良かれと思ってやった、許可など要らんだろう?

「うーん、益々不思議な生態をしておるのぉ」

「そうなのか? 全然感じないんだが」

「うむ。人間の構造を全く知らんから分からんのじゃが、素体が人間という種族の物ではないのぉ。

うーむ、言うなれば呪いかの? 撒き散らされているわけでも無く、純然と自己体内で巡っては摩耗して新たな呪いを作り出しておる」

「うーん?」

「分かりやすくいうと、呪いという概念が形を持っておるという事じゃ。おそらく呪い背負いとしての時間が長すぎて、かの神骸と同等の存在となっておるんじゃろう。些か分からんところはあるがの」

「分からんところ?」

「うむ、呪い以外にも核となっておる物が二つあるんじゃ。神性が濃い物と龍性が濃い物がの」

「ほー、思い当たる所は無いがな」

「そうかぁ、まぁ特に異常は起きてないからの」

「感謝する、エルツ」

「うむ、またの」


軽く紅茶を飲みながらも話し合い兼定期検診の様な物を終えて、部屋を退出しする。

龍峡に来て数日後から定期的にやっている、身体検査という名目の身体調査を終えて歩いて行く。物珍しい生物を調べたいんだろうと思って受けているが、毎度の事ながら呪いの割合が大きい、というかほぼ呪いらしい。まぁ分からんことはない、呪いで死んで呪いで蘇生してを繰り返しているからな。

それよりも、神性に龍性ね。何だそれは?

龍性は、まぁおそらく龍峡で過ごしているからその影響だろうな。リーズィと一緒にいる時間が長いしその影響もあるか。

それよりも神性の方だな。神の知り合いなんて居ないし、神骸とは別で表現していると言うことは別存在が関係している神性なんだろうな。


「あ、兄ちゃん久しぶり!!」

「あぁ、久しぶりだな。随分と大所帯だが、何処かに出かけるのか?」

「うん! ちょっと海の方に行ってくる!!」

「そうか、楽しんでな」

「うん!!」


そもそも俺が知っていて、関係がありそうな神といえば、フルーフ・フェアニッヒだけだ。だが奴は死んでいる訳で、その死体は神骸デエスモルトに変化し、そしてリーズィが消し飛ばしたはず。

となるとこの神性は何処から来たんだ? 一体どの神の神性が俺の体の中にある?


「旦那、今日は一人ですかい? 珍しいですなぁ」

「ん? いや身体検査帰りだ、今からリーズィと合流して奥地に帰る予定だ」

「陛下とですかい、じゃあこれを持って行って下せぇ。ウチに依頼があった研磨材でさ」

「そうか、なら持って行くぞ」

「頼みますわ、また今度旅に役立てそうな物も作っときやすんで、見に来てくだせぇ」

「あぁ」


可能性が一番高いのは、あの大地を回収した神々の内誰かだろう。あの大穴周辺は神が回収し、現在では湖と森と山と洞窟が入り混じった神秘的な場所になっているし、成龍達はその場所によく狩りに行っている。

あの場所自体が神々の力が濃い場所であり、そこの生命は神性を持っている。個として完成しているドラゴン達に影響は無いが、呪いという常に新しくなり続ける体の俺はその神性に影響を受けたということ。

より正確にいうならば、神性を取り込んで神に近しい個として変質しようとしている可能性。


「おは、歩ける様になったのね」

「あぁ、ようやくしっかりと歩ける様になったな。

まだ安定しないし、長時間は無理だがな」

「一歩一歩着実に進んでて良いわねぇ、私たちとは大違いで羨ましいわね」

「そりゃあなぁ、個として完成しているから仕方ないことだ。それに研究する事は一歩一歩進んでいるんだろう?」

「勿論よ、三歩進んでは二歩下がるような進捗だけど、思った以上に楽しいわね」

「それは、良かったな」

「えぇ、それで今日は何処に行くのかしら?」

「今は歩行訓練を兼ねての身体検査の帰りだ。これから広間に居るリーズィと合流して、奥地に帰るんだ」

「あら、そうなの。それじゃあ、ゆっくり休みなさいよ?」

「もう充分休んだ気もするがな」

「まだ休んでも良いと思うわよ? そうね、多分後百年くらいは休んでも文句言われないわよ?」

「流石にそれだけ休む気にはなれんな、俺も大概じっとしては居られないタイプだしな」

「あら、そうなのね。そういうところも陛下と似ているのかしら?」

「だろうな、リーズィも暇を嫌う奴だしな」

「ふふ、それじゃあね。またいらっしゃい、コーヒーでも用意しておくわ」

「あぁ」


もう一つの可能性は、神骸かフルーフどちらかの力が俺の中に残留してしまっているという可能性。

呪いが流れて来た根源は神性の塊のような死体だし、そこに力の残滓があってもおかしくはない。

おそらくというか確実に、悪神にも神骸にもドラゴン達は出会ったことが無いだろう。

あるとすれば………リーズィだけか。

まぁそもそも、俺の中に残っていたら神々の方が黙っていないだろうから、おそらくこの可能性は無いだろうな。

…………っと着いたか。これ以上の思索は、リーズィに聞きながら進めるとしよう。一人で悩むよりかは遥かに進みやすい。


「おう、戻ったか」

「…あぁ」

「どうした、何を悩んでいる?」

「少し、俺の体というか生態についてな」

「うん? 呪いの化身から龍になっているお前の身体が如何かしたか?」

「んん?」

「ちょっと待て……異常は無いぞ? しっかりと龍の肉体になっているぞ。正確には半呪半龍だが」

「………俺の体に何が起きているのか分かっている、というか知っているのか?」

「勿論だとも、というか俺が変化の原因だしな」

「はぁ?」




「お前は人間という種族から呪いという概念の化身であり、個として確立された種族に転じていた。

だがそのままでは成長も変化も起こすこと無く、自由に生きれそうになかったのでな、半分ほど龍へと変化させる事にしたんだ。

明確に言うならば、俺の血と心臓をお前に与える事で龍峡における継承の儀をお前に施した」

「あぁ? あ、あーなるほど、分かった」

「うむ、おそらくそれで合っているぞ」


そら龍性が濃いよ。だって本質がなんだから。ドラゴンの成長の一端だし、龍峡という存在自体の根源だから濃いに決まってるわい。

なにせ闘争と死で継承されるのが龍王だし、それの本質を知ってるのなんて、龍王だけだろうからな。


「因みに簡易的な継承だし、お前の種族を捻じ曲げる為の儀式だから、お前が巻き込まれる事はないから安心しろ」

「それは、まぁ安心しておこう」

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