第58話 尋問
タニスに先ずは1人の上体を起こしてもらい、万が一暴れ出ても大丈夫なように、後ろから肩を押さえさせた。
もっとも後ろ手にし、手首のところで縛ってある。
そして俺は胸ぐらを掴んでぐいっと引き、その頬をペチペチと叩く。
妙に体が小さいな。
ランプが1つだけで、部屋の奥にある机においているから照度が低いので、顔が分からない。
違和感から軽く胸を触る。
そうか、胸ぐらを掴んだ時の違和感は華奢な体付きで、こいつは小さいとは言え胸の膨らみがあるから女だな。
「おい起きろ。誰に頼まれた?」
「誰が貴様に話すか!」
「俺の目を見ろ!」
目を閉じる。
「タニス、こいつの目を開けさせろ。俺が何か喋るまで目を瞑っていろ」
強引に目を開けさせ、ギフト【光】の能力にある目からの光を最弱にすれば、【目ん玉光線】ではなく【催眠】効果を発揮する。
10分程しか効果がないが十分だ。
ただ、これをすると激しい頭痛と倦怠感から翌日は動きにキレがなくなってしまう。
この力を使い女をモノにできないかって?
胸位は触る事ができるが、行為に至るのは無理だ。
気持ち悪過ぎてとてもではないが無理だ。
倫理的な問題ではなく、俺の負担が大きいから多用したくない。
今回奴隷にするのは無しだ。
どうやって奴隷にしたのか説明がつかない。
いや、私は隷属魔法が使えるので
・・・などとはとてもではないが言えない。
国の管理下に置かれるか、許可を取り、制約を課せられての奴隷商を営む者以外、習得を認められていない魔法だ。
だから俺も隠す。
タニスとハーニャは主人を変えただけで、ライブラリーカードに主人の変遷が記載されており、キルカッツからセルカッツへ移譲としか分からない。
だから誰が実施したのか分からない。
ただ、奴隷にする時は奴隷商と国に記録が残るから、この者達が本来奴隷ではないという事は調べると分かる。
バレると俺も国を追われ、隠れ潜まなくてはならなくなるから、まどろっこしい事をする。
もし騒ぎを聞きつけられなかったら奴隷にしてやれば良かったのだが。
ランプを持ってきて貰い、顔を確認すると、催眠状態に入った時特有のトロンとした目をしている。
股を開いて俺のきかん坊を受け入れろと言ったとしたら、処女だろうが非処女、結婚していようがいまいと股を開いて俺のきかん坊を受け入れる状態だ。
勿論しないと言うか、リバースしないように必死に堪えている。
あくまでどれだけ強力な催眠かの説明だ。
女を抱くのにこんな情けない事をするつもりはない。
真正面から口説き落とし、そのうえで抱きたい。
「名前と誰に雇われたか話せるか?言える部分のみで良い」
こう聞いたのは、既に制約を課せられている場合、雇い主の情報を口に出そうとしたら死ぬ事があるからだ。
しゃべったら死ぬと言われていたら、この聞き方で死を回避できる。
別にコイツラの生命なんてどうでも良い。
ただ、催眠状態で操られていたとしたら、意志のない状態で襲ってきたから罪はない。
また、家族矢恋人を人質に取られていたりする場合も死なせたくない。
俺は甘いけど、この甘さが俺だ。
「あっ!こいつ知っているっす!」
「知り合いか?」
「いえ。予選で倒した相手っす!」
成る程と思い顔を確認すると、確かに捕えた者の中の1人は闘技場で見掛けた気がする。
皆若かった。
「こいつらこの宿の宿泊者だな。だから警備は関係なかったんだな」
そこから尋問を始めたが、催眠状態なので聞いた事には全て話していった。
名前はセニターニ。
ナイフ使いで、追い剥ぎや詐欺まがいの事をしている。
犯罪組織に所属しており、暗殺の依頼を受けた。
理由は賭けが成立しないから、優勝候補を潰す事。
雇い主はラニアサガンと言う年寄り。
特徴は丁寧な話し方に、物腰はが柔らかいが、さる貴族の使いと名乗り報酬は半額を前払い、残りを成功報酬としていた。
この女からはこれ以上分からなかった。
間取りは必要なかった。
すべての部屋は左右の違いのみで、基本的に同じだ。
宿に泊まっている者なら宿泊している部屋は容易に掴める。
そして尋問を終えると俺はため息をつくしか無かった。
依頼主はキルカッツの世話役の執事だった。
ゲームでは無かった展開だ。
なので失念していた。
屋敷が燃えた後、足の早い馬車ならもうこの町に来ていてもおかしくないと。
どうやってかこの町に来た。
待てよ、あいつ本来は闘技大会に参加するつもりだったのか?
屋敷が燃えたから間に合わなかった?
ゲームではキルカッツはメイヤを時事に追い込んだ罰で1週間の謹慎になるが、その為らキルカッツが闘技大会に来るイベントは発生しなかった。
面倒な事になったものだとため息をつくしか無かった。
そう、ゲーム開始時の本来あるはずのイベントをかなり変えてしまったから、もはやゲームのイベントは違う事になっているのだ・・・
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