あとがき 2024
あれから32年が経過した。1991年当時バブルはもう崩壊したが所詮一時の不況ととらえていた。1人当たりGDPはルクセンブルクといい勝負で世界平均で見ても超・富裕国家だった。しかも当時は人口約40万人の小国であるルクセンブルクと違って日本は1億2000万人の大国で「21世紀は日本の時代」と世界の誰もが信じて疑わなかった。当時のアメリカ合衆国は瀕死でジャパンバッシングが起きていた。本当に日本車をハンマーでたたき割っていたのだ。
異変は1995年の阪神大震災とオウムだった。ちょうどこのころから「不良債権を隠しているのでは?」といううわさが飛び交っていた。二信組が倒産した。しかしIT革命が起き日本はOSという部分では取られたものの周辺機器つまりプリンター・デジカメ・FD・フラッシュメモリなどで天下を取っておりこの国がIT後進国になるとは夢にも思ってなかった。それどころかゲーム機戦争が起き同時接続構想まで起きた。今で言うインタラクティブ・エンターテインメントの事である。日本と言う国はIT社会の天下をハード(工業製品)で取ろうとしていた。アホである。もうソフトの時代となって久しいのに。
そしてこの国の虚飾がばれた。1997年に不良債権爆弾というものが一気に破裂した。山一證券、拓銀、長銀、日債銀などが倒産した上他の都市銀行も強制統廃合となった。IT投資にもっとも積極的になるべき時期なのに逆に不良債権処理をし貸し渋りあげくは貸し剥がしを行いITに投資をせず、せっかく誕生したプログラマなどもデスマーチで使い潰すなどと言った「アホの極み」を行った。そして我が国の世帯所得のピークは1997年で本当にこの時を境に日本は経済的に心停止するとは思えなかった。あとはもう日本と言う国は坂道を転がり落ちるかのように劣化していった。この国の文明水準は20世紀末で止まったとみていい。嘘だと思うのなら2024年の動画からスマホと液晶テレビを抜き取ってほしい。一体何が違うというのか。2024年の日本はほぼ1997年当時と同水準の生活水準である。
――この国は1997年4月以降、「好景気」というものを味わったことが無い
よって日本国は1991~1997年と言う文明過渡期でIT時代に変化出来ずに沈没していった。
ちょうどこの1997年頃に欧州を中心に「現代は冷戦後の1991年からにしよう」という動きが活発化していった。「現代」という時代は動くものであり、かつての現代は過去の「近代」になるということすらも忘れて日本人の中核は当時の若年世代を犠牲にして初老世代やすでに老人となった世代は逃げ切ろうとした。そして膨大なツケを残し無事逃げ切った。気が付けばこの国は先進国などとは程遠い現実になり海外旅行をする側からされる側になり爆買いする方から爆買いされる方になった。こんな状況になっても1991年と1995年で時代も文明も文化も全く別物へ変わったことに気が付きもしなかった。コロナ禍になっても他国は普通にリモートワークしていたのに我が国はハンコにFAXと来たものだ。そりゃ1991年以前も「現代」としたがるよなと。
――おかげでジャパンバッシングはジャパンパッシングとなり果てはジャパンナッシングとなった。
こんな屈辱の歴史を「無かったこと」にしたいのかそれとも「自虐史観」と称して史実をゆがめたい勢力が居るのか分からないが頂点から没落した平成と言う時代に真摯に向き合う歴史家はなんと2024年になってもほぼ登場していない。もう令和6年なのに、だ。なお昭和と言う年号が変わった時には「昭和」という時代の総括を平成2年頃に真剣にあちこちで行い「昭和と言う時代は最後はハッピーエンドで終わった」という総括がなされたことを考えると本当に都合がいいなと。要は没落を認めたくないから昭和の黄金時代も「現代」つまり現在進行形にしたいのだろう。
はっきり言う。近代工業社会なんてもんは1991年を持って終わりを迎えたし冷戦も1991年を持って終わりを迎えた。日本だけである。いまだに右翼だの左翼だと言っている
だとしてもだ。私は史学側に次の問いを投げかけたい。
『いい加減に「現代」の始まりは1991年としないか?』
そして今を生きる50代以上80代未満には次の責務がある。平成という日本史を偽りなく後世に伝え1991年以降の世界史を偽りなく後世の世代に伝え、日本は世界的にも恥辱の32年を歩んできたという史実を後世に伝えるべきである。でないと史実を後世に改竄されてしまう。歴史家たちよ、それでいいのか!? 史実というのは生きているうちに残し、伝えるものである。
(終)
いい加減に「現代」の始まりは1991年としないか? らんた @lantan2024
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