タマゴと既視感
青松落色4
「すまん、
「おー。俺も今来たとこだよぉ」
走り寄る
「
「全然。タバコ吸ってたしぃ」
「しかもまたケガだらけやん。どないしてん」
「コケた。あはは」
「あははちゃうやろ…気ぃつけやホンマ…」
貧困街、マンションの屋上、ボロボロのベンチ。
腰掛けている少年───
「どぉ?仕事」
「
いくばくか神妙な顔付きで
頻発する子供の失踪事件の被害が、スラムから貧困街にまで拡がってきた。
おかげで九龍の裏社会の空気がピリピリしており、情報屋としてある程度の内容を把握しておきたい
年の頃も
「お疲れ様だねぇ。いい情報聞けたぁ?」
「あんまし。みんなよう知らんみたいやな」
「あらら、じゃあ花街に期待かぁ」
「花街はなぁ…関係あらへん感じやけど」
子供が消えているのはスラムと貧困街で、花街から居なくなったという話は今の所ない。
だがこの件に限らず、些細な事でも、情報はあればあるだけ良い。
ついでに
「ま、飯行こか。
「美味しかったらなんでもいー。
「オススメ言われると困るな…ならまぁ、花街の方でもええ?後で行くから近いと助かるわ」
「おー、いいねいいね」
軽いノリで賛同する
路地をいくつか抜けてしばらく歩くと目当ての
店内に入り、席でメニューに視線を落とす。
「俺は…
「そぉなんだ、じゃ
「いや両方タマゴとパンやん」
「あっほんとだ」
やばー気付かなかったー!とニコニコする
こいつ…あんま九龍に似合わへんな。
この街の住民たちはもっと警戒心が強いというか、こんなにフワフワしていないというか、とにかく。
まだ九龍に来て間もないからだろうか?香港で仕事が無くなって九龍に来たと言ってはいたが、詳しく聞いた訳では無かった。
「すいませぇん、
「タマゴ増えとるやないか」
颯爽と店員に伝える
「デザートからくるんか」
「でもこれと
「
「まーいいじゃん、
「ん…?ほんまや、うまいやん」
これは確かに美味しい。中にカスタードクリームが入りシロップもたっぷりかかっているカロリー爆弾のような
「今度
「
「あ、弟。子供やから甘いの好きやねんな」
「子供って、そんなに
「いや5コくらいやけど…身体が
「ふぅん…」
何か考える様子の
「どしたん?」
「や、俺は家族居ないから。いいねぇ兄弟」
「あー…まぁ、大変なことも多いけどな。俺らも、昔っから親
「そっかぁ」
話しているうちに料理が次々とテーブルに並ぶ。期せずして、
「おいしそうだねぇ。ちょっともらっていい?」
「…いくらでも食うたらええ…」
なんだ
テーブルの上を行き交う様々な形に姿を変えた卵。万能食材やんか…などと1人で考えていると、万能食材だねぇ?という
ワイワイしながら美味しく食事を終えて、満足して店を出る。
と、通りの少し向こう、見知った着物姿の男が
「
「どしたん、買い物?」
「お前こそどうしたんだよ」
「え?【宵城】行こ
「そうじゃねぇよ」
あっ、俺がいつものメンバー以外と居るのが珍しいからか。そう
「ご飯も食べたし俺そろそろ帰るよぉ。ありがと。またねぇ
言うなり、手を振って人混みに消えてしまった
え?随分あっさり帰るな。いや、でも、別にそんなもんか?
「お前
「なんやねん、そら
「たまには?初めての間違いじゃねーの」
「うっさいなぁもう。初めてやないやろ…多分…」
だが、言われるとそうかも知れないと
いつもの
「
「貧民街やけど、最近ヨソから九龍に来た
「へー…」
初対面では無いような気がしたのだ。あの男…見たことがある気がする。それこそ最近、どこかで。
「
「あ、おう。じゃこれ持って。重いんだわ」
「小間使いやん」
まぁいいか。記憶違いだろ。
そう考え直すと、
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