第五章 90  Devastation The Huge Stampede & The Last Demon!



 ヨルムに乗って南門の外まで飛ぶ。


「来い! 神剣ニルヴァーナ!」

「お願い、ルティ!」

「あいよー」

星芒せいぼうより来たれ! クローチェ・オブ・リーブラ天秤の十字架!」

 

 各々が自分の武器を構える。南門前に着地させたヨルムから見る、南門に迫り来るベヒーモス地魔獣の大軍。東門の方にも反応がある。黒や青や赤など、様々な色をした数十m以上はある巨体に、二本の巨大な角、四足歩行の全身を分厚い獣皮が鎧の様に覆われている。こいつは確かに並の武器じゃ傷一つ付けられないだろうな。

 だが俺達には神格に神気、神器やそれに匹敵する武器がある。怖れることはない。そして神気を放った状態でヨルムと両親の再召喚を行った。陽子ようしを破壊できる俺達にとっては紙切れも同然だ。


「先ずは挨拶代わりだ。いけ、ヨルム!」

「任せよ主! 受けろ、我が輝くブレスを!」


 ドゴアアアアアアアアアアアアッ!!!


 神気を纏った極光の竜の息吹ドラゴンブレスが、放射線状に放たれ大地を敵ごと抉る!


 グギャアアアアアアア!!!


 凄まじい威力のブレスに、迫り来るベヒーモス共が粉砕されていく。だがまだまだだ、俺の千里眼と鷹の目には、南東にある大迷宮から次々に敵が飛び出して来ているのが視える。どんだけいるんだ? 数万は下らないだろうな。だが俺達だけで掃討する!


「アヤ、母さん! 南門の防衛と援護は任せる!」

「任せて!」

「はーい、漸く母さんの出番ねー」


 ババッ! 飛び降りる二人。


「イヴァ、親父! 東門にも反応がある! 二人はそっちを頼む!」

「よっしゃー、行くぜ猫嬢ちゃん!」

「任せるのさー!」


 ダンッ!!


「全員逆探知を発動させて自分達にターゲットを絞らせろ! エリック、ユズリハ、ディードは目の前の敵の掃除を任せる!」

「はい! カーズ様!」

「オッケー!」

「任せときなー!」


 ドンッ! 同時に飛び出す三人。


「アリア、視えてるんだろ? 操られてる神獣達が」

「ええ、神龍ケツアルコアトルにグリフォン、フェンリルにフェニックス。どうやら大将首は神鳥フェニックスに乗っていますね」

「なるほど、ダカルーのばーちゃんの時と同じだな。アリア、グリフォンはお前がどうにかしろよ。ケツアルコアトルは、竜王兄妹、お前達に任せる! 行け!」

「ハイハーイ、気が乘らないけど行って来ま―す」

「うっす、兄貴! お任せを!」

「うげー、神龍かあー、でも仕方ないわね。カーズ、ちゃんとご褒美――」

「さっさと行け!」


 ドドゥッ! 翼を羽搏かせて敵陣の此方から見て右側にいる巨大なドラゴンへと向かう二人。そしてアリアも大迷宮の左上空を飛んでいるグリフォンの元へ向かった。


「父上、私は……?」

「じゃあアガシャはフェンリルを大人しくさせてくれ、殺すなよ」

「わかりました、お任せを!」


 バッ! アガシャもベヒーモスの大軍内のフェンリルに向けて飛び降りた。よし、後方からアヤと母さんの魔法のバフが飛んで来る。初めての戦場でも全くもって冷静だな。母さんには勝てる気がしない。母さんにも魔導銃を二丁創って、前以て渡してある。装備はアリアが着ている様な女神の戦衣装、黄色のマジックドレスだ。召喚した際に戦闘用に変換されたんだろうな、親父の和風の鎧の様に。


「主よ、我らはどうするのだ?」

「まあ高みの見物してても終わるだろうが、俺達は大将首だ。折角のお祭りの邪魔をしてくれたツケを払わせてやるぜ!」

「うむ、大迷宮手前の上空で不死鳥に乗っておる悪魔だな? ではゆくぞ!」


 ギュウンッ! 


