上条太郎と篠原
~上条太郎と篠原~
VIPルームに上条太郎と篠原が来ていた。
神野ゆいが上条太郎にいつものように寄付金を渡した。
「またよろしくお願いいたします」
「うん。責任をもって預かるよ」
上条が封筒をしまう。
「神野くん、この前の話し、考えてみてくれたかな」
篠原が聞いた。
「はい。私に出来ることは協力いたします」
篠原は上条と顔を見合わせる。
「実はね、ゆいさん」
上条が話し出す。
「その連携、ぜひ国会議員ともやって欲しいと思ってるんだ」
「えっ?」
神野ゆいは驚いた。
「いや、国会議員にもストレスや悩みが多い人はたくさんいるからね。みんな個人個人でセラピーなんかは受けてるみたいだけど、なかなかね。篠原に連携の話を聞いて、ぜひうちもゆいさんの力を借りたいと思ってね。どうかな」
「どうかと言われましても……。だいたいそのようなことが実現するのでしょうか。資格も何もない者が」
ちゃんと国家試験を受けカウンセラーやセラピストや精神科医といった資格を持つ者がいるというのに、自分のような一般人につとまるとは到底思えない。
と神野ゆいは二人に伝えた。
「まあ、ごく一般的な常識から言えばそうなんだけどね」
「医者やセラピストにかかっても、結局安定剤や睡眠薬を処方されるだけなんだ。こう言っちゃ悪いが、彼らはそれが仕事だからね。日本にはまだアメリカみたいに話を聞くだけの場所がないからね」
「おっしゃってることはわかりますが、かといって周りがそれを認めるかどうか……」
「そこは俺たちが上と掛け合って頑張るよ。神野くんが引き受けてくれるならね」
篠原が言った。
「私は……お二人がこんな私を必要としているのであれば、喜んで協力させていただきます」
神野ゆいは頭を下げた。
「ゆいさんの五年間の経験と実績を武器にしたいんだ。協力してくれるようなお客さんがいたら、匿名でいいからFAXでもメールでも、アンケートをお願いできないかな」
神野ゆいは少し考える。
「それは難しいかと思います。いや、そうじゃなくて、私がそれはやりたくありません。お客様を巻き込むくらいならお断りします。申し訳ございません」
篠原と上条が顔を見合わせる。
「いや、大丈夫だ。神野くんはそう言うだろうと思ってたんだ。やっぱりな、上条」
「そうだね。篠原が言った通りだ」
「すみません」
神野ゆいはまた謝った。
「いいんだ、いいんだ。何か他に案を考えておくよ。うん」
「とにかくお互い、上に相談するとしよう」
「そうだな」
二人は何故か張りきっている。
「ああ、そうだ」
篠原が思い出したように声をあげた。
「ユウタロウの件、ありがとうな。優子がものすごく喜んでいるんだ。何せユウタロウと一緒に健太郎と佑斗までうちに入り浸っているからね。一気に息子が三人出来たと言って大騒ぎだよ。たまに可愛い女の子も連れてくるみたいだしね。賑やかで楽しそうだよ」
「ああ、それはよかったです」
可愛い女の子とは健太郎の彼女の梨紗のことだなと思うと、神野ゆいは自然と笑顔になった。
(健太郎と佑斗に感謝しなきゃな)
神野ゆいは心の中で二人にお礼を言っていた。
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