第27話 読めない展開
「ああごめん。寝ていたのか」
気がついて起きたが、おかしな雰囲気。
花蓮が抱きついている。
「何をしているの?」
「動けなくって」
「動いて良いよ」
「はっ動ける」
「離れて」
「やだ」
うーん。杏果ちゃんも、なぜかアイスを持って、たたずんでいるし。
「杏果ちゃん。ごめんね。おねえさん。ちょっと甘えんぼさんになったみたいで」
「いえ。こちらこそ、すみません。あっアイス食べます?」
「いいの?」
「お金は、お姉ちゃんが出したので、良いですよ」
「その、カキ氷のやつをもらおうかな」
変な状態だが、普通に会話が進む。
「それ、重くないですか?」
「うん? まあ良いよ」
「此処の問題って、どうやれば」
「それはね」
そう言いながら、何事もなく一時間半も過ぎた頃。
突然、花蓮がぎゅっと抱きつくと、ふるふるしてがっくりと力が抜けた。
杏果ちゃんは、気がついていないようだが、どうする?
「杏果ちゃん。お姉ちゃん寝ちゃったようだから、ちょっと寝かせてくるよ」
そう言って、抱えたまま立ち上がり。移動をする。
花蓮の部屋へ行き、ベッドに落とす。
すると、花蓮がうっすらと目を開け。
「すっごい良かった」
「良かったじゃない。杏果ちゃんの前で何やってんの?」
「あーうん。教育の一環。大丈夫」
「ほんとかよ」
「あのねえ。派手に動けないから、ずっと繋がっていると温かい何かがよく分かるの。ずっとゾクゾクが止まらない」
「そうか、俺は下へ戻るから」
「うん。しばらくしたら降りる」
「大丈夫でした?」
「うん? うん。寝かせた」
「いいなあ」
「どうしたの?」
「何でも無いです」
「じゃあ。さっきの続きだ」
「はい」
杏果ちゃんも、総が思うほど子供ではなく、色々なことは知っている。
無論。花蓮が何をしていたかも。
降りてきてからも、総の一部に目がいっていた。
さてどうなることか。
その頃、世界の片隅。
「なに? 今度も全員帰ってこない? 今回のオペレーションでは200人も投入をしたはずだ」
「ですが、完全にシグナルはロストしています。施設は、静かなまま」
「一体何が起こっているんだ?」
「それについては、多少情報があります。カメレオン部隊から突入前に情報が上がってきています」
冊子が渡される。
それにざっと目を通すと、怪訝そうな顔になる。
「儀式?」
「今現状、誰かに攻撃をして、相手が死ぬと。力を得ることができると分かっています。スタッフ全員が力を得るために、軽い攻撃を与え。その後で対象を始末する。そのための儀式でしょう」
「では今回、タダの失敗ではなく。奴らを強化したということだな」
「残念ながら」
しばらく指令は考え込むと、答えを出す。
「トップ10を使え。同じ系統だが、癒やしができるし人数もこちらが多いはず」
「エンジェルスですか? 奴ら3人どこにいるのか不明です」
「どうせ。どこかのセーフハウスで、女と遊んでいるはずだ。今夜0時までに来なければ、逃亡と見なすと通知しろ」
「はっ」
「光のエンジェルスか。欲望に従順なだけだがな」
連絡し、作戦内容を伝えると、意外と簡単に集まった。
光が、3人。獣系が7人。
トップ10には虫系はいない。
光の3人は、今回の作戦で、相手組織にいる連中を、一気に駒として貰ってやろうと考えた。その中には、いい女もいるだろう。
欲望のままに。
そして、作戦も何もなく。
位置の分かっている、地下神殿に向かい突っ走る。
夜の闇の中に、体に障壁代わりに光を纏い突っ走る。
当然。毒や多少の攻撃は、すべて無効化する。
出てきた敵など、一気に光で包み込むと食っていく。
女性なら、光を当て仲間にするべく浸食を試みる。
だが、相手の光が強く早々に断念。
「やばいな、相手の方が格上だ」
「今回の作戦前に、相手に生け贄を与えて、強化してあげたらしいからな」
「何をやっているんだ。これだから、旧人類は駄目なんだよ」
そう。彼らの中では、力を得ていない者達は旧人類。かといって、力を得ればその種類による序列が明確になる。彼らは、光を得た物が最強であり、人類をこれから統治するのにふさわしいと考えている。
逆らう物は食らい。使えそうな奴は、浸食し力を与えると、従順な僕となる。
チームとしての呼称。エンジェルス。彼らは自らを、神の使いだと考えている。
そう言いながらも神殿に突入。
祭壇には、まだ前回の作戦参加兵達が立っている。
突入し、周りの信徒達を蹴散らしながら、その中で光の能力者を見つける。
一段高いところで、絶世の美女達を侍らし、光景をニヤニヤしながら見ている。
軽く手を振ると、信徒達が儀式をやめ、一斉に襲って来始める。
その数、千名近い。
「シット。かまわん。食らおう」
そう言って、3人共が光り輝き始める。
その光に、かぶせるように光が降ってくる。
神殿内は、その光に包まれ、装飾も柱も何もかもが浸食され食われていく。
やがて、遅れてきた7人の獣人系能力者は、食い尽くされ、何もなくなった神殿内を見ることになった。
天井も、円形に切り取られ、夜空が見えている。
そこに、風が吹き込み。切り取られた室内で反響し。不気味な音を奏でているのみ。
まさに、限界を超えた、能力の応酬の果て。そしてそこには、誰も居なくなっていた。
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