第162話 サプライズ〜その後

 ◇◇◇◇◇


 龍太郎たちが帰国後、世界に大ニュースが流れた。


 アメリカ帝国冒険者協会、上級幹部ソフィア・ミラー、日本に突然の帰化申請!


 中華帝国との同盟締結といい、権威を傷つけられたアメリカが日本に対し報復措置を加えるのではないか?との見方がされたが、そこはうまく中華帝国の協力を得て牽制している。


 ソフィアは、手続きが完了するまでは、別に手配されたクランハウスで待機していた。

 待機と言っても、自由に東京の街に繰り出している。その間、東京はソフィアが行く所々でパニックになっていた。

 当のソフィアは、全く気にする様子もないが大層迷惑な話である。


 日本到着と同時に宗方首相と面談し、了承を得た模様。宗方としても、世界で顔の広いソフィアの日本帰化は嬉しい誤算だったようだ。

 即刻、手続きを進めるよう指示を出した。


 一方、龍太郎とカレンは、帰国後、協会の医務室には行かず、龍太郎は自宅療養中。

 協会の医務室よりも自己治癒の方が圧倒的に治癒力が早い。今回の重症度からは思ったより回復は早く、帰宅する頃には自分で動けるようにはなっていた。

 しかし、運動をする程度に回復するには、それなりに時間がかかりそうだ。


 そして、帰国した翌日の5月5日に誕生日を迎え21歳となったカレンは、クランのメンバーに囲まれてお祝いをされていた。

 出席者は、カレンの他、龍太郎、華那、玲奈、詩音、亜実花、英莉花、世莉花のいつものメンバー8人。

 実は、カレンも龍太郎と同様にぼっちじゃない誕生日会というものは初めてだったので、覚醒4人娘の企画でサプライズの瞬間はとても驚いていた。


 龍太郎も事前にサプライズ企画の話を聞いていたので、詩音に買っておいてもらっていたプレゼントをカレンに手渡した。

 こういう事をしたことがないので、ものすごく照れくさかったけど、カレンも喜んでくれたので渡せて良かった。


 プレゼントしたものは、猫型ペンダント。


 ケチった訳ではないが、ブランド物の割にはそんなに高級なものではない。

 まあ、一年前ならとても買えない代物だが、変に高級なものを準備するのは、勘違いしていると思われるのが嫌だったのでちょっと違う気がしたのだ。なので、ほどほどのものに。


 一方、カレンにしてみれば、龍太郎からの誕生日プレゼントは、期待していなかっただけに、ものすごくビックリしたが、ものすごく嬉しかった。


 龍太郎が初めてくれたプレゼント。

 しかも、可愛い猫型ペンダント。

 嬉しくない訳がない。一生の宝物にしよう。

 でも、誕生日以上の特別な意味はなさそうなので、ちょっと残念。

 というか、このままだと今後も何の進展もなさそうな感じがする……。

 

 案の定、何の進展もなかった……。


 どうするの?



