第18話 迷宮の真実
「ベル様。お客人方をお連れしました」
「やっと来たか。待ちくたびれて怠いから、ボサッとしてないで早く入れよ」
部屋の主は見た目は10歳くらいの少年・・・だが、溢れるオーラは知覚出来る程に禍々しく、主に声を掛けられるまで一歩も動くことは出来なかった。
「俺はベルフェゴール。一応この城の主だ。堅苦しいのは怠いから、気軽にベルとでも呼んでくれ。えーと…ニスロク。とりあえずこの人間に、茶菓子でも持ってきて説明してくれ」
見るからに怠そうな表情をしているベルは、琉偉と茜を近くのソファーに座らせた。沈黙が辺りを包む中、ようやくニスロクが茶菓子を持ってきて説明を開始してくれた。
「では、ベル様があの通りですので私から説明させて頂く前にですね、琉偉くんと茜さん、でしたか?あなた方も突然の事で戸惑っておられる事でしょう。先に質問があれば答えますが、何かありますか?」
「じゃあ私から…あなた達は一体、何者なんでしょうか」
「ふむ。何者か…ですか。それは非常に難しい質問ですね。あなた達が分かりやすい様に簡単に申し上げますと、元天使と言った所ですね」
「じゃあ次は俺だな。お前達が迷宮を出現させたのか?」
「…迷宮を地上界に出現させたのは私達ではないですね。そもそも、私たちはこの空間に封印されているので、外の世界に干渉はおろか出る事すら出来ないのです」
「封印…?つまり、お前達を封印した奴が迷宮を出現させたという事なのか?」
「る、琉偉。少し落ち着いて」
「茜さん。良いのですよ。琉偉くんにも何か理由があるのでしょう。私達を空間の狭間に閉じ込めたのは熾天使『セラフィム』。そして、迷宮を地上界に出現させたのも恐らく奴の仕業です」
「セラフィム……」
「天界には熾天使『ルシファー様』と熾天使『セラフィム』の二つの派閥がありました。創造神様がこの地をお離れになられた際は、ルシファー様が次の神になるはずでした…それをあのゴミ屑がッ!!卑怯にも奇襲を我等にかけ神の座を奪いやがったッ!!」
「ニスロク。怠いから少し抑えろ」
琉偉と茜はニスロクの怒気に当てられ、呼吸をする事すら出来なくなっていた。琉偉と特級探索者の茜でなければ、一瞬で失神する程の圧力。ベルが止めていなければ、気を失っていたであろう。
「も、申し訳ありません。つい、興奮してしまいました。琉偉くんと茜さんも申し訳ない。そのせいで、私達はここに閉じ込められてしまったのですが、セラフィムもほとんどの力を我等の封印に力を注いでいる状況なのです。ここからは仮説なのですが、恐らくセラフィムは人間達に強くなってもらう為に、迷宮という物を地上界に出現させたのではないでしょうか」
「それは…一体なんの為にでしょうか」
「人間に我らを滅ぼしてもらう為にですよ。天界にもルールが存在するのです。我らは地上界に実体で降りると、直ちに
「元天使であるお前らは、誓約がある為に消滅してしまうから出る事が出来ない」
「その通りです。天使は実体で地上界には降りれませんが、多少の無理をすれば迷宮を地上界に出現させ、この空間と繋げる事は可能でしょう。恐らく
「…その通りだ」
「ふむ。表情を見る限りでは、琉偉くんも
ここまでのニスロクの話は突拍子のない、にわかには信じられない話である。天界だの天使だのと、架空の存在だと琉偉も茜も思っていた。しかしニスロクの表情を見る限り、一応話の筋は通っている様に感じるし、全てが嘘というわけでもなさそうである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます