第122話 セカンドインパクト4
◇◇◇◇◇
引き続き、世界緊急会議が継続中。
議案が可決されてハワードは満足な表情を浮かべる。大統領のトランパスも同様に笑みを浮かべた。アメリカファースト!
ハワード:『これで短期的ソリューションについての話は完了したわけだが、長期的に見るとこれ以上のエクスプローラの増加が見込めない現状から、このままではいずれこの世界はモンスターの支配が待っている事は容易に想像できるだろう。
では、それに対抗するためにはどうすれば良いのか?
それを考える必要がある。
だが、残念ながら現時点では有効な対策が見つかっていない。
ただし!我々に希望がないわけではない!
そこで、ここに一つの情報を開示しようと思う。これを見てくれ。』
モニターには、5色の大きな石が埋められた石板が映し出された。
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黒
白 黄 青
赤
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遂に王が世界に降り立った
五つの神級迷宮を踏破せよ
さすれば希望の門は開かれる
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Finally, the king has descended.
Conquer the five god-class labyrinths.
If you did it, the gate of hope will open.
ハワード:『これは、我が国アメリカの異世界内で昨年の9月11日に発見された石板の現物の写真だ。
未だに不明な点は多く、謎だらけだ。
王とは誰なのか?
希望の門とは?
ただし、五つの神級迷宮については他に情報がある。』
モニターの画像が切り替わった。
ハワード:『これが先程の石板の裏側だ。
ここに彫られた世界地図に5色の点がある。
5つの点の座標位置から、それぞれの都市が5つの国の第1ゲートであるがわかっておる。
そして、この5つのゲートはファーストインパクトにて最初に開いた5つのゲートだ。』
モニターに大きく、それぞれの都市名と門の呼称が表示される。
ハワード:『我々の中では、この神門を持つ5つの国、アメリカ、中国、日本、ドイツ、インドを五神国(EG5)と呼んでいるのだが、この呼称を今後は正式な名称として登録する。
そして、我々EG5は互いに協力し、世界の危機を救うために神級迷宮の踏破に尽力することを宣言する。
また、その他の各国もこの目的に対して協力を惜しまぬ様にお願いする。』
野神:「勝手に公表しましたね。
事前通達くらいして欲しいもんです。」
宗方:「ああ。でも、これで日本も正式に五神国ということだな。
まあ、これで動きやすくなったんじゃないか?」
野神:「ええ。無理はできませんけど、今はその希望しかないことは明白ですから、協力体制を取ることは賛成ですね。
こちらからも情報提供しますか?」
宗方:「そうだな。まあ、野神に任せる。」
野神:「そう言うと思った。」
紗英は、この総理大臣である宗方金太郎は工藤に似ていると思っている。
現に工藤とは馬が合うのか、仲が良い。
頭脳明晰で判断が早いので助かるのだが、猪突猛進型の楽天家である。
対応はフレンドリーで発言は分かりやすく、思想もブレないので国民からの支持は厚い。
宗方家は代々総理大臣を輩出している名家であり、若くして総理大臣になった人物である。
このあと、アメリカ大統領トランパスの閉会宣言にて世界緊急会議は終了。
そして、今回開示された情報は瞬く間にネットニュースで全世界に拡散された。
特に南極大陸での映像はショッキングに伝えられ、経験した人間は20年前の未曾有の大災害を覚えており、世界の危機に直面していることを痛感した。
日本でも、ファーストインパクト時の6つのゲートの映像、川崎ブレイクの映像と共にネットニュースで特番が組まれ、エセ研究家たちが今回の異変による影響を煽りに煽っていた。
また、同時に今回で48名になった現エクスプローラのリストも公開された事により選ばれしものとして英雄化されて、必然的に全員が渋谷、梅田のクランハウス敷地内に居を構えることとなる。
◇◇◇◇◇
世界緊急会議が終わると、WEAおよびEG5の代表のみでの緊急会議が継続していた。
EG5のみの会議は、参加国が絞られていることより、双方向のWEB会議に切り替わっている。
トランパス:『さて、EG5の今後についてだが、まず神級迷宮の踏破が喫緊のターゲットになる。
そこで、現在までに把握している情報について共有が必要だと思うのだが、何か掴んでいることがあれば、ぜひここで共有していただきたい。
では、初めに我が国から情報を。』
ハワード:『ご存知だと思うが、我々はすでに神級迷宮を発見し侵入に成功しているが、内部のモンスターは異次元の戦闘力を持っており、かなり苦戦している。
セカンドインパクトがなければ、全滅していた可能性も少なくない。
それほどまでに神級迷宮の踏破は難関を極めている。
よって、我々は方針を変更し、一定期間、エクスプローラの個体強度のレベルアップを優先する事にした。
我々アメリカには、ファイブスターのエクスプローラが1名所属しているが、少なくともこれ以上のレベルでないと神級迷宮内では太刀打ちできないだろう。
後ほど、迷宮の詳細情報については資料を送付しておく。そちらを確認してくれ。
また、特記事項としてモンスターとは別の魔人と言う存在を確認している。
我々を持ってしても詳細は不明だが、かなり危険な存在だと言える。
これに関しては、シックススター、もしくはセブンスターが必要になると思われる。』
他の国は未だに神級迷宮の発見すら出来ていない状況なので、何ら有効な情報は持ち合わせていないのが現状である。
ただし、エクスプローラの個体強度レベル的に現状では踏破不可能であることを認識した。
アメリカ以外では唯一ファイブスターのエクスプローラが所属する中国でさえ、1名しか存在しない。
ちなみに、ファイブスターとは個体強度レベルが50台の者をそう呼ぶ。
ハワード:『やはり、我が国以外はまだまだと言うことだな。』
なぜか、勝ち誇った言い回しをするハワードであった。
他の国も悔しいが、それが現実である。
野神:「少しいいですか?」
ハワード:『ジャパンのミスノガミか?
