碧海と‘友達’
青松落色12
あの日以降、九龍の失踪事件は完全に終息した。
【天狼】は犯人グループを全て狩り尽くし、
死体はいつものごとく闇から闇へと葬られ、朝には港は何事も無かったかのように綺麗になり裏社会の緊張は夜露とともに消えた。
今まで
かといって犯罪都市であることにはなんの変わりもなく、ただ通常運転になったというだけの話だが。
木陰のベンチに腰を下ろしていると、港に移動式の人気のアイス屋が来ると聞いてついてきた
「え、全種類
「すぐ食べるから平気。1個は
隣に座りむしゃむしゃと食べ始める
あの夜とはうってかわって、青碧の水面は太陽光を反射させキラキラと眩しく輝いている。
埠頭をジッと見つめる
「ちょお…考えててん…」
発言、行動、その他諸々。
もっと上手いこと出来たんじゃないか?やりようがあったんじゃないか?
そんな考えが頭を巡ると言って
「俺は上手く出来ないよ。俺がやってても、変わらなかったと思う」
‘俺は’というあたり、
実際、屋上で
波止場で海に身を投げた
結局、自分の力不足なのだ。
そういや、
「俺、どないしたら良かったんかな。どないしたらええんやろ」
「んー…どうしたら良かったかっていうのはわかんないけど…」
そうそうに1つ食べ終わり、2つ目のアイスを口に運びつつ
「
「!──…」
友達だから、助けたかった。
友達だから、手を離した。
確かに逆の立場なら、きっと自分も同じことをしただろうと
海に落ちる寸前、
‘ありがと’。
「…せやな」
だけど、もし次があれば───今度こそは手を取りたい。
その時の為に力をつけるしかない。自分に足りないものを埋めて、成長して、もう二度と指の間をすり抜けさせないように。
「俺、もっと頑張るわ」
「うん」
穏やかな風が吹いてさざ波が揺れる。九龍の海は何も語らず、ただ静かに、全てを包み込んでいた。
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