友情と黙契
青松落色11
銃声の方向、九龍灣の埠頭で何者かが争っている。
人数にして20人程だろうか。物陰から様子を伺うと、そのすぐ横に小型の貨物船が停泊しているのも見えた。
「
「ん…船もそうだし、誘拐グループと【天狼】だろうね」
香港から来たという不審な船舶と、撃ち合いをしている人間達。もはや疑いようは無かった。
やはりサングラスの男達は失踪事件の犯人で、
違っていて欲しいと願ってはいたが想定内のことであり、動揺するより早く
この中にいるのか?それともまだ九龍の街のどこかか?この期に及んで甘いかも知れないが、話したいことがあるんだ。
瞬間、その視点が急に地面に切り替わった。
同時に壁に着弾する弾丸。何者かの襲撃に気付いた
「あれ?今の奴、富裕層地域で見た奴かな」
「え?」
「なぁ、ちゃうねん!俺
隠れた人影は答えない。
「
若干の間があり、壁の裏から声が聞こえた。
「お前…情報屋の
「え、なんで知ってん」
「
男は舌打ちをし、
頭から血が流れている。【天狼】のメンバーか他のグループかわからないが、やってきた誰かに撃たれたようだ。
「
うながされるまま、
「
埠頭の先、逃げ場を失った
「…何してんのぉ?
幸いこっちへ向かってくる人物はいない。船舶付近での戦闘は激しく、みなそちらへ集中しているようだった。
走ったせいで乱れた呼吸を整えつつ
「ケガしたんか?
「まだ友達面してんの?いい加減に──」
「友達やんか」
「何で
あの時、友達だなんて思ってないと吐き捨てた
「俺と
「もぉしつこいって。都合いい解釈ばっかりしないでよ、関わんなっていったでしょ」
「関わるよ。助けたいねん。なぁ
食い下がる
「ムカつくなぁ…わかったような顔して…」
「
「俺は!!」
「俺は、生まれた時からずっと泥水
そう
‘わかんないでしょ、
あの時そう言われて
自分は運が良かったんだ。最初の境遇こそ酷かったが、それでも血の繋がりがある弟が残った。助けてくれる人物にも出会った。信頼出来る仲間も居る。
けれど、もしも
紙一重だったんだ、俺たちは。なのに幸運を掴んだ側の人間から‘助けたい’だなんてのうのうと抜かされれば腹も立つだろう。
「…やな。やけど」
「
だからこそ助けたいんだ。誰も伸ばさなかった手を伸ばしたい。
自分が救えるかもだなんて、自惚れだとはわかっている。それでも見過ごすことは出来なかった。
友達だと思ったから。
フッといつものように微笑み、
「っ、
伸ばした手は指先をかすめ、水音が上がり、
足元には血溜まりが広がっていた。
どうせ死ぬなら、助けさせたとて
万に一つ助かったとしても、これだけの混乱を引き起こしたグループの人間を
そうならない為の選択だった。
友達だと思ったから。
「
血溜まりにうずくまる
「行こう。【天狼】だけじゃなくて、他も集まってくるかも知れない。もうここは離れたほうがいい」
波止場ではまだ銃撃戦が続いていたが、対戦相手が【天狼】では
やるせない気持ちをどうにか胸の中に押し留めて、闇に紛れ港をあとにする。堪えきれない涙が
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