第10話 初ダンジョン探索:初スキルレベルアップ

 初めてのクランでダンジョン探索が始まった。


 場所は本拠地『新宿』ダンジョンである。


 ダンジョンゲートに入る前に最終確認を行う。


 「もう一回確認しとくぞ。1階層はLv.3のゴブリン。基本的に1匹だが、たまに2匹でてくる場合もある」


 1階層は全国どこもLv.3ゴブリンだったのでもしかしたら全ダンジョン共通なのかもしれない。


 「それと、君たちは戦闘スキルを持っていない。と、いう事は自力で倒す必要がある。ここまで大丈夫かな?」


 3人の顔は緊張で強張っている。


 「友美はヒットアンドウェイを意識しよう。近づく際『分身』することも忘れずにな」


 「……わかった」


 「美咲は友美が攻撃を当てたらすぐに攻撃すること。MPに余裕があったら友美にも付与する練習してみて」


 「わ、わかりました」


 「そしてトドメは穂乃果だな。槍はリーチがある。万が一に備えて俺が横についてるから、安心してトドメを刺してみよう」


 「わかったよ〜」


 この子達の上位スキルはとてつもなく強力なのは俺が取得して理解している。


 だが、パワーレベリングをしてもこの子達のためにはならない。


 慣れるまでは自分たちの力だけで戦ってもらいたいものだ。


 「よし、ゲートを潜ろう」


 俺たちはゲートを潜った。


 一瞬眩しい光を感じる、目を閉じるが目を開けると洞窟型の広い空間に出る。


 ここは、スキルをもらう時に必ずくる場所なので特に問題はない。


 ちなみに、ゲートを潜った先、約10mは魔物が近づいてこれない安全領域らしく、ゲートを潜ってすぐに魔物と戦闘になることはない。


 「この先、しばらく歩いたらゴブリンがいる。『感知』スキルはパーティーに1人は欲しい所だな」


 スキル書は基本的に自分で使用するが、お金が欲しい場合や、鑑定した結果必要ないスキル書は冒険者協会が買い取る。


 『感知』スキルはなぜかよくドロップするらしく価格も5万円程度と割安になっている。


 なので、初心者は第1、2層でゴブリンを狩り、『感知』スキルを手に入れてから本格的に攻略を進めていくのがベストとされている。


 「ちなみにゴブリンの魔石は1個30円だ。約1700匹倒す必要があるが、そんな根性はあるか?」


 3人に問うと、首を横に全力で振っている。


 俺は苦笑しながら


 「当分、感知は俺がするからみんなは戦闘に集中して」


 そう言うと、ホッとした様子を見せた。


 「じゃあ進むよ」


 陣形は戦闘が友美、美咲、穂乃果、俺の順である。


 本当は後を警戒することも必要だが、これは追々やっていけば良いと思っている。


 しばらく歩くと、1匹感知した。


 「ストップ。ゴブリンがくるよ」


 そう声かけると、3人はビクッと反応しながらも武器を構えた。


 「じゃあまずは友美ね。練習を思い出しながら、分身して攻撃を当てたらすぐに下がるんだよ?」


 「……了解」


 頷きながら、前を見据える友美。


 洞窟内は薄暗く、20m先は真っ暗で見えない。


 普通は、光魔法か、ライトを持つのだが、自分たちで気づいてもらいたく、特に指示は出していない。


 「……きた」


 そう呟くと、友美は分身しながら一気に駆け出した。


 いきなりだったので、美咲と穂乃果は置いていかれる。


 友美は一撃与え、すぐに下がるが、美咲はようやく追いついた。


 「ご、ごめんね。遅れた」


 「反省は後だ。もう一回陣形を整えよう」


 戦闘中に反省は御法度だ。死んだら終わりのダンジョン。反省は帰ってからいくらでもできるからな。


 「友美、もう1回いけるか?」


 「……いけるっ」


 「よし、美咲と穂乃果も準備しとけよ」


 その間にもゴブリンが『ギャギャ』と言いながら近づいてくる。


 「……いくっ!」


 そう呟き走り出した。


 その後を美咲と穂乃果も続く。


 友美が一撃与え、横にずれる。その後すぐに美咲の剣がゴブリンを貫く。


 ゴブリンは絶命し,魔石だけが残った。


 「「「…………」」」


 穂乃果の出番なしで終わった初めての戦闘。微妙な空気が流れる。


 「あー。まずはおめでとう。友美の攻撃が2回と付与された美咲の攻撃に耐えれなかったみたいだな」


 「「「……………」」」


 3人は気まずそうだ。


 「それよりも、レベル上がったんじゃないか?」


 3人ともレベルは1。レベル3のゴブリンを倒せばスキルは上がっているはずだ。


 「……分身レベル2になった」


 「わ、わたしも上がってます」


 「私もや〜」


 やはり、スキルレベルは上がっている。


 スキルレベルは通常スキルの最高はLv.10であり、その後上位スキルに進化する。


 スキルは5の倍数で何らかの恩恵ボーナスを受け、特定の派生スキルがつく。


 この恩恵がこの3人を強くする鍵となっているのだ。


 「まあ、初戦はあっけなかったが、2層目に行ってもう1回戦闘しよう。そしたら帰還して反省会だ」


 そう納得させ、2層目に向かう。


 2層目では、3人とも一回ずつ攻撃し、無事にゴブリンを撃破。


 ゴブリンLv.4だったため、スキルレベルも上がり、初探索は大満足であった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る