酒言酒語
九龍砦と城塞事情
酒言酒語1
日暮れの九龍城砦、【東風】内。
「多過ぎじゃない?」
しゃがみ込んで床に袋を広げる
「康楽街ん所の店が立ち退きで閉店してよ。店長、香港でカミさんとちっせぇ
「
「出せる
ふぅんと頷き
「どれがオススメ?」
「んー、
「桂花陳酒。甘いの好きだろ」
「ストレートは駄目よ
言いながら
「ねー俺のは!?」
「んだよ、お子ちゃま。
「ええよ…ちょっとなら…」
「これバーに置こうか迷ってんだけど、その前に感想きかせろよ」
「わーい!!」
瓶を抱きかかえクルクル回る
「俺はどれ開けていい?」
「知るか、何でも飲めんだろ。適当にやれ」
「急に
手を伸ばす
「それ高いじゃん!もうちょっと大切に開けない!?」
「え、だって渡されたから」
「うるせぇ眼鏡だな、貧乏性か。お前もとっとと飲め」
「香港で店やるってなると許可いるでしょ?よくID取れたね?」
「上手くやったんだろ。カードだけなら
「持っ…てるけど…」
指をさす
「偽造?」
「たりめーだろ、
言いながら
香港のIDカードは高値で売れる、それを取り扱うのを
「連合道の店のオッサンも
「行ってる、黃大仙の市場で売ってる。許可ねぇから5回パクられたけど」
パクられる度に罰金上がるんだよなと笑う
「連合道、停電してたでしょ。直ったの?」
「あそこはインフラくそだからな。つうか皿から取れよ
「やたら建物ボロいやんな、何でなん?」
「火災。
「火事?なっとったっけ?」
「あの辺1回全部燃えちまっただろ、そっからちゃんと補修してねんだわ。あん時ゃまだ
そのとき、空のボトルがテーブルにドンッとのせられ皆の視線の
「…
「うん、美味しかった。甘、くっ、て」
慌てて
「なんで
「えー?美味しかっ…たらら…」
回らない
嫌な展開だな、と
もう飲んだのかなどと言いはしたが
「連合道って今どこが管理してる?」
「城塞福利やないですか、水道管のメンテとかやっとるし」
「もともと違ったけどな。城塞福利が覗きに来たんだよ、真面目だから。衛生環境よろしくねぇつって」
「ガサ入れやな」
「しょうがないね、あそこは
九龍城内での水問題は深刻だ。飲用に耐えうる井戸が無い地域もあり、そういった汚染の激しい場所ではもはや地下水は生活用水としても怪しい。住民達は外部から運ばれてきた水を買ったり近隣の町から排水管をツギハギして水源確保している。
「あれ、でもこの前水止まってなかった?」
「元栓閉めてんだわ。で、ポンプ壊れたつって金集めんの。管理人がギャンブル中毒だからな、
水道のビジネスはマフィアの重要な資金源の一部。上水料金の値上げ騒動で住人とマフィアが衝突した折、リーダーはこう宣言した────‘値上げに反対するヤツがいたら、公衆の面前で首を斬り落としてやる’。
飲んで喋って1時間、2時間。酔いが回るにつれ会話は更に物騒に。
「九龍灣から中流階級まで入り込んできてたブローカーどうなったんだよ」
「殺し…死んだ」
「
「
「まぁ助かったわ。密入国の奴らダルかったからな」
「ほんと?良かった、
「お巡りさぁんコイツですぅ」
「光明街のチンピラは?」
「それは
「え?あんな目立つ所で?死体どうしたの」
「殺したの前提やないすか」
「全部売った」
「殺したんか」
「あ、
言い終わる前に視界は反転し、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます