第32話 スイーツ! スイーツ! スイーツ!

 レシピをノートに纏めている。薬師のノートより多いのが気になるけど、オリビィエ師匠はゆっくりと教える方針みたいだから仕方ない。

 だって、まだ2歳だよ! そう言われると当たり前の気もする。

 

 ルシウス師匠にはあと9個ケーキを渡さないといけないけど、今は夏だから、ひんやりスイーツが食べたい。

 だから、ヘプトスに頼みに行くんだ。アイスクリームメーカーを!

 私は、ベッドで生活していたから、よくママとテレビを見ていた。カナダのプリンスエドワード島の暮らし、読んでいた本の世界が広がっていて、うっとりとして見ていたんだ。

 主人公の女の子が日曜学校の催し物で初めてアイスクリームを食べるんだけど、それを当時の道具で再現していたのだ。

 樽を二重にして、ハンドルで回して中の溶液を冷やし固める感じなの。中の容器は金属で、掻き回す羽根もあった方が良さそう。

 うんうん唸りながら、設計図を描く。

 

「ミク、何をしているの?」

 サリーに質問されて、アイスクリームを説明しようとしたけど、難しいね!

「とにかく、冷たくて、甘くて、美味しいの!」

 金属の部分はガリウスに頼んで作って貰おう。樽はヘプトスに頼もう。お礼は、ピザで大丈夫だよね?


 二人に注文してから、これも冷たいデザートを作る。

 卵とミルクと蜂蜜、それをかき混ぜて、小さな容器に入れて蒸すだけだけど、カラメルソースで悩む。

 プリンにはカラメルソースが必要だよね!

 砂糖なら火にかけてカラメルになるけど、蜂蜜しかないんだ。

 料理スキルに頼ろう! 蜂蜜にバターを混ぜて、火にかけたら、ぶつぶつ泡が立ってきた。

「カラメルソースになったわ!」

 本当に料理スキル、良い仕事するよ。

「容器にカラメルソースを入れて、少し冷やしてから、プリン液を入れて蒸したらできるわ!」

 冷蔵庫が無いから、アリエル師匠に冷やして貰わないといけないかも? 温かいプリンもあり? いや無しでしょう!


 ふんふん、鼻歌混じりでプリンを蒸す。台所には甘い香り!

「ミク、今日は何を作っているの?」

 サリーは、アリエル師匠と風の魔法の練習をしていたみたい。私も、もっと薬師の修行と光の魔法を練習しなきゃ!


「プリンというスイーツなんだけど、アリエル師匠に冷やして貰いたいな」

 ふふふ……とサリーが笑う。

「今日、丁度、冷やす魔法を習ったの。レモネードを毎回師匠に冷やして貰うのが悪いから」

 えっ、凄いよ! 

「サリー! 頑張っているね!」

 褒めたのに、サリーは首を横に振る。

「まだ氷は作れないの。私は風の魔法で冷やしているだけなのよ。本当は水の魔法の方が良いの」

 凄い話で、クラクラするよ。

「私も頑張って光の魔法を練習するよ!」

 それは、サリーも励ましてくれた。守護魔法がちゃんと掛けられないとアルカディアの外に出られないからね。それに、長生きしたいもん!


 プリンを蒸して、それをサリーに冷やして貰う。

「お世話になった方達に配ってきます」

 このところ、スイーツの道具を色々と作って貰っているからね。


 この日のお茶の時間にプリンを出した。

「美味しいわ!」

 アリエル師匠に絶賛されたよ。

「ミクの料理スキルは凄いな!」

 オリビィエ師匠、褒めてくれるのは嬉しいけど、薬師の修業ももっとしたいんだ。

「これは、とても美味しいから、売れば良いと思うわ」

 サリーは、お小遣い稼ぎになると目を輝かしている。


 お茶を飲んで、夕方のピザ屋の準備をしていたら、ヘプトスとガリウスがプリンの容器を持って来てくれた。

「凄く美味しかったよ! また食べたい!」

 ヘプトスも大好きになったみたい。

「師匠が、凄い勢いで食べるから、自分のを死守するのに必死だったよ」

 ガリウスに愚痴られた。

「師匠が、これもケーキの一つに数えて良いと言っていたよ」 

 あと九個残っているけど、八個になったみたい。

 夏は、ケーキより、プリンの方が食べたいな。


「それで、ミクが頼んだ道具で何が作れるのか師匠が気にしている」

 ルシウス師匠は、甘い物に目がないからね。

「ヘプトスの樽とガリウスの容器と混ぜる羽根とハンドルで、アイスクリームという氷菓を作るつもりなの。ただ、私は氷を作れないから、アリエル師匠頼みになるんだけどさ」

 アリエル師匠も美味しいスイーツの為なら、協力を惜しまないとは思うけど、自分で氷が作れたら良いなぁ。


「氷かぁ! 私は火が得意だから、真反対だからなぁ」

 ガリウスががっかりしている。

「私もやっと水の魔法を習い始めたばかりだから、氷は作れないんだ。作れたら協力できるのに……」

 ヘプトスは、土の魔法のスキル持ちで、光の魔法と水の魔法を習っているんだね。


「私も光の魔法を習ったら、水の魔法を習いたいわ」

 ちょっとガリウスが微妙な顔をした。

「ガリウス? 私には無理だと思ったの?」

 前だったら、狩人の村の森の人エルフを馬鹿にしたのかな? と勝手に思って落ち込んだけど、今は友だちになっているから、素直に質問できる。

「いや、ミクなら頑張り屋だし、土と水は相性が良いから、いつかは習得できると思うよ。でも……」

 えっ、何? ヘプトスも微妙な顔をしている。

「何があったの? もしかして狩人の村に光の魔法を教える件なの?」


 

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