 数十㎞の距離を一瞬で詰めて接敵。巨大な炎の様に燃える不死鳥の上に乗っている大奥義書最後の1柱、序列一位のルキフゲ・ロフォカレ。初めて見るその姿は禿頭にねじれた三本の角とぎょろついたデカい目、魔物の爪が生えた長い両腕。ロバの足と尾が生えている異形の巨体だ。貴族の様な上質の服を纏い、輪と袋、或いはフラスコを持つとされているが、こいつは輪、これが鑑定する限りこいつの武器だ。円月輪えんげつりんね、Sランク相当だ。袋は持っていないが、恐らく異次元倉庫ストレージだな。その中に財宝でも隠しているんだろう。


 こいつはルキフェル、ルキフグスとも呼ばれ、その名は『光を避ける者』の意。ルシファーの『光を掲げる者』に対極するものと言われる。大魔道書グラン・グリモアールによれば、ルキフゲは地獄帝国の最高権力者ルシファー、ベルゼバブ、アスタロトらに仕える上級悪魔の一人にして、地獄全土の『首相・宰相』である。ルシファーから世界の財宝と富の全ての管理を移管され、それらを完全に支配する。

 ルキフゲの配下にはバエル、アガレス、マルバス等、有力な地獄の王侯が仕えるとされているが、配下はサーシャが仕留めたはず。ローマリア襲撃からかなり時間も経っているのにいないということは、完全に滅却されて復活も不可能ということだろう。

 ルキフゲの既知の能力は大きく分けて二つ。一つは自らを召喚した者に、悪魔王から付与された能力で、地に隠された財宝の在り処を教えること、別の資料などでは『あらゆる望みを叶える』ともされている。もう一つは破壊能力。大地を操り、地震を起こし、神聖なる場所を破壊する。また、人々に疫病と奇形をもたらすとされる。今回現れたのが地の魔獣ベヒーモスというもの納得できる。だが疫病は厄介だな。もし広範囲に展開されるとかなり危険だ。


 しかし、強力な利益をもたらすルキフゲの召喚は容易く無い。普通の召喚術では強大な彼を魔界から呼び出せない。まずは、ルキフゲの支配者ルシファーに彼の顕現を請うことから始め、媒介には『本』を使わねばならない。さらに召喚後も彼を服従させる為には、特別な召喚円を用いた上に『破砕杖』が必要だ。そして、願いが成就したのなら、召喚者は願いの代価として己の魂を差し出さねばならない。ただし、この代価を支払うのは数十年先の未来である。

 …悪魔の邪まな力で満たされた人生を送れたとしても、結局その末路には地獄での永劫の責め苦が待つ、ということなのだろう。と、まあこれは大奥義書の知識。敵として現れた以上は滅却するのみ!


「テメーはここで何をやっている? 女神のアリアや神殺しゴッド・スレイヤーの俺、神格者が数多くいる中に攻め込んで来るとは、いい度胸じゃねえか」

「フハハハ! これは我が主ファーレ様の命だ。Sランク冒険者やお前達『反抗者』共を一網打尽にすることが彼女の望み。ならばそれを叶えるのが配下の望みでもある。そして大迷宮に封じられている者がいることは知っているであろう?」

「そうか、やる気だな。だが最早悪魔如き相手にもならん。一瞬で終わらせてやるよ」


 ジャキッ! ニルヴァーナを左手に構える。しかし『反抗者』ね、ファーレに敵対している者達のことか? まあ、どうでもいいな。


「ならば受けろ! 舞え、円月輪!!!」

 

 ギャリィイイイイイイン!!!


