第37話 神父さんが説得できるかな
結構、夜遅くまで皆でわいわい話をしていたみたい。
「おや、まだ寝ていなかったのか?」
師匠達が木の
急いで食器を片付ける。集会場の食器も師匠達が持って帰ったから、一緒に洗うよ。
「神父さんは、引き受けてくださったのですか?」
オリビィエ師匠が苦笑する。
「神父さんも、初めは驚いていた。彼も光の魔法で成長している事や、意識的に老化を遅らせる事を知らなかったみたいだ」
えっ、神父さんって何でも知っている気がしていたよ。
「当たり前よ! 神父さんは、人間の町で成長したのですもの。それにしても、狩人の村の森の
アリエル師匠の言葉に、オリビィエ師匠も肩を竦める。
「私達が人間の街に住んでいた頃も、薬を買いにくる狩人の村出身の森の
そんなものなのかな? よくわからないけど、そうなのかもしれない。エバー村の森の
「あのう、狩人の村の森の
サリーの質問に、師匠達は微妙な顔をする。
「仲が悪いことはないが、良いとも言えないな。冒険者ギルドに属して、一緒の仕事を引き受けることはあるけど……チームを組むことはないかも? 普通は、狩人の村の森の
偶に、人間とも組むそうだけど、基本はアルカディアの者同士が多いみたい。
「私とサリーは、どうなるかな?」
師匠達は、ケラケラと笑う。
「誰と組もうとミク達の勝手だけど、きっと学舎の連中が離さないと思うぞ」
「本当に、餌付けしているから、離れてくれないと思うわ」
それは、それで良い。学舎に行った日は、ちょっと距離感があったけど、今は友だちだからね。
「神父さんは、狩人の村の森の
サリーが心配そうにアリエル師匠に質問している。
「神父さんは、皆の信頼を集めているから、多分、信じるとは思うわ。その後、どうするかは、話し合わないとわからないけれど……上手くいって欲しいわね」
アリエル師匠が優しくサリーの肩に手を置いている。
「ミク、頑張って見本になれるようにしないとな! そうしたら、神父さんと一緒に狩人の村を説得しに回っても良さそうだ」
そうなんだよね! サリーは風の魔法のスキルがあるから、できて当然だと思われそうなんだよ。
「ミクだって、植物育成スキルは土の魔法の一部なんでしょう?」
サリーは、両親を説得したいと焦っているみたい。私の両親より年上だからかも。
「まぁ、それも神父さんが説得してからになりそうだ。サリーも狩人の村生まれだから、親近感は持ってもらえるだろう」
だよね! 上手くいくといいな!
「明日は、サリーは火食い鳥カセウェアリーの殻のガラスコーティングを売るのでしょう? 他のガラス製品も売るなら、早く寝た方が良いわよ」
私も西の行商人がスパイスや知らない植物の種を持っているかも知れないから、早く寝よう!
次の日、朝から火食い鳥カセウェアリーの世話をして、パンを焼く。少し多めに焼いたのは、行商人が買うかもしれないからだ。サンドイッチにして、集会場で売っても良いしね!
「ミク、今日は運ぶの手伝ってくれる?」
サリーはまだマジックバッグを持っていない。
「良いよ! それにマジックバッグを貸してあげる」
ガラス製品をそのままマジックバッグに入れるのは壊れそうだけど、もう梱包してあるなら大丈夫だと思う。
前世で読んだ本のマジックバッグには、インデックスみたいなのが付いていて、ごっちゃにならないし、壊れたりしないのにね。でも、こちらのも重くならないから、とても便利!
