Zara Larsson - Lush Life

 最近、楽曲よりもアーティストのバイオグラフィーに比重を置いた作品となってしまっている本作ですが、このスタイルが読者の皆様にどう受け止めて頂いているのか分からず、試行錯誤中です……。


 あくまでも歌詞の和訳を切り口に、洋楽の奥深さをできるだけ大勢のファンの方々と共有したいとの思いが出発点である本作の性質上、より個々の音楽作品に焦点を当てていきたいという考えが念頭にありつつも、アーティストの個性やバックボーンについて詳らかに語っていくというエッセイも面白いのではと試験的に取り組んでみました。ですが、結果はPV数の急降下、反響無し、一話辺りの文字数増加に伴う執筆時間の延長という三重苦がもたらされるのみでした……。


 なので、暫くは従来のスタイルに回帰していこうと思います。「このアーティストについて深く知りたい!」などと、特定のアーティストにつき関心のある方はリクエスト頂ければ対応もできますし、今までもそうしてきた訳ですから、あるべきところに落ち着いたといったところでしょうか。作風の変化により離れてしまった読者様方、そしてご迷惑をお掛けしてしまった方々には、この場を借りてお詫び申し上げます。まだまだ成長途中の素人物書きによる、発展途上の拙作ですが、今後ともよろしくお願いします……!


 それでは第67回目、取り上げさせて頂きますのは、2008年、弱冠10歳にして鮮烈なデビューを飾った異才──スウェーデン・ストックホルム出身の次世代型女性ポップ・シンガーであるZara Larssonから『Lush Life』ですー。


 ──日頃からの反省を生かして、アーティストの略歴紹介はさっくり行かせて頂きます!


 1997年に生を受けたZara Larssonの人生は、最初から波乱万丈でした。分娩の際、臍帯巻絡による窒息が原因で、いきなり死の淵に立たされたというZaraですが、看護師の母による献身的な愛情を受け、何とか命を繋ぎます。その後、スウェーデン王立のバレエ学校に進学した彼女は、Carola HäggkvistやWhitney Houstonといった偉大な先人たちからインスピレーションを受け、5歳の頃からElvis Presleyのような「不滅の存在」を志していたと語ります。


 そんな無謀とも思えるZaraの夢に向けた足掛かりは、すぐに訪れることになりました。2008年、当時10歳という若さで、英米を中心として69を超える国々でスピンオフが制作されている有名オーディション番組『Got Talent』シリーズのスウェーデン版『Talang』にて優勝したことがきっかけで、彼女は一躍脚光を浴びることに。Zaraの生まれ年と同じ1997年のロマンス映画『Titanic』の主題歌として知られる、カナダ人歌手・Céline Dionによる『My Heart Will Go On』のカバーを披露した決勝のパフォーマンスは特に絶賛されました……!


 Zaraは早速、この『My Heart Will Go On』のカバーをデビュー・シングルとしてリリース──瞬く間に反響を呼び、スウェーデンの公式シングルチャート・Sverigetopplistanにて、6週連続チャートインを果たすなど、若き才能は多くの人々の関心を惹きつけました!


 その後もメディア露出を続け、知名度を高めていくZaraですが、あまりの若さ故に大手レコードレーベル各社は彼女との契約に関心を示すものの、及び腰に……。紆余曲折を経て、最終的には国内大手のTEN Music Groupと2012年に契約を果たしたZaraは、同年に自身初のEP『Introducing』を発表──特に収録曲の『Uncover』は国内チャート1位の快挙に止まらず、ノルウェーでも1位、デンマークでは3位を記録するなど、彼女の活躍を心待ちにしていたファンの多さが窺える結果となりました。これを受け、米・Epic RecordsはZaraとの契約にサインし、2015年には同レーベルからEP『Uncover』をリリースしたことで実質的な世界デビュー! 欧州各国でトップ10入りの快進撃でした!


 今回紹介する『Lush Life』は、まさにZaraが世界中のポップ・シーンを席巻していた当時、2ndアルバム『So Good』のリードシングルとして、2015年に先行リリースされた名曲です。2017年には、以前も紹介したClean Banditの代表的シングル『Symphony』にて圧巻の歌声を披露するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで注目の的となっていた彼女の知名度を、さらに爆発的に上昇させる契機ともなった珠玉の作品──僕の和訳と共に皆様もご鑑賞ください……!


