擬似再現:ブレス・オブ・ドラゴンロード

さてさて、どうするかねぇ。

バーラが痒みを与えたのは、受けの姿勢が崩れたほんの一瞬に追加で叩き込んだからなんだよなぁ。

真正面からダメージを与えるのはまず無理、ぶち抜けんしそもそもリーズィに呪いが効かない!!

まーじでどうしよ、取り敢えずやれる限りのことをやってみるかぁ? 何とか物理ダメージを与える方向で何とか出来るものかねぇ?


「フリティラ・アルム、アンフィニ」

「ほう、数で来るか」

「威力はまだ足りんからな、イロウシェン」

「む、ふん! 少々数が多いな、だがまぁどうとでも出来るぞこの程度ならば」

「数は無限だぞー? リソースが足りなきゃ、戻せばいいしな」

「くはは、そうかそうか。それでここから、どうやって俺の防御を貫く?」


どうやって? 俺が聞きたいんだよなぁ。

触ってみた感じ、内側から炸裂させるのは無理。魔法みたいに空きが一切無かった、とはいえ呪いが基本の俺の攻撃は真正面から叩き込んでも、たぶん霧散していくからやるだけ無駄。

………地面削って、それを叩き込む? あ、ダメだ。戦うために防壁を貼らせたって言ってたから、多分削れ無い。……うん、無理!

取り敢えず魔法に質量を込めてみるか? 呪いを凝縮して当てれば、多分霧散し無いでしょ。


「バレルセット……フリティラ・オヴィス」

「ぬ? っぐぅ!? やるでは無いか、衝撃を与えて来るのは想定以上だ」

「このラインで衝撃、ね。じゃあもう少し上げれば、どうなる? バレルセット、フリティラ・ドリ」

「…………ほう、威力は上々だ。狙いが甘いがな?」

「試験だぜ? だがまぁそれならば、もう少し上げて連射させて貰うぞ」


砲弾で衝撃、槍で上々。なら、一番イメージがし易くて、一番威力が高い一撃を再現しようか。

連射方法はどうするか、一回一回死ぬのも時間が掛かるしなぁ.....先に死んでストック用意するか。

取り敢えず三百発分用意すれば、まぁ傷ぐらいは負わせられるだろう。


「…………………ふぅ、待たせたな」

「腕まで消して良かったのか? 正面から俺の防御を貫く自信があると?」

「貫くとまでは言わんが、まぁ薄皮一枚くらいならば削れる自信はあるぞ」

「くははは!! ならば来い!!!!」

「…生命連装、ストック装填、砲身生成。

マレディクス・アウルムアニマ・ベンタレプリカ」


俺の周囲に魔法で円を形成する。その中に死ぬまで呪いを引き摺り出しては、蘇生してを繰り返して用意した呪いのリソースをじっくりと注ぎ込んでいく。

感覚で分かったが、命一つ分が注げる限界なのでそこまで注ぎ込み、一時的に蓋をする。

このまま射出する、というのは暴発する可能性があるため、円の形を龍頭に変化させて砲身にする。一々チャージを繰り返していては防御を抜けそうに無いので、先に砲身を用意して装填しておく。

………再現するのは、あの日見た天を穿ち、七日七晩世界を輝かせ続けたリーズィの、黄金のブレス。

流石にあの威力の完全再現は出来ないし、黄金の輝きなど再現出来ないので、未完成の偽物だがな。

だがまぁ、これを連射されるのは想定外だろう?






「砲身固定、完了…! いくぞリーズィ!!!」

「……………くは、これは想定以上だ」


ドラコー・ウルティム・スペーが文字通り命を装填して生成した龍頭の砲身。そこから撃ち出されたのは黒より黒い、全てを飲み込んでしまう様な黒い魔法。

……否、魔法の領域を超えて行使されるはブレス。ドラゴンが扱う最上の力であるブレス。その中でも最も強く、絶対を証明する龍王のブレスの様であった。

龍王リーズィ・ウルティム・ヴィクトリーツァのブレスが世界を照らす輝きならば、半呪半龍ドラコー・ウルティム・スペーのそれは世界を塗り潰す漆黒。

空間を軋ませ、余波で周囲に貼られた防壁を砕きながら伸びる複数のブレス。


それを前にして、龍王は笑みを浮かべた。


龍王の胸部に直撃したブレスは、バキリという音と共に龍王が貼っていた防護の魔法を砕く。勢いが弱まれば後続が発射され、絶え間無くブレスを受け続ける中龍王は静かに息を吸い込んでいく。


吸い込み、そして解き放った。


その瞬間放ち続けられたブレスは霧散し、発射準備がされていた砲身は消し飛ばされる。

ブレスでも無い、ただの咆哮で己の全力を消し飛ばされたことにドラコーは驚いて、身動きどころか思考を止めてしまう。距離を詰めていた龍王は止まっていたドラコーを掴み、上空へ放り投げる。

そして再び息を吸い込み、言葉を告げる。


「見事なブレスだった、だがまだ荒い。

龍王の魔法、俺のブレスを今一度見せてやろう」


口の端から黄金の煙を漏らしながら、解き放たれるは黄金の輝きの煌めき。防壁を容易く貫き、雲を消し飛ばすその一撃は。投げ飛ばされたドラコー巻き込み天へと伸び続ける。

周囲で観ていた者が驚嘆と共にドラコーの死を確信しながら、静かにブレスを放ち終え空を眺める龍王。

皆の意識が上空へと移り、龍王でさえ地上に意識を向けなくなった瞬間。



「ファルクス・プラーガ」



静かに、スッと染み渡ったその声。

そして同時に龍王の胸部に刻まれる黒い一線。

即座に全てのドラゴンが意識を向けた時、其処には服を失ってはいたが五体満足のドラコーが鎌を振り抜いた姿で立っていた。


「……なるほどな、今のは痛かったといえよう。

つまり、俺の敗北だなドラコー」

「…………あぁ、俺の勝利だリーズィ」


人型になりながらリーズィは自らの敗北を認め、振り抜いたままだった鎌を霧散させながらドラコーは自らの勝利を宣言した。

崩れ落ち掛けているドラコーをリーズィが支えた瞬間、戦いを終えた二人を讃えて空気を軋ませるような歓声をドラゴン達は高らかに挙げる。



「すまん、ちょっと寝る」

「うむ、ゆっくりと寝るがいい」

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