師匠達と朝食を食べてから、サリーと行商人の荷馬車に行く。
初めての行商人だから、少し緊張するけど、昨日、オリビィエ師匠と一緒だったから、あちらは覚えていた。商人って顔を覚えるのも必須なのかもね。
「やぁ、昨日、オリビィエ様と来た子だね。また、石鹸を売りに来たのかい?」
ラリックさんが愛想よく話しかける。
「いえ、今日は友だちのサリーがガラス製品を売りに来たのです」
行商人の近くの木陰でマジックバックからコソッと箱を出して、そこから二人で何個も運ぶ。ここからは、サリーに任せる。
エレグレースとマリエールもやって来て、飴を見ている。
「昨夜はありがとう! とても美味しかったわ」
エレグレースは、プリンが気に入ったみたい。
「東の行商人とは違う飴があるのよ!」
マリエール、飴が好きなのはわかるけど、食べ過ぎ注意だよ。でも、一緒に見ちゃうけどさ。
「あっ、これは果物の砂糖漬けなのね!」
黄色やオレンジ色、薄い緑色の砂糖漬け、私も欲しくなる。
「あのう、砂糖漬けだけじゃなく、果物とか、種とかはないのですか?」
ラリックさんは、サリーと値段交渉中だから、他の若い商人と話す。
「種なら、こちらにあるよ!」
木の小さな棚にいっぱいある。
「見ても良いですか?」
勿論! と言ってくれるので、夢中になっちゃった。何種類かは、もう持っている種だけど、何個かは知らない種がある。
「このマッカって何ですか?」
知らない種も育てたいけど、どんな物かは聞いておきたい。
「ううん、甘い瓜だよ。だけど、南部でしか育たないかもな」
やった! スイカも好きだけど、瓜も欲しかったんだ。
「お嬢ちゃんは、植物に興味があるのかい?」
サリーとの交渉を終えたラリックさんが、こちらにやって来た。植物育成スキルは、人間には教えてはいけないとママやパパ、そして師匠達からも言われている。
「ええ、だって薬師になりたいから!」
「そうだな! オリビィエ様の弟子なのだから、植物も色々と勉強しなくてはいけないな。早く、調合薬を作れるようになっておくれ」
まだ煎じ薬しか作れないけど、いつかはね! その前の竜の討伐という高い壁が聳え立っているけどさ。
ラリックさんのお陰で、色々な珍しい種と、苗まで買えた。
「これは、育てられるかわからないけど、オリビィエ師匠にラリックからのプレゼントだ。秋にもう一度来るから、調合薬をお願いしておくよ」
本当に調合薬が欲しいみたい。変なの?
「そんなに島には調合薬が必要なのですか?」
ラリックさんは、難しい顔をする。
「変な話だけど、こちらが冬になる頃に、島は夏になるんだ。元々、島はこちらの大陸より暑いのだが、夏になると長雨が降って、風土病が流行る。だから、調合薬が飛ぶように売れるのさ」
それって、赤道を超えて南半球になるって感じなのかな? 熱帯雨林気候なの?
「どんな風土病なの?」
「腹下しと熱が出ることが多いそうだが……島には行ったことがないから、詳しくはないのだ」
それ、一番大事だよ!
「今度、秋に来るまでに聞いておいて! 煎じ薬でも効くのがあるかもしれないわ。調合薬は、効果が半年しか効かないから、煎じ薬の方が遠い所に運ぶなら便利ですよ」
なるほど! とラリックさんは、ポケットからメモを出して書いている。そのくらいオリビィエ師匠も言っていたと思うのにね! 高い調合薬ばかりに目がいっていたのかも。
一旦、木の
昼食の時に、ラリックさんから聞いた話をオリビィエ師匠に話した。
「島の風土病かぁ! それなら一度、行ってみたい。下痢といっても、下痢止めを処方して良い場合と、いけない場合があるからな」
島かぁ! 私も行ってみたいなぁ!
「オリビィエ、駄目よ! そんな風土病が流行っている未開の地へ行くなんて!」
アリエル師匠が止める。竜を倒すのは平気なのに、風土病は怖いのかな?
「前も、そう言われて止めたのだけど……まぁ、ミクが卒業するまでは無理だな」
ホッとアリエル師匠は息を吐いたけど、私的には行ってみたいな。
「ミク、貴女も駄目よ! 噂では死人も出るそうよ」
それは怖い。今度は長生きしたいのだ。
「島との行き来はあるのですよね? 雨期に発生するなら、その病に罹った人が船で西の国に来ることはないのですか?」
「それが、不思議と西の国に流行った事はないのだ」
ふうん、人から人に移る病では無いのかな?
「オリビィエ! ミク!」
アリエル師匠に「駄目よ!」と言われたから、ここまでにしよう。
オリビィエ師匠は、きっと私が卒業したら、島に行きそうだ。私も行きたいけど、その前に竜の討伐が待っているんだよね。
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