第6話

『まだ2階に行かないのか?』

『飽きて来た』

『5階に行こうぜ』


 俺は1階でレベル上げを続けた。

 何日も1階を彷徨い、スライムを倒し続けたがレベルが上がらない。


「レベルが上がらない」


『そりゃそうよ、狩りすぎたせいでしばらくスライムは少ないままだろうね』

『魔呼びのポーションを贅沢に使ったからな』

『上に行こうぜ』


「食事にしよう。肉野菜炒めを作ろうかな」


『こいつ野菜を切り出したぞwwwwww』

『逆だ、今までやらなかったのがおかしい』

『栄養は大事よ』


 俺は鍋に豚バラ肉を敷き丁寧に炒める。

 そしてニンニク、中華ダシ、テンメンジャン、トウバンジャンを入れて肉に絡ませた。

 そして一気に火力を上げて小さめに切った野菜を投入し、焦げる前に調味液を入れる。


『うまそう、ホイコーローか』

『カゲオ、料理できるんだな、なぜやらなかった?』

『余裕が無かったのと面倒だったんだろ?』

『野菜を小さめに切ったのは野菜の油通しを省略する為か、かなり慣れてるね』


 テンメンジャンの濃厚な風味が広がり、最後にごま油をかけて火を止める。

 そして湯せんしたご飯2パックと一緒に一気に口に入れる。


「出来立てがうまい」


『こいつが食うとうまそうなんだよな』

『何で鍋ごと食べているんだ?』

『皿洗いの手間が増える。徒歩のキャンプだと背負う荷物を減らすためによくやるぞ』

『オイスターよりテンメンジャン風味の方が俺も好きだ』

『危機一髪切り抜きの動画だけじゃなく、サバイバルキャンプの切り抜きもいけるんじゃないか?』

『切り抜き班です!了解しました!』


「え?危機一髪?切り抜き動画?」

カナタ『おはようございます、美味しそうですね』


『カナタタン来た!』

『天使降臨』


 カナタは赤いお茶の様な物を飲んでいた。


「カナタ、今飲んでるのは何?」

カナタ『ローズヒップティーです』


「いいなあ、カナタはおしゃれにローズヒップティーを飲んで、俺は死にかけた危機一髪の切り抜き動画が拡散されている……これが日本か」


『しゃーない!頑張れwwwwww』

『カナタ=天使、カゲオ=ゾンビタンクG』

『カナタ=天に住まう天使、カゲオ=地面をはいずり回るゴミムシ』


「一番むかつくのは画面の向こうで笑っているお前らだ。あ~あ、ここから出られないならカナタが布面積のあまりない黒ビキニで応援してくれたらいいんだけどなあ」


カナタ『少し待っていてください』


『ま、まま、まさか!』

『トイレに行っただけだろ』

『グラビアアイドルを手配するならあり得る』


 みんなが盛り上がる中、俺はホイコーロー鍋にご飯を投下し、汁を吸わせつつ食べきった。


『それ絶対うまいやつ!』

『今日のお昼は中華にしよう』


「俺も店に食いに行きたい!ここから出たい!」


カナタ『お待たせしました』


 カナタはパープルビキニのまま椅子に座った。


「本当に水着を着てくれたのか」

カナタ『黒くてもっと小さい水着は勘弁してください』


「あれ?コメントが少ない」


『まあ、お察し』

『男は賢者タイムだろう』


 機械の声だが、コメントしているのは多分女性だ。


カナタ『毎日この格好で応援すればやる気が出ますか?』

「なんか、ごめん。恥ずかしい思いをさせた。無理しなくていいぞ」


『待て待て、日本の半分近い命を背負っているカゲオのモチベーションを考えれば、カナタさんの水着姿は有りだと思う。だが確かに毎日紫の水着だけでは飽きが来ると思う。そこで提案だ。バニーガール、制服、ナース服、旧スクール水着などのバリエーションを持たせてカゲオを激励する事でカゲオの潜在能力を引き出すことが期待できる!良い結果を生み出すんじゃないか?そうする事でカゲオは明日の希望を抱きながらサバイバルを続ける事が可能だと思う。男は希望を無くした時、その時に死ぬんだ』


『急に演説が入って草』

『長いよ』

『熱意だけは受け取った』


『もっと言えば顔のヴェールは取らず、黒手袋をつけたまま、そして椅子ではなく正座をして全身を映す事でカゲオの士気は高まるだろう。付け加えるならエプロンを着用し、かつ後ろを向きながら予言者としての力を磨きつつカゲオを応援する事で更なる士気向上が見込めるだろう』


『一人怖いやつがいる』

『やっばいやつがいるよね?』


「俺は、夢を見ているのか?幽霊が見える」


カナタ『ファントムです!魔物ですよ!』



 白く発光し、姿が霧のようにおぼろげな魔物。


 ファントムが飛びながら迫って来た。




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