何だね?』
野神:「我々からも情報を提供しようと思いますが、よろしいですか?」
ハワード:『もちろんいいが、ジャパンはまだスリースターが最高だったな。
明らかにEG5の中では劣っている。
今回作成した国別ランキングでは10位。
もう少し頑張ってもらわないとな。』
実は今回、残存エクスプローラの人数と個体強度レベルが明確になったことより、WEAがその情報の組み合わせで勝手に国別ランキングを作成していた。
当然、結果はアメリカが1位。
各国に対してマウントを取りたいのだろう。
EG5だけで言うと、中国が2位、インドが3位、ドイツが6位で、日本は最下位。
野神:「はい、その劣っている日本からの情報なので、すでにアメリカはご存知かもしれないですが、一応伝えておきますね。
我々も魔人の存在は確認しています。
魔人には貴族魔人と平民魔人が存在し、貴族魔人がその神級迷宮の管理者だそうです。
神級迷宮は
魔人にも個体強度レベルがあり、平民のレベルは分かりませんが、貴族魔人はレベル90以上はあるそうです。
こちらで言うナインスターです。
また、日本にあるキャッスルは、イエローキャッスルで、他の4つのキャッスルも同様の色の呼び名で呼ばれていると言うことです。」
ハワード:『なぜ、そんな情報を!』
野神:「ご存知なかったのですか?
それは良かった。役に立てましたかね?」
紗英は嫌味たっぷりでそう答えた。
ハワード:『どうやってその情報を知った?』
野神:「たまたまですわ。」
ハワード:『そんな訳あるかぁ!?
ミセスモチヅキだな!』
野神:「いえ、それは今は必要ないかと。」
ハワード:『やはり、偽情報か!』
諸葛:『ミスターハワード。落ち着きなさい。
真偽はともかく、今は少しでも情報が必要です。判断はそれぞれの国がすれば良い。』
彼女は、
中国探検者協会CWA会長であり、WEA副議長である。
諸葛:『ミスノガミ。続けてちょうだい。』
紗英は、このあとも差し支えない程度の情報を開示した。全て龍太郎から得た情報である。
諸葛:『なるほどね。面白いわ。
この地球を救う手立てはやはり5つのキャッスルの踏破ってことですね。
ただし、貴族魔人に対抗できる戦力は今の人間には存在しない。
ミスターハワードの言う通り、エクスプローラの底上げが必要ですね。
ミスノガミ。貴重な情報をありがとう。
この先もジャパンには期待してますよ。』
野神:「承知です。ミスヂューガ。」
2大国のうち、この諸葛会長は常に世界を見ている。少なくとも協会としては、アメリカよりむしろ中国と同盟を組みたいと思っている。
しかし、歴史的に国としてはアメリカとの同盟関係を破棄することは出来ない。
表向きはアメリカとの同盟を継続しつつも、すでに協力体制は継続できないと考えていた。
アメリカとしても、情報戦で後手を踏んだ今回の緊急会議で、プライドを踏み潰された事により、一層日本より早く、有効な情報を取り、また、一番にキャッスルを踏破して面目を保つ必要があると考えている。
このあとの会議では、王とは何か?と言う議論が始まったが有効な結論はなく会議は終了した。
その後、世界では魔物からの防衛に対する整備がなされ、一方、EG5でのキャッスル踏破に向けた競争が始まって行く。
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