 多少魔力を乗せた攻撃だったが、俺の神気の鎧装に阻まれて、投擲した丸い刃のついた円月輪は消滅した。やはりこの程度か……。


「なっ……!? おのれ、やはり貴様は危険な存在だな……!」

「相手が悪かったな。ただの武器が神気を破れるハズがないだろう? じゃあ質問だ、キッチリ答えないなら、一瞬で粉微塵にする! ファーレとナギストリアはどこにいやがる?」

「フハハハ! 言うとでも思っているのか! このルキフゲを侮るで――う、が……!?」

「魔眼・魅了テンプテーション、お前の動きは封じた。さっさと話せばいいものを」

「…あの方は、濁魂、を連れて何処か、に行かれた。それ以外は知らぬ! く、おおおおおおお!!! 邪神召喚!!!」


 あっさりと勝負を捨てたか。命を振り絞って抵抗し、ヤツの命を媒体に黒い魔法陣が浮かび上がる。邪神か、相対するのは久しぶりだな。だが自分の実力の上昇を計るには調度いい、さあ出て来やがれ!


「フハハア! さらばだ特異点のカーズよ……!」


 ルキフゲが消え、奴の異次元倉庫からお宝が大量に地面に落下する。そして魔法陣から異形の邪神が現れる。巨大な黒い蛇の様な姿だが、何だ? 違和感がある、既にボロボロに傷ついているだと……?


「う、ぐ……、我が名はアポピス。冥界の深部に囚われていた邪神。だが助かったぞ、あのままでは殺されていたところだ……。だが我はついている、こいつらを皆殺しにすれば、自由となれる……!」


 アポピスね、闇と混沌を象徴し、その姿は、主に大蛇として描かれる。蛇は、古代エジプト人にとって身近で畏怖される存在。太陽の運行を邪魔するのでラーの最大の敵とされる。世界が誕生する前の『原初の水』のヌンに象徴される原始の水の中から生まれたと言われる。世界の秩序が定まる前に生まれたので秩序を破壊しようとすると考えられた。あるいは、もとは、太陽神としての役割を担っていたが、それをラーに奪われたため彼を非常に憎み、敵対するようになった。ここからラーの乗る太陽の船の運航を邪魔し、日食を起こすと考えられたというエジプトやイスラムの邪神だ。

 冥界に捕えられており、ここを死者の魂が通ると襲いかかる。『死者の書』という本には、アポピスから身を守る方法が描かれているとされた。またラーの乗る太陽の船が通過する時、『戦争・砂漠・嵐の神セト』は船を守りアポピスを打ち倒すための天敵と言われている。しかし時代が下ると、その邪悪さのためにセトと同一視された。という存在だ。

 しかし、パズズといい、こいつといい、何故邪神は俺の知識の名前そのままなんだ? まあいい、さっさとこいつをぶっ潰してやるぜ。レベルは3250、パズズとそう変わらないな。


「おい、クソ蛇! テメーは何でそんなにボロボロなんだ?」

「む、貴様は……!? なるほど貴様がファーレの言っていた特異点か。いいぞ、ツキは我にある。貴様の神格を喰らい、糧としてやろう!」

「ファーレと出会ったのか? ならばもう一人濁魂の特異点がいたはず。お前らは何をやってやがる?」

「知らんな、突然ファーレとその濁魂が冥界の邪神封印の地に現れ、同胞達は次々にその濁魂に討たれて神格を奪われたのだ」

「何だと? じゃあ奴らは今冥界ということか!? ……情報はありがたく貰っておこう。そして邪神のクソ蛇、何か言い残すことはあるか?」

「クハハハハ! 最早自由の身となった我と闘うつもりか? 身の程知らずめ!」

「お前らがやられたナギストリアを半殺しにしたのは俺だ。この言葉の意味がわかるな?」

「な……っ!? くそが……、だがただでやられると思うな! 喰らえ! 竜の息吹ドラゴンブレス!!!」

「無駄だ、スペル・イーター魔力食い!」


 バシュゥゥゥ……! 展開された魔法陣に吸い込まれるどす黒い瘴気のブレス。


「くそ、神気の竜の息吹ドラゴンブレスを吸収するとは……!? ここまでか……」

「その通りだ。だが情報は感謝するぜ。いくぞ、アストラリア流ソードスキル」


 左手で突きを放つ構えをとり、右手を刀身に添える。


テンペスト・プレデーション暴風を喰らう破壊の牙!!!」


 ドゴオオオオオオオオッ!!! パアアアアアアアンッ!!!


