるだろう。

 スマホの充電ができないじゃないか、なんて言ってくれていればいいなと思いながら、オレは王様に言った。

「でも王様、本当にそれでいいんですね?」

 オレは王様に問うように言った。

 その理由はオレが一応は異世界召喚者だからである。

 異世界召喚者であるならば、それなりの才能があるはずなのである。

 まあもしかしたら異世界召喚者にも、思ったほどの才能がないやつもいるかもしれないが、遅咲きの才能を持つ異世界召喚者だっているはずだと、そう勝手に思っても、罰は当たるまい。

「確かに今のオレは、スキルまぶしい光を使うだけの無能な勇者です」

 王様はなぜかオレの頭を見た。

 スキルまぶしい光を使うと、オレの頭がぴかっとまぶしく光るのである。

「でもオレも異世界召喚者の一員であるならば、いずれは最強の勇者になるはずだ。そんな最強になるはずの男を本当にこんなところで首にしちゃっていいんですか? 本当にいいんですね?」

 何というか逆切れだった。

 異世界に召喚しておいて、まさか勇者を首になるなんて思っても見なかったのだ。

 つうか、そんなのないだろ……。

 オレは異世界で過ごした経験もないんだぞ……。

 そんな経験もないのに、これから魔物の出現するこの異世界で一人で過ごしていけって言うのかよ……。

 そんなのあんまりだろ……。

 お願いだから、これは何か悪いドッキリ的な何かであってくれ、と思うのだが、王様は言った。

「さあ、サトウよ、無能は城から出ていけ。禿げたおっさんなんて召喚したのが間違いだった」

「オレはまだ禿げてなどいない!」

 オレはそう言うと、まだ前髪は残っているんだ、まだ髪の毛は少しだが残っているんだと、そう思いながら、城を出た。

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