 ◇◇◇◇◇



 それから、1ヶ月が経ちもう6月初旬。


 あれからすぐに龍太郎の傷も癒えて、ネオ・ダイアモンズのメンバーは、もっぱらレベルアップ修行に勤しんでいる。


 それと……その間にネオのメンバーがかなり増えていた。


 まずは、帰国後すぐにクランハウスに北斗がジェシカを連れてやって来た。

 この時、国士無双のメンバーは北斗、南斗、それにジェシカの3人。

 ジェシカもやっと活動を再開していたが、喜多川兄弟に付いていくことが出来ず、また喜多川兄弟もジェシカに合わせることで、レベルアップ修行があまり進まなくなっていた。

 そして、ジェシカは国士無双を抜けることを決意したらしいのだ。


 北斗は引き留めたが、ジェシカの決意は固くもう覆すことは出来ないでいた。

 ただし、その先も決まっておらず、今は単独でのゲート侵入は禁止されている。

 そこで、北斗は龍太郎にジェシカを預かって欲しいと龍太郎に相談に来たのだった。

 これは、ジェシカの希望でもあった。

 可能ならネオ・ダイアモンズに加入して活動は継続したいと。


 龍太郎も北斗のたっての頼みで、かつジェシカの希望もあって無下に断ることもできず、メンバーのみんなも断れる雰囲気ではなかったため、ジェシカの加入が認められた。


 そして、ジェシカの加入によって、こちらもこれ以上引き延ばすことも出来ず、同時に叶英莉花、叶世莉花のエロシス姉妹の加入が決定。


 その後、ソフィアの帰化申請が受諾され、名前を鏡ソフィアと改められた。

 そして、約束通りにネオクランへ加入。


 こうして、ネオ・ダイアモンズは総勢10名のクランとなった。


 と、これで終わりかと思いきや、ジェシカたちの新加入を聞きつけてか、協会の野神さんを通じてパラドールクランの月城姉妹も加入の相談に来た。

 あまりにも他のクランとの差に焦ったのもあるが、ネオクランメンバーの異常なレベルアップに興味を持ったようだった。

 仲間に入れて欲しいと懇願されたが、初対面ということもあり、まずは仮加入ということで、行動を共にしていた。


 月城姉妹の性格の良さからか、徐々にメンバーたちとも打ち解け、カレンから加入の許可を得て、正式にメンバーとなった。


 そしてメンバーが増えて、現在12名の大所帯となっている。

 しかも、龍太郎以外は全員女性という外から見るとものすごく羨ましい状態になっていた。


 極々普通の容姿の龍太郎に美人揃いの女性たち。国民からは羨望の眼差しで見られることになるのだが、相変わらずアンチが半分。ただし、あとの半分に対しては人気急上昇。

 龍太郎に対する世の中の見方が少し変わってきた。特にグローバル的には、実は人気が高い。


 世界情勢も怪しくなってきて、龍太郎たちも自分たちがなんとかしないといけないという気持ちになっている。


 特に龍太郎は、前回の魔人との戦いで、如何に自分がその域に達していないかということを思い知った。

 そして、世界を救うその鍵を握るのはなんとなく隣にいるカレンだと思っている。

 その時に自分がカレンをサポートしなければいけないと勝手に思っていた。


 12名体制になってまもなく、ネオ・ダイアモンズの代表が龍太郎からカレンに変更された。理由はあまりない。

 元々、ずっと龍太郎が思っていたことらしく、龍太郎が療養中にカレンを説得したらしい。他のメンバーは、特に異論なく交代した。


 そして、現在のネオメンバーの状況。


 代表 夢咲カレン レベル49

 天堂龍太郎 レベル58

 鏡ソフィア レベル41

 叶英莉花 レベル36

 叶世莉花 レベル35

 百枝華那 レベル27

 高梨玲奈 レベル26

 佐々島亜実花 レベル26

 玉置詩音 レベル25

 月城麗香 レベル23

 月城樹里 レベル20

 片桐ジェシカ レベル16

 

 全員のレベルが爆上がり中だが、異常な龍太郎は置いておくとして、カレンがそれ以上に異常な上がり方をしている。

 セラフィムの加護が要因だと思われるが、もうすぐファイブスターというところまで来ている。加護ってすごい。


 さらに、これにはもう一つの要因があり、龍太郎の提案でレベルアップ修行の再編が行われた結果だった。

 第一班が龍太郎とカレンの最強コンビ。

 第二班がソフィア、叶姉妹、覚醒4人組。

 第三班が龍次郎が月城姉妹とジェシカに毒耐性特訓。


 これは、魔人討伐に対する準備としての対応だった。やられたらやり返す。龍太郎とカレンは、魔人討伐を第一の目標にしていた。

 さらに、カレンの第六感がそう告げているらしいが、理由はわからない。



 ◇◇◇◇◇



 本日、東京渋谷の協会本部にて全クラン代表が集まっての緊急会議が行われていた。


 ネオ・ダイアモンズ代表 夢咲カレン

 レジェンズ代表 望月千代

 国士無双代表 喜多川北斗

 カーバンクル代表 百地景虎

 スカイピア代表 御剣京介

 水鏡白兎代表 城之内遥香


 今時点でクラン数は6つ、日本在籍エクスプローラ数は30名になっている。


 そして、ついに梅田ゲートの閉鎖が決まったことが全代表に報告された。

 これは、世界的に同様の傾向があった。

 セカンドインパクト以降、各地でダンジョンゲートの消滅が発生していた。

 梅田ゲートもその一つで、もうすぐ消滅することが研究所の調査で判明している。


 梅田管轄の2つのクラン、スカイピアと水鏡白兎はこれで渋谷管轄に変更。

 即時、渋谷A地区のクランハウス割り当てがあった。近々、引っ越しが予定されている。


 その後、日本で簡易ゲートの出現はなく、渋谷ゲートが唯一のダンジョンゲートとなっている。予想として渋谷ゲートは消滅する傾向は今のところないらしい。


 余談だが、費用は山ほどあるので、協会で保管していた装備を買い取って、クランメンバー全員の装備を一掃しようと紗英に相談したところ、無償で好きに選んでいいということだったので、遠慮なく全員の装備を一掃した。

 今思えば遅かったくらいだ。クランメンバーの安全は第一に考えないといけない。


 それと龍次郎が行っていた毒耐性特訓もなんとか完了したようだ。

 月城姉妹とジェシカは、かなり根性がある。

 ここから、クランメンバーの底上げを開始して行く予定。


 新生ネオ・ダイアモンズ!

 魔人討伐に向け、爆進中!


 ◇◇◇◇◇

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