 高速の嵐を纏った突きが、巨大な口を空けて最後の悪足掻きをしようとしたアポピスの顔面を突き破り、流し込んだ神気で全身が弾け飛ぶ! 奥義じゃなくとも邪神を打倒できた。俺は確実に成長している。そして体に流れ込むこいつの小さな神格。僅かに力が上昇した。さて隷属の呪いを解いてやろう。フェニックスに向けて右手をかざす。


パーフェクト・キャンセル完全なる呪縛の解除!!!」


 パキィイイン!!!


 隷属の首輪が粉々に砕け散る。同時に意識を取り戻す不死鳥。


「くっ……、私は? 意識を乗っ取られていたのか……?!」

「そうだ不死鳥よ、まだ神龍に神獣、神狼が操られている」

「む? 其方は神の試練の番人ではないのか?」

「今は我が主カーズの僕、ヨルム。其方の呪縛を解き放ったのも我が主よ」


 どうやら意識を取り戻したらしい。残りは3匹だ。


「フェニックス、力を貸してくれ、他の神獣達の呪縛も解く!」

「なるほど……、其方があの特異点。よかろう、我が真名まなはフェリス! 其方に我が力を与える!」

「は?」


 光の粒子となり、俺の体に吸い込まれた。召喚契約かよ、いきなりだな。まあいい、なら早速使わせて貰うぜ!


「来い! サモン召喚・フェリス!!!」


 ゴオオオオオオオオゥッ!!!


 炎と神気の渦を巻いてフェリスが召喚される! 巨大な鳥から赤と白く輝く炎が太陽の周囲を覆うプロミネンスの様に波打っている。SS召喚と神気の上乗せだ。先程よりも放っている力が遥かに増大している。


「ヨルム! この迷宮の入り口から溢れるベヒーモスの大軍を蹴散らせ! 味方を巻き込むなよ! 俺はフェリスと共に他の幻獣達の呪縛を解いて回る!」

「任されたぞ、主よ! さあゆくぞ、有象無象共!」


 探知、やはり一番苦戦しているのは竜王兄妹か。格上の神龍だしな。


「フェリス、先ずは神龍だ、行くぜ!」

「承知した!」

 

 燃え盛る体、だが俺には全く熱さを感じられない。神秘的な神鳥の背に乗って、神龍達の下へ向かった。



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 バチィ……ッ!


「くっ、さすがは神龍様ね。強過ぎる……」

「ああ、だが兄貴の指示だ。負けられねえ!」

「そうね、ご褒美貰わなくっちゃ!」

「お前はまだそれを言ってんのか? また怒られるぞ」

「女は諦めが悪いのよ!」


 神龍相手に苦戦する二人。それもそのはず、神獣にして幻獣界でも上位に位置するドラゴン。異常なまでの大蛇の様な巨体、金色に輝く体毛に翼。攻撃にも神気が纏われている、当に神の龍。龍闘衣ドラゴローブを纏った二人でもまだまだ差がある。

 だがカーズは敢えてPTではレベルの低い二人の成長の為に、このケツアルコアトルの相手を任せたのだ。だからこそ負けられない。


「やるぞ、チェトレ!」

「ええ、なりふり構っていられないもの!」

「「はああああああああああ……!!!」

「燃え上がれ! 俺の神気よ!」

「燃え盛れ! 私の神気!」


 二人が同時に天にかざした掌に、闘気と神気の輝きが集中されていく。


「「暴風龍壁ぼうふうりゅうへき発動!! 今こそ唸れ、竜王の奥義よ!」」


 二人の合わせた両掌から極黒のエネルギー砲が発射される!!!