[Chorus(0:09~)]

「今日という日を最後だと思って生き抜くの」

「過去がどうとか関係ないわ」

「一晩中、この夏の間ずっと」

「そんな風に生きていたいな」

「夜明けまで心の赴くままに踊りましょう」

「朝が来たって止めるつもりはないけど」

「一晩中、この夏が終わるまで」

「他の誰でもなく私らしい生き方をするの」


[Verse1(0:30~)]

「一目惚れってやつかな」

「でも、何処まで行っても満足はできなかった」

「目まぐるしく移り変わって、結局私は諦めちゃったんだけど」

「仕方なかったのよ」

「今となっては踏み込んで言い過ぎちゃったかなとは思ってるけど」

「私には全てだった」

「結局諦めちゃったのにね」


[Chorus(0:48~)]

繰り返し


 なるほどー。いきなりクライマックスから始まる曲調から受ける第一印象としては、毎日を全力で生きていこうとするエネルギッシュな女性の「自分らしさ」への探求心が溢れたポジティブな曲、といったところでしょうか。でも、その後のフレーズに目を向けると「過去は関係ない」と言いつつも、かつて味わったひと夏の恋の甘酸っぱさに想いを馳せているような場面が……。


 人生、誰しもが自分らしく、今日という一日を全力で生きていきたいものですよね。でも、同時に誰しもが過去の過ちや後悔といったしがらみに囚われ、未来への不安を抱えながら生きているという現実があります。口では「今日を全力で生きてやる!」と言っても、中々そうはいかないのだという矛盾が嫌に現実的で、その人間らしい部分がうまく描かれた良作だと思わず唸らされます……。


[Verse2(1:09~)]

「まさに一目惚れって感じだった」

「いつも『連絡するね』って言い続けてたのに」

「それでもダメだった」

「結局私は諦めちゃった」

「欺瞞でも、はったりでもない」

「ただ私は手枷を付けられたくはないの」

「私たちの太陽は沈まない」

「下がったり、上がったり」

「乾いた水は元に戻らないのに」

「あのイケてた頃に戻らなきゃなんて」

「そんな心配したことないわ」

「ローになって、ハイになって」

「それでも大切なのは今よ」

「と言ってもまたあの頃の気持ちに戻っていく」


[Chorus(1:47~)]

繰り返し


[Chorus(2:07~)]

「私は今他に熱中できるものを見つけたわ」(×2)

「この充実した人生は私を忙しくさせてくれる」(×2)

「私にもう一度頬を染める機会を与えてくれた」(×2)

「次を逃せばきっと手遅れになる」(×2)


[Chorus(2:36~)]

繰り返し


[Chorus(2:56~)]

繰り返し


 人間として、自分の信念と向き合いつつも、時折言動が矛盾したり、自分でも訳が分からず迷う時も確かにある。それでも、最終的には前を向いて一日ずつ大切に生きていく他ないのだと、そんなポジティブなメッセージが恋に悩める女性の視点から描かれた奥深い内容の歌詞だと、そう僕には感じられました! 皆様はどう感じられましたか?


 ローだのハイだの言い出した時には、今までの話は全て薬物の比喩だったのかなとか、躁鬱的な何らかの精神病に悩まされる人の内面を表現したものなのかなと勘繰ってしまいましたが、願わくばより前向きなメッセージが籠められていてほしいものですね……。それにしても、適度に韻を踏んでいながら馴染みやすく、非英語話者にとっても分かりやすいワードチョイスに、対比・対句を駆使した表現により聴き手に一発で強い印象を与えてくれる『Lush Life』の歌詞のセンスは素晴らしいです。作詞・作曲には複数人が関わっているそうで、恥ずかしながら僕は誰一人存じ上げませんでしたが、この辺お詳しい方は是非とも情報提供お待ちしております……!


 さて、今回はこんなところで。久しぶりに次回予告でもしましょうか。そうだなぁ……。では、次回は同じくスウェーデン・ストックホルムで結成された女性デュオを紹介致しましょう。ヒントはZara Larssonが契約したTEN Music Groupにも所属しているレーベルメイトで、2016年にはスウェーデン版グラミー賞とも呼び声高いGrammisの開会式にて共演経験もあるアーティストです。お楽しみに!


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はZara Larsson - Lush Lifeから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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