和気藹々
好日と家無き子
和気藹々1
ここのところ、スラム街では子供が増えている。
出生率が上がった訳ではない。単純に数が増えている。といっても
しかしスラムや貧困街はストリートチルドレンだらけなので、知らない人間が増えようが減ろうがあまり気に留める住人はこの魔窟にはいない。自分の身に災いが降りかからなければ
同じ、子供同士以外は。
夕暮れ時、
今日の仕事は予定より時間がかかった。情報収集に手間取ったのだ。個人的にスラム街の子供の増減が気になっていたから深掘りしたのもある…
────‘
スラムで子供が増えているのは、口減らしのために外から九龍城砦へ棄てにくる奴らがいるからだ。主に小金が欲しい場合だが、人身売買はもちろん違法なので、マフィアは客に幾ばくかの銭を
1回九龍を挟む事で現場を直接押さえられないようにしている。金は貸しただけ、子供は迷子になっただけ、砦内にガサは入らない。
回りくどい方法を取らざるを得なくなったのは、少し前から中国当局が人身売買の取り締まりに力を入れだした為。
とはいえ警察も本腰を入れてはおらず、
この手口も一過性のブーム、たまにこうした新手のやり方がにわかに流行る。流行りはそのうちに廃れるので、こういう場合は傍観者を決め込むに限る。特に首を突っ込む理由も無い。
ま、どこん奴らかは知らんが上手いことやっとるよな。関わらんとこ。過ぎ去るのを静かに待つんが賢いねん。思いながら
「ただいまー…ん?」
キッチンのテーブルには、
ハムハムと菓子を頬張りながらおかえりと言う
「友達なん?」
それを聞いた少女は小さく頭を下げ、
「うん!今日から泊めて!」
今日から。…
から、というなら明日以降もということだ。何日泊まるんだ?親は了解済みなのか?と、一瞬、
───これはまさか、家が無いのでは。
「良ぉない事情あるんとちゃうやろな」
笑顔で固まる
「えっとぉ…聞いてくれる?」
えへへと顔色をうかがうような
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