 カッ!!! ゴアオオオオオオオオオオオッ!!!


「「ダハーカ・ブレス!!!」」


「ウグオアアアアア!!!」


 暴風龍壁で自らが技の余波を喰らわない様に防御強化をして、放つ竜王の奥義! 何百mという巨大なケツアルコアトルへ強力なブレスが直撃する!


「ウ、グアアアア!!! 金星竜の息吹ヴィーナス・ブレス!!!」


 だが、ダハーカ・ブレスを相殺する様に、ケツアルコアトルの巨大な口からも、黄金に輝くブレスが放たれる! 互いのブレスがぶつかり合い、中間でその威力がくすぶり合う! これをこのまま押し戻されて被弾すれば龍闘衣を纏っていようが一瞬で消滅する程の威力だ。


「「うおああああああああああーーー!!!!!」」

 

 ドゴオオオオオゥッ!!!


 渾身の力を込めて放つブレスが黄金のブレスに押し返されていく。二人が死を覚悟した瞬間だった、


「スペル・イーター!!!」


 ギュイィイイイイイーーーン!!!


 二人の眼前に巨大な魔法陣が展開され、金星竜の息吹ヴィーナス・ブレスを吸収して飲み込んだ。魔法が放たれた方角から、カーズがフェニックスに乗って現れたのだ。


「カーズ!?」

「兄貴?!」

「時間稼ぎご苦労さん、だがまだまだだな、じゃあいくぜ! 呪縛よ散れ! パーフェクト・キャンセル完全なる呪縛の解除!!!」


 カッ!!! バキィイイン!!!


 巨大な隷属の首輪が粉々になって消滅した。そしてケツアルコアトルの意識が目覚める。


「う、ぐ……?! これは一体……? むぅ……、その透き通るような清らかな神気……。お主が件の特異点か……。そして我が龍の子達よ、よくぞ私を相手に勇敢に闘った。ここに神龍の加護を授ける! 受け取るがよい!」


 アジーンとチェトレの二人の体が黄金の輝きに包まれる。


<神龍の加護を授かりました。全能力に耐性が大幅にアップ。超速再生と神龍闘技を会得しました>


「すげえ、なんだこれ……!?」

「凄い力が、それに技が脳裏に浮かんで来る!?」


 近くにいたカーズにもその声が聞こえていた。


「さて特異点のカーズよ、我が呪縛を解いてくれて礼を言う。我が真名はケルコア。其方に我が力を貸そう!」

「え?」


 またしても光の粒子となって体に吸い込まれていく幻獣。


「またかよ……。まあいいか、これからもよろしく頼む、ケルコア」

『任せておくがいい』


 神格から声が響いて来る。カーズは意図せず新召喚獣を二体も手に入れた。




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「さすがカーズね! 神龍様を召喚獣にしてしまうなんて!」


 チェトレが抱き着いて来る。全くこいつは……。


「さすが兄貴っすね! 神龍様がお認めになるなんて!」


 アジーンも興奮してんなあ。だが結構バチバチにやり合っていたせいでそれなりに負傷している。加護を得たとはいえ、一応回復させておくか。


ヒーラHP・体力大回復! お前達はこのままヨルムと一緒に、下にいるベヒーモスの大軍を蹴散らせ。アジーン、再生力が増したと言っても無駄な被弾はするなよ!」

「は、はいっす!」

「俺はこのまま他の神獣達の呪縛を解いて回る。フェリス、次はフェンリルだ、下に行くぞ」

「承知した」


 フェンリルと対峙しているアガシャを捉えた。ベヒーモスに邪魔されない様に互いを神気結界で隔離している。冷静なことで何よりだよ。


「グルルルル、グアアアア!!!」

「フッ! ハアッ!!」


 ガギィイン! ギギギギギィン!! 


 フェンリルの牙や爪と、アガシャの剣が交錯する!


