第16話 ほのぼのデート

 ボウリングを終え。

 少し足早に、ゲームセンターへやって来た。


 これは、ボウリング中に花蓮の携帯カバーを見たため。

 いや見せられたため。

 ツーショットな、シール。


「ぐぬぬ。おのれ。何処までも」

 地の底から響くような声を、くみが出していた。


 強引に、引っ張って行かれ、5枚中3枚は、後頭部しか写っていない。

 説明は、不要だろう。


 何とか写真は撮り、脇にあったビリヤードをする事にした。

「大昔。凄い人気があったんだって」

 そんな事を、言いながら。キューを振り回す千夏ちゃん。


「危ないから、振り回さないで」

 目の前に来たキューを、掴んで止める。


「ごめんなさい」


 さてやるかとなったが、ルールも何も分からない。

 説明を読むと、ナインゲームが簡単そうなのでやってみる。


 手玉を、キューで突いて、1番から順に落としていくが、9を落とせば勝ち。

 無論途中で、1番に当たった玉が跳ね返り。9番を落とし。手玉が落ちなければ勝ちになる。


 ラックにダイヤモンド型に玉を入れる。9番は真ん中。1番は手前。

 ルールとしては、1番から、反時計方法に2番3番頂点に置き隙間を5と6。7と8で埋める方法とか色々ある。

 1番を、フットスポットのマークに合わせて静かに枠を外す。


 本当は、バンキングという。ヘッドラインから玉をついてクッションで跳ね返り手前のクッションとどちらが近い距離かを競う方法があるが、下手なのでバンキングで的玉にあてそうだ。

 素直にじゃんけんをする。


 くみが勝ったようだ。

 ヘッドラインから、ブレイクを打つが、テーブルの脇にうってある2番目のポイントマーク。ヘッドスポットを結んだラインから、わずかに出ている。

「くみ。はみ出している」

 そう言うと、お尻や、胸辺りを気にする。


「違う。ヘッドラインから手玉が出てる」

「あっ。ああ。そっち」

 位置を修正し、ブレイクできなかった。

 キューは手玉の上を見事にかする。


 くみのファールにより、選手交代。

 花蓮がブレイクをする。

 凄いスピードでブレイクされた玉は、いくつかポケットする。

 花蓮がむふーという感じで、くみを見て。

 次を突こうとして、手玉。つまり白玉がない事に気がつく。

 ゴトンと音がして、白玉がリターン部分へ落ちてくる。

 

 無言で、落ちたボールを、フットスポット付近へ並べる。


 手玉フリーで、くみは1番を落としに行く。


 なかなか緊迫した試合をしているが。


 こちらは俺に叱られ、ズボンを穿いているが、千夏ちゃんは、膝丈のフレアスカート。明智君の視線がやばい。


 まあ直接的に覗かなければ大丈夫だろう。

 そう思った矢先。

 明智君が薄くなる。


 あー力。それも質の悪いものを。

 カメレオン的な、保護色かな?

 どういう原理か、服まで色が変わるという事は、周辺に霧でも纏っているのか?


 思わず近付き小突く。

「馬鹿野郎、こんな所で逆に目立つ。力を使うな」

「そう言うと、かなり驚いていた」

「見えるのか?」

「ああ俺には見えるな」

 そう言うと、がっかりしていた。


 その後、あぶれた俺は、ゲーセンでぬいぐるみを一つ取り。抱えて戻る。

「勝ちました」

 結局、くみが勝ったようだ。

 丁度良いから、ばふっとぬいぐるみを押しつける。

「勝利者へのプレゼント」

 嬉しそうではあるが、これじゃない感がくみから漂う。


 そこから、休憩がてら、フードコートへ向かう。

 根回しじゃんけんで、一人明智を負けさせ、買いに行かせたすきに、千夏ちゃんに二人が、状態を問い詰める。

「まあ。なんと言っても今日会ったばかりだし、保留です。絶対いやというタイプではないです」

 そんな答えを貰った。


 やはり禁則事項の厳守が効いたのか。

 あいつがぼろさえ出さなければ、大丈夫そうだ。



 今日。集合した時からおかしかった二人。

 ボウリングで、ピンのところまで投げるって何者よ。

 それが、この3人の中では普通なの?


 ボウラーズベンチでも、隙あらばいちゃついているし。

 くみ先輩はまだしも、花蓮先輩があんな。

 デレデレな姿。そんなに良いのかしら?

 うーん。斉藤さんも、この明智さんもそれほどモテる感じじゃないけれど。

 女には。はっ。未経験者には分からない。何かがあるとしたら。


 ふむ。明智さんで、少し経験を積んでみるのも良いかもしれない。

 下手にかっこいい人で、こっちが追いかけるより。追いかけて貰い。貢いで貰う? それが、いい女への第一歩? 一応先輩なんだから、あんまり変な人なんか紹介をしないよね。


 まさか、花蓮が明智から逃げたいばかりに、紹介したとか。思い至らない千夏であった。

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