銃声と断崖絶壁
和気藹々8
裏も表も、景気のいい話に食い付くのは人の
どうやらまたひとつ、裏社会で景気のいい話があるらしい。
「
昼下りの
今回
‘そこそこ大きいグループ’。ここが重要。
「いつ狙ってくるかとかわかるの?」
「うーん、正確にはちとわからんけど…時間帯は十中八九
唸る
「んな軽い返事ぃしよって…危ないんやぞ?ホンマに…」
「大丈夫だよ、みんながついててくれるじゃん。ねぇ
「ま、ええわ…したら早いに越したことないわな。他ん奴らもほっとかんやろし、
「ラジャ!任せた
「お願いします」
「ひまっはらほへにほほひえへ」
「
「よし、じゃあ行きましゅよ!!」
急に後ろから参加してきた
おう、うん、はい、いぇーいと全く揃わない掛け声と共に作戦はスタートした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
とある日の夕方。
「お疲れ様でした!」
可愛らしい声が聞こえ、昼の営業を終了した従業員がバラバラとバーから出てくる。太陽が傾き夜が近づく城塞内、
寄り添って薄暗い道を進む金髪の少女と黒髪の少女。そしてその2人を追い掛ける黒い影───それを目にとめると、少女達は慌てて走り出した。
狭い道をちょこまかと逃げるも、追手との距離はなかなか離れず。九龍城砦の端まで行くと少女の1人は西頭村のほうへ、もう1人は九龍灣を見下ろせる岬のほうへ駆けていく。
「どっちの女だ!?」
「黒髪のほうだよ!」
男達が声を上げた。二手に分かれたうち、岬へ向かった黒髪…
物陰に身を潜めて動向を確認した金髪の少女は、こっそりとどこかへ連絡を入れた。
「行った行った、そっち。ん!よろしく!」
電話口の相手は了解と端的に応える。
空が曇り、夜霧が九龍城を包んだ。
辿り着いた、海を見下ろす岬で
ジリジリ
─────予定通り。
「来ないで!!」
小さな両手でしっかりとグリップを握り、瞳を閉じて、フゥと息を吐く。
大丈夫。練習もした。私にはみんなもついてる、怖くない。そう、大丈夫、大丈夫───やってみせる。
「【紫竹】の娘だからこうして狙ってくるんでしょう?私が居る限り終わらない…もう、疲れちゃった…」
薄く瞼を開き呟く。拳銃を構えるその手は震えている。緊張と動悸。でも上手く言えてる────大丈夫、大丈夫。
「こんなことがずっと続くくらいなら、私───…」
スウッと銃口を自身の胸元に向け、引き金をひいた。
止める暇も無く、乾いた音が響き血飛沫が上がった。
花柄のワンピースが真っ赤に染まる。口から血を溢れ出させながら
この高さでは恐らく助からない。いや、それ以前に銃創も…地面に滴る赤黒い液体。
狙っていた標的が目の前で死んでしまった、これでは身代金やパイプどころではなく、それどころか余計な追求をされかねない。男達は顔を見合わせ、すぐに踵を返して蜘蛛の子を散らすようにその場から遠ざかって行く。
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