「本体に傷をつけられないのはやりにくいですね……。ならば仕方ない。拘束するまで!」


 アガシャの左手の人差し指から、フェンリルの体に金色の月食のリングの様な輪が何本も放たれて、フェンリルを縛り上げ、拘束する!


 ビシイイイ!! ギチチチッ!!!


ルナエクリプス月食のダイヤリング光環拘束

「ウガアアアアッ!!!

「アガシャ、無事か?」


 俺が降下してきたときには、アガシャの魔法で既にフェンリルは捕獲されていた。


「ええ、父上。たった今拘束したところです。傷つけないように相対するとは難しいですね」

「そうだな、だがこういうのも経験だ。よくやったな」

「はい……、ありがとうございます…」


 頭を撫でると、いつもながら照れ臭そうな顔をするアガシャ。うーん、可愛いやつめ!


「さて、じゃあ呪縛を解く。いくぞ……、パーフェクト・キャンセル完全なる呪縛の解除!!!」


 バキィイイン!!!


 隷属の首輪が砕け散る。同時にアガシャが拘束魔法を解いた。


「ぐああああっ! おのれ、堕天神共め! ん? …これは……?!」

「アンタは操られていたんだよ、堕天神の創った魔道具でな」

「むぅ……、なるほど、そういうことか。そして特異点のカーズ、其方が私の呪縛を解いたのか? では何か望みはあるか? この恩を返さないなど神狼の名が廃る」

「望みねえ……じゃあ、この俺の娘のアガシャの力となってやってくれ」

「ち、父上!?」

「良かろう、私の真名はリンクス、アガシャよ我が魂は其方と共にある」


 カッ! シュゥゥゥゥーーー……


<リンクスとの召喚契約により、召喚魔法を習得しました。召喚獣のランクが高位の為Sランクでの習得になります>


 アガシャの神格に吸い込まれると、同時に声が聞こえた。もうこの声を俺は『アナウンサーさん』と呼んでいる。どこから聞こえてくるのかも謎だ。


「宜しいのですか? 父上?」

「いいさ、俺にはもう三体も強力な召喚獣がいる。アガシャ、早速召喚して一緒に周りの雑魚共を蹴散らしてやれ」

「わかりました。来て! サモン召喚・リンクス!!!」


 ゴオオオオオオオオゥッ!!!


 地面に展開された召喚陣から、先程よりも強力な力を放つフェンリル、リンクスが出現する。


「早速出番か。ではアガシャよ、この地魔獣共を殲滅するぞ!」

「ええ、行ってきます父上!」

「おう、後で俺も合流するよ」


 残りは各門に迫ったベヒーモスと、アリアが相手をしているグリフォンだが、全体の状況を見て回るか。アリアのグリフォンへの贖罪はあいつの責任だしな。


 俺は全体の戦況確認の為に、不死鳥フェリスの背に再び飛び乗った。








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続きが気になる方はどうぞ次の物語へ、♥やコメント、お星様を頂けると喜びます。執筆のモチベーションアップにもつながります! 

一話ごとの文字数が多いので、その回一話でがっつり進むように構成しております。

今回のイラストは此方、

https://kakuyomu.jp/users/kazudonafinal10/news/16817330662675164890

そしてこの世界ニルヴァーナの世界地図は此方、

https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/d5QHGJcz

これまでの冒険と照らし合わせて見てみて下さい。

そして『アリアの勝手に巻き込みコーナー』は此方です。

https://kakuyomu.jp/works/16817330653661805207

アリアが勝手に展開するメタネタコーナー。本編を読んで頂いた読者様は

くすっと笑えるかと思います(笑)

そして設定資料集も作成中です。登場人物や、スキル・魔法・流派の解説、

その他色々とここでしかわからないことも公開しております。

ネタバレになりますが、ここまでお読みになっていらっしゃる読者様には、

問題なしです!

『OVERKILL(オーバーキル) キャラクター・スキル・設定資料集(注:ネタバレ含みます)』

https://kakuyomu.jp/works/16817330663176677046


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