第48話 祭りの終わり

「じゃあ俺は先に落ちるわ。

そろそろ寝ないと嫁がうるさいんだよ」


「お疲れ様です。プレデターさん。

色々とお世話になりました」


「いやいや。俺の方こそ

楽しませてもらったよ。

またいつかボッチーズで集まろうな」


「はい!」


「プレっちおやすみ!」


「お休みなさい!」


「......お休み」


一人、仲間が落ちた。


「......俺も落ちる」


「おう。お疲れ様。

妹がどれくらい喜んだか、

いつか聞かせてな」


「ああ。オオカミン、柊、ミルミル。

このご恩は一生忘れない。

ありがとう」


「いいよいいよ~

ZIGENっち。お疲れ様!」


「お休みなさい」


また一人仲間が落ちた。


「......それでは......私も落ちますね」


「はい。お疲れ様でした。

ミルミルさん」


「ミルっち! 新曲楽しみにしてるよ!」


「はい! 頑張ります。

ニノさん。オオカミンさん。

本当にありがとうごさいました。

また、いつか遊んでください」


また一人落ちた。


「......ミルっちも落ちちゃったね......」


「そうだね」


残されたのは俺とニノだけ。


「あーあ、あっという間だったなぁ」


「あっという間だったね。

この五日間一瞬だったよ」


「でも、すっごく長く感じたよね。

ほら、この拠点とか。

まるで僕たちずっとここに住んでた

感じする」


「確かに。間違いなく五日間の

感覚じゃない」


「うんうん。ここから二人で

始まったんだよね」


「うん」


「オオカミン......いつ落ちる?」


「このサーバーがなくなるまでかな。

あと15分くらいだと思う」


「......ならさ、ちょっとだけ

配信落としてきてもいい?」


驚いた。

つまり、誰も聞かれていない状態で

話したいということか。


「いいよ。

俺も配信落としてくる」


それから5分ほどして。


「戻ったよ。ニノ」


「......」


「ニノ?」


返事がない。

まだ戻ってきていないのか?


そう思ったときだった。


「やだやだやだやだやだやだ!!!!!!」


急にニノが泣き出した。


「ニ、ニノ!?」


「......終わりたぐない......ずっど

ここにいだい」


ニノがこんな子供のように

泣き出すなんて初めてだ。


「もっど......オオカミンとごごにいだい」


「ニノ......」


「ぼ、僕ね......ほんどはね......

この配信者祭に出だぐながっだの......

ドリガルの運営さんがどうじても

出てほしいって頼まれたから......

出ただけなの......だって、ドリガルって

だけで皆避けてくし......

なんかいじめられるみたいで......

心が痛くなって......このゲームを

初めて直ぐのときも皆僕から

離れていくし......実はあのとき

裏で泣いてた」


「......そうだったんだ」


いつも明るくて、弱味なんて滅多に

見せないから、ニノの

心がこんなにも繊細だなんて知らなかった。


「けどね......泣いてるあのときに、

オオカミンが声かけてくれて。

この五日間ずっと泣くの我慢しながら

一人でいないといけないのかなっていう

不安がなくなって。

むしろ、この五日間凄く幸せだった。

だから、もっといたい。

もっとオオカミンと一緒にいたい」


「よかった」


「え?」


「あのとき、ニノから逃げないで、

ニノを選んでよかったよ」


心の底からそう思えた。


きっと、あのままアンチから逃げて、

ネオさんのチームにいたら、

ニノのことがずっと心に引っ掛かって

楽しくなかっただろう。


他の三人にも会えなかった。


この五日間を充実できたのは、

間違いなくニノに会えたから。


「一番最初にニノに会えたから、

この五日間が凄く楽しかった。

あのとき勇気出してニノに声かけて

よかったよ」


「こぢらごぞおおおお......」


もう泣きすぎて何言ってるのか

分からない。


「また遊んでね!

絶対だからね! 約束だよ!」


「うん。絶対遊ぶよ。約束」


「......オオカミン!」


「ん?」


「オオカミンに出会えてよかった!」


その言葉を最後に、画面が急に暗くなった。


サーバーが消えたのだ。


ふぅーっと長いため息が出た。


「終わったのか......」


まるで夢のような時間だった。

それくらい濃くて充実していた。


ピコンとデスコにメッセージが入る。


ブイライブのグループのようだった。


【お疲れ様、皆】


【ネオンちゃんもお疲れ様】


『ネオさん、マリアさんお疲れ様です』


【あ! オー君! 許さないぞ~?(# ゜Д゜)】


『許してください(´;ω;`)』


【冗談 笑

オー君優勝したからそのご褒美で

許してあげます】


『優しい......』


マリアさんに言われたことで、

何となく優勝したことの実感が湧いてきた。


【優勝おめでとう。

今回の狼は凄かったわよ】


『ネオさん......ありがとうございます』


【あのときは私の憶測で、

これ以上炎上しないように柊さんと

関わるのやめなさいって言って

しまってごめんなさい】


『いえ。ネオさんが俺のことを

思ってくれてたの知ってますから。

大丈夫ですよ』


【......思ってるっていうか......

何というか......】


【ネオンちゃんのデレ出た】


【デレてない!

そんなことよりも! 狼!

貴方、最近自分が凄いことになってるの

知ってる?】


『凄いこと?』


【自分のチャンネル登録者数見てみなさい】


────────────────────


オオカミンはこの五日間、

炎上しているのを知っていたから

全くネットを見ていなかった。

同接もチャンネル登録者数も全て

見ないように努めた。


そんなオオカミンが全く見ていなかった

ネットの様子は以下の通りだった。


一日目、オオカミンがニノと接触して

炎上する。


二日目、オオカミンがアンチに反撃して、

アンチ減少。そして、ファンが急激に増加。

ニノとオオカミンのカップリングが

できる。


更に、プレデターと接触して、

多くの人間にオオカミンが認知される。


三日目、ミルミルと接触。

ミルミルリスナーは元々、

ミルミルから歌手になった

理由を聞かされていた。


その理由となった彼が

オオカミンかもしれないと

ミルミルが配信で呟く。

それにミルミルリスナーが盛り上がる。

早くそれを伝えろ! という流れになる。


ミルミルとオオカミンの

カップリングが成立。


更に、オオカミンが腫れ物のZIGENを

仲間に誘ったことにより、プレデターの

リスナーがオオカミンのヤバさに気がつく。


四日目、オオカミンが

同じ事務所の女性Vtuberの

スリーサイズを叫ぶ。


それをプレデターとプレデター

リスナーが面白がる。

プレデターリスナー達の

「オオカミンってヤバイ奴」

という予想が確信に変わる。


配信者としてヤバくて面白い奴と認定され、

ファンが爆発的に増える。


更に、ZIGENの背景を知って、それに

協力したおかげで、ZIGENファンも

味方につく。


腐女子によるオオカミンとZIGENの

カップリングが誕生。


『オオカミン 太ももフェチ』 トレンド入り



五日目、ミルミルがオオカミンに

昔ゲームで知り合っていたことを告げる。


ミルミルリスナーが待ち望んでいた展開に

凄まじく盛り上がる。


『ミルカミン てぇてぇ』 トレンド入り



ZIGENに優勝賞金を全額与える。

ZIGENファンが泣く。


攻めのオオカミンと受けのZIGENの

ファンアートがトイッターに投稿される。

なお、BL



ニノが最後の最後で配信を落とした後に

オオカミンと話す。


配信を落としたことで、

逆にリスナー達は二人が何を話したのか

気になる。


『オオカミン』

『ニノ』 トレンド入り



以上。

オオカミンは知らないが、彼は

今回の配信者祭の主役と言ってもいいほどに

祭りを盛り上げた。


更に、その盛り上がりも含め、

関わったのがあの柊ニノとプレデターと

いうこともあり、オオカミンの登録者数は

大きく変わった。


一週間前

オオカミン 登録者数 50001人 平均同接1500


そして、配信者祭が終わった今。


オオカミン 登録者数 426000人

平均同接 11000人




────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白いと思ってくれた方は、

是非とも【レビュー】【スター】【いいね】

の方をよろしくお願いします。



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