第51話 エピローグ

「ミク、忘れ物はない?」

 サリーが私に声を掛ける。十年過ごした部屋を眺めて、少し感傷的になるけど、夏には戻ってこよう!

「うん、もう全部バッグに入れたよ」

 マジックバッグも容量の大きいのが作れるようになったからね。


 二人で下に降りて、師匠達に挨拶する。

「お世話になりました!」

 アリエル師匠は、照れ臭いのか、ソファーで本を読んでいる振りをする。


「オリビィエ師匠、マジックボックスにスープやパン、それにピザを入れてあります。取り出して食べるだけですからね!」

 前のような食事はさせられない。この半月は、料理してはマジックボックスに詰めていた。


 オリビィエ師匠が最後の注意をする。

「人間には良い人もいるが、悪い奴もいる。気をつけるのだよ!」

 アリエル師匠もソファーから立ち上がり、サリーに注意する。

「治療院を開いたら、タダで見てほしいと貧乏人が来るわ。貴女達は優しいから、注意してね。安くしても良いけど、タダは駄目よ!」

 これは、何度も言われている。師匠達も若い頃に失敗したんだってさ。

 タダで治療してくれると、噂が流れて、金を持ってても払わないとか、他の治療院に殴り込まれたり、大変だったそうだ。


「私は大丈夫です。でも、ミクは人が良いから心配だわ」

「サリー、それはないよ! 私だって、自分で生きていくんだから、わかっているわ」

 師匠達が、ケラケラと笑う。

「そろそろ行かないと、置いて行かられるぞ!」

 オリビィエ師匠に背中を押されて、木の家アビエスビラを後にする。

 アリエル師匠とオリビィエ師匠、二人が玄関で見送っている。


「ミク、行きましょう!」

 サリーと門に走る。そこには、一緒に人間の町に行く仲間が待っている。

 私の冒険は、これから始まるんだ!


          完

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