115 やはり、シヴァ(本体)が一番忙しい

 紹介が終わった後、国王と宰相は方々を視察。

 崖崩れや土砂崩れは危ないし、移動で時間を取られるのももったいないので、シヴァの騎竜で空から案内する。説明は役人にさせるので役人も乗せる。


 一番魔力が多くて魔力消費大幅軽減称号もあるシヴァ(本体)は仮設住宅や宿舎、食堂、トイレ、内風呂、露天風呂も…等々作らないとならないし、土地の浄化や土壌改良も…と仕事がたくさんあるので、分身に騎竜の運転を任せた。

 …いや、人工騎竜なので運転手はいらないのだが、対外的に。


 復興支援隊は、まず、得意な仕事や使える魔法、本人の希望で担当を決める。

 そして、名簿に名前を書いてから行動に移す。その名簿を元に担当地域と宿舎分けをする。


 王族の宿舎は領主の館の領主棟だが、他の貴族は普通の宿舎だ。

 着の身着のまま連れて来た貴族たちは、まず、男女別の天幕の中で動き易い格好に着替えさせる。

 貴族基準で「動ける格好」であり、どう見ても動き難い格好の人たちも同じく着替えさせた。


 救援物資に出したのと同じシンプルなデザインだが、コットン製で肌触りがよく、しっかりとした生地の服だ。ウエストは紐で調節する一般庶民の普通のものなので、サイズの融通は利くが、靴は各自合わせないとならない。運動靴だ。

 シヴァと分身たちが錬成で合わせてやる。


 ドレスの貴族令嬢たちは図太いのか、文句を言いかけたが、そこは王妃一派が言いくるめてその気にさせていた。王妃たちは動き易いと言えば、これ、と乗馬服だった。

 幼い姫や侍女たちは普通にスカートでも、シンプルな服である。


 どこもまだ泥だらけなので、こちらも支援物資の服と着替える。ちゃんと子供用の服もあるのだ。


 王族が率先して動いているので、無理矢理連れて来た貴族たちも文句は言えない。

 被災者たちは、まず、自分の家が修理すれば住める、掃除すれば住める、半壊、跡形もなし、といった被害申告から始めた。

 識字率はそう高くないので、取りまとめるのは役人だ。数が足りないので読み書き出来る人たちも手伝う。


 そして、掃除や少し直せば住める家を優先的に作業し、隣近所の人たちも一時的に住めるよう整える。仮住まいだ。

 大分、掃除はしたが、大きな物と通りだけでまだまだ散らばっているので、流木やゴミを掃除する。これはもう誰にだって出来る。

 水分を含んだ流木は重いが、乾かせば薪になるのでマジックバッグ持ち、身体強化出来る騎士たちが力仕事担当だ。


 ろ過出来る水魔法使いはろ過して飲水確保。

 濁った井戸は封鎖し、新しい井戸も掘る…といっても打ち込み式の井戸で手動ポンプで汲み上げる。あらかじめ作ってあるので、セットするだけだが、深くまでパイプを打ち込まないとならないので、土魔法使いの協力が必要だった。

 …とはいえ、【大地の杖】を手に入れたシヴァなら、ほんの一瞬で作業終了なので、場所だけ決めておいてもらう。


 力仕事が苦手な人には食材を切ってもらう。

 大人数料理で何が面倒かと言えば、食材の皮むきと食材切りだ。風魔法でズバズバ切れる人ばかりではない。野菜は先に切っておいても全然いいので頼む。


 割と手先が器用な人には、手ぬぐい、おむつ作りを頼む。

 ショックや病気で母乳が出なくなった母親たちもいたので、シヴァはコアに頼んでアレルギーの出難いヤギミルクをもらい、粉ミルクを錬成。

 アクリルもどきで哺乳瓶も作って母親に渡し、使い方を教える。

 生活魔法のクリーンを使える人が多いので、消毒は問題ない。

 熱湯で溶かして湯冷ましで薄め、人肌ぐらいまで温度が下がったのを肌で確認してから赤ん坊に飲ませる。簡単な作業だ。

 この状況では熱湯を作るのもかなりの作業になるので、魔石ケトルも錬成した。乳児持ちの母親に一人一台ずつ。もちろん、お茶も飲めるし、使っていい。


 しばらく、休め、と国王に言われても、被災者たちはせっかく希望を持てて来たのでテンションも上がり、到底ゆっくりなんてしておられず、また、地元民に案内してもらう方がスムーズなので、結局、領主の館にいる元怪我人元病人以外の全員が働いていた。


 ちなみに、アカネとコアバタの一部は領主の館の領主棟で王族が滞在出来るよう、領主とその家族と使用人を働かせて準備している。

 領主家族をひとまとめにしても、王族それぞれの部屋を用意するのは無理だが、ベッドぐらいは用意出来るので。

 子供たちは二段ベッドだ。

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