第83話

「やっぱ目立ちますね、この服装」


「金ぴかですからね〜。そんな眩しいのが歩いてたら誰だろうと見ちゃいますよ〜」


 本当にその通りである。逆にこの服装の奴が歩いてて、視線を一切向けずに耐えれるのなら、その人の精神力はきっとカンストしてる。コスプレという文化がある俺たちの世界ですら、通常時にこんな格好をしてたら注目を集めるのだ。コスプレ文化が存在しないこの世界で注目を浴びないわけが無い。


 ……てか、そもそも戦隊ヒーローなんてものすら存在しないから、他の人から見れば俺は唯の変態なのでは無いだろうか。


 ……。……深く考えないようにしよう。


「……シスターはこの格好どう思います?」


「面白______独創的だと思います〜」


「おっけー、無理だ。……改めて恥ずかしくなってきた」


 アルマさんのことだから、しれっと明日くるいに覆面を完成させる可能性があるのが救いではあるが、パレードが事態は今日だけらしいので、必然的にパレードにはこの格好で出ることになる。……煉司の横には確定で会長もいるだろうし、素肌を見せようものなら速攻でバレるだろう。


「______と言うか、その上から服を着てフード被ったら良いんじゃないですか〜?」


「……確かに」


 怪しさが倍増すると言う欠点はあるものの、今ほど視線を集めることは無いだろう。フードを被れば顔だけしか見えないし、二度見位で済むハズだ。因みに今はガン見されてるよ、あらゆる方向から。


「……じゃあ、一旦帰りますか?それなら今ほど視線を集める事も」


「いえいえ、折角なので服屋さんにでも行きましょう〜。日頃のお礼に服くらいなら奢ってあげますよ〜」


「いや、それは……」


 日頃のお礼とか言われても、俺は特にシスターに特別何かしてあげたことなんて殆ど無い。確かにちょっと位は手助けしてるかもしれないが、結構な頻度で命助けて貰ってるし、差し引きゼロどころかマイナスになって、俺の方が受けた恩は大きい。


「マワル君は私とお買い物するの嫌ですか?」


 そう言って少し悲しそうにこちらを見てくるシスター。……うん、最近分かるようになってきたけど、今のシスターは絶対演技してる。この悲しそうな瞳は確実に演技だ。


「全然嫌じゃないです」


「じゃあ、けってーい〜!」


 ……演技だって分かっているからと言って、コロッと行かない訳では無いのだよ。戦闘シーンがバイオレンス過ぎて忘れててるけど、シスターの見た目は俺の中で割とどストライクな所あるからな。


 あと、シスターが俺の腕を掴んでるせいで、シスターの立派な柔らかいものが若干腕に当たっている。それだけでもう、俺はシスターの表情が演技だとかどうでも良くなっていた。


 ______あぁ、神よ感謝します。


「……?どうしたんですか〜?」


 どうやら、シスターは俺が上機嫌になった理由が分からないようだ。普段から此方をからかったり色々と手玉に取ってくるシスターではあるものの、こういう所では鈍感なのにちょっとギャップを感じる。


「……なんでもないです。あんまり帰りが遅くなるとパレードに間に合わないかもしれませんし、早く行きましょう」


 先程までの憂鬱な気持ちとは一転して幸せな気持ちに包まれた俺は、平然とした様子を保ちながらもしばらくその感触を楽しむことにした。おっぱい一つで気分が上がるとか、自分のチョロさが心配になってくる。……俺、ハニートラップとか跳ね除けられる鈍感系主人公を心から尊敬するよ。


 上がりそうになる口角を抑えながら歩いていると、市場みたなところにたどり着く。何に使うか分からない変な形をした針みたいに細い道具やら、中々に個性的な服とかアクセサリーも売っている。流石にドクロは無いけど。


「おぉ〜、流石王都ですね〜。出店してるお店とかは変わっちゃってますけど、この賑わいは変わりませんね〜」


「そう言えばシスターって、王都で暮らしてたんでしたっけ。よくここら辺に買い物に来てたりしてたんですか?」


「えぇ〜。お休みの日は先輩に無理やり引っ張り回されて連れてこられました〜」


 ……シスターを無理やり連れ回すとか、中々に強メンタルをしている。余程のことが起きない限り優しいシスターだが、それ故に怒らせたらと思うとゾッとする。いや、シスターの先輩だしシスターと同じくらい強い可能性もあるのか。


「因みに今回孤児院の事を頼んだのはその人ですよ〜」


「へー……帰ったら紹介して下さい。シスターを振り回す方法とか聞きたいんで」


「え〜、意外とマワル君は私の事振り回してますよ〜?」


「そうですかね?」


 ……言われてみれば、俺も大概、人のことを振り回している気がしないでもない。まぁ、シスターが俺を振り回してる数の方が確実に多いけどな。


「まぁ、紹介はしますよ〜。……後々、依頼をこなす際に面識はあった方が良いでしょうし〜」


「?」


 何故、シスターの先輩と俺が依頼をこなすのかが分からなかったので、首を傾げながら少しだけシスターではなくシスターの先輩と依頼に行く理由を考えてみる。


 ……うん、分からん。


「後々も何もシスターとハル以外とパーティーを組む予定なんで無いですけど」


「そうですね〜。まぁ、念の為と言う奴です〜」


 あっ、シスターが病気になったり怪我したら力を借りる必要があるかもしれない。確かに念の為に面識を持っておくのは悪いことでは無いな。


 だが、シスターの言い方は何か別の意図がある様に聞こえ_____。


「______あっ、ほら〜!あっちに面白そうな魔道具とかありますよ〜!」


 急に力強くシスターに手を引かれた俺は、それ以上深く考えることもなく、しばらくの間シスターとの買い物を楽しんだのだった。










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