第9話 初めての連絡先交換

第9話


目の前で凄い爆発が起こった。


赫月さんが振り下ろした剣から大量の炎の斬撃と、炎の熱波がダンジョンの隅々まで飛び渡っていく。


ああ、マジで…………


「これ、死ぬんじゃね?」


酷い死に方かもなぁ、コレ………


☆☆☆☆☆


「ぷはっ!!し、死ぬかと思った………」


何か無事だった。


全く熱くもないし、飛んできた岩とかは【硬化】で何とかしたし、案外何とかなる物だ。


「トカゲ共は………」


辺りを見渡すと、トカゲ共は影も形もなくなっていた。


気配も感じないし、赫月さんの技で完全に消しさられたのだろう。


赫月さんは………


「はぁ、良い炎だったわ………」


─────何かホッコリしていた。


縁側でお茶飲んでるお婆ちゃんみたいだな、言ったら怒られそうだが………


「だ、大丈夫でシュか、あ、赫月しゃん?」

「大丈夫よ♪むしろ、貴方の炎のお陰で、想像以上に元気になってるわ♪♪」

「そ、そうですか。お、俺なんかのほ、炎がそこまであ、貴方の役に立つなんて、こ、光栄です!!」


い、いやぁ、本当に良かった。


こんな俺でも、誰かに認められるってのは嬉しいよなぁ………


でも、何で炎で元気になるんだろうか?


そういうスキルなのか?


「そんなに卑下しないの!貴方の炎、今まで味わってきた炎の中で一番最高よ!番組で食べた高給料理を思い出す位に良かったわ!」

「あ、ありがとうございます!────ば、番組?」

「そうよ、番組。昔、皆で料理番組に出演する事があってね………」


え、も、もしかして、それって………


「あ、赫月さんは、も、もしかして、げ、げげ、げげげ、芸能人でい、いらっしゃる?」

「そうよ?私、正確には私達は探索者アイドルなの。まさかとは思ってたけど、本当に知らなかったのね………」

「ひゃ、ひゃい!す、すみませんでした。許してください!」


お、俺は何て事を………


芸能人に『知らない』とか言うなんて、万死に値する行為だぞ!?


「だ、大丈夫よ。確かに有名ではあるけど、今日がなったばかりなんでしょ?なら、知らなくても可笑しくはないわよ。」

「いえ、謝らせてください。何なら、俺に償いとして何かをさせてください!何でもしますから!」


それ位じゃないと、俺も納得ができない!


「ちょっと待って。」

「ひゃ、ひゃい!」

「今、『何でもする』って言ったよね?」

「はい、言いました。犯罪以外なら何でもしますです。」


な、何かこ、怖いですよ、赫月さん?


凄い良い笑みで見てくるし、凄い力で肩を握ってくるし………


あ、か、顔を近付けないで!!


女の子にそんなに顔近付けられたの、幼馴染と妹以外に初めてなの!!


そ、それ以上は惚れちゃう、烏滸がましくも惚れちゃうから!!!


「なら、私と連絡先交換してくれる?」

「へ?それ位なら………でも、俺やり方は知らないので、お任せします。」

「貴方、携帯渡してくれるのね………悪用はしないけど、もう少しちゃんとした方が良いわよ。」


はは、そんな事ある訳ないじゃないですか、もう。


そもそも、俺の携帯の中身ってソシャゲだけだし、連絡先も親と妹、何故かいつの間にか勝手に入って幼馴染くらいだしな………


「………よし、出来た。私の番号からかかってきたら、直ぐに出る様に。」

「ひゃ、ひゃい!」

「ふふ、宜しい。」


や、やめて!


ほ、微笑まないで!!


ほ、惚れちまうでしょ!!!


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る