第26話 カレンの行きたいところ

 ◇◇◇◇◇


 午前中のプチパンダ討伐を終えて、少し離れたところで、みんなで少し遅い昼休憩に入っていた。

 食事の間、カレンは美紅といろいろ話をしていた。横で龍太郎が黙って聞いている。


美紅:「カレンさん。

 午後からはどこに行くんですか?」


カレン:「うん。カピカピバラだね。」


美紅:「じゃあ、ここから近いですね。」


カレン:「美紅ちゃんは行ったことある?」


美紅:「はい、ありますよ。

 初級と呼ばれるところはほとんど網羅してると思います。」


カレン:「へえ。どれくらいの周期で狩りしてる?」


美紅:「今は休息日を入れるようになりましたけど、最初の方は毎日潜ってましたね。

 早くレベルを上げなくっちゃと思って。

 初級だとそんなに苦じゃないんで。」


カレン:「へえ。だからか。

 私たちより動きが良いから、レベル高そうだしね。

 頑張ったんだね!」


美紅:「はい!頑張りましたよ!

 そのおかげで、カレンさんとパーティ組むことが出来て夢のようです。」


 へえ。すごいな。

 ちゃんと努力してるんだな。


カレン:「うんうん。そっかー。

 私は装備が揃うまでは大変だったよ。

 非戦闘系だからね。」


美紅:「そうなんですね。

 でも、装備すごいですよね!?

 Aランクでもそんなの着けてませんしね。」


カレン:「うん。これのおかげだね。

 あ、そうだ。美紅ちゃんはランキング何位だったの?

 私たちのは知ってるんだよね?」


美紅:「はい、知ってますよ。

 私は2790位でした。

 もう少し、行ってるかなぁって思ったんですけど、意外に上がいるんだなと思いました。」


 く!半年足らずで2790位かよ。

 俺の1年半は?努力が足りないのか?


カレン:「へえ。すごいね。なんか目標ってあるの?」


美紅:「それは、カレンさんのクランに入ることだったんで、他の目標は、考えてなかったです。」


カレン:「あ、そっか。そうだね。」


 ん?なぜ、俺の方を見る?


美紅:「カレンさんは何か目標はあるんですか?」


 ほぅ。それは聞いたことがなかったな。


カレン:「ん?私?えーっとね。

 まあ、すぐには無理だと思うんだけど、行ってみたいところがあるんだよね。

 そこに行ってみたいかな。」


美紅:「えー!どこですか?

 私も一緒に行ってみたいです!」


 ほぅ。行ってみたいところか。どこだろ?


カレン:「んーと。今は言えないかな。

 クランに入ったら教えてあげられるかも。」


美紅:「えー!この人は知ってるんですか?」


 ん?この人って俺?知らないよ。


カレン:「そうだね。知ってるかもね。」


 え?いやいや、俺は知らないからね!


美紅:「むー!」


 いや、なぜ俺を見る!?


龍太郎:「おい!俺は知らないからな!」


カレン:「天堂くんは知ってると思うよ。

 黄色く光るところだよ!」


龍太郎:「あー。それな。」


美紅:「むー!やっぱ知ってるんじゃないの!?」


龍太郎:「いや、それは知ってるけど、本当に知らなかったんだよ!」


美紅:「何言ってんのよ!嘘つき!変態!」


龍太郎:「いや……本当に……。」


 横で夢咲さんが笑ってる。

 ハメられた!完全にハメられたー!


 もう完全に俺への敵対心ライバルしんがメラメラと急上昇してる!

 本当に勘弁してください!



 でも、黄色く光るところか。

 確かに俺も気になってんだよなぁ。

 なんだろうな。あれ。

 俺も夢咲さんの目標に乗っかるかなぁ。

 何の目標もなくやって来たから、それも良いのかもしれない。

 ものすごく、長い道のりだと思うけど、目標はあった方がいいよな!よし!


龍太郎:「夢咲さん!!」


カレン:「え?何?怒っちゃった?」


龍太郎:「俺もそれ目標にするよ!黄色く光るやつ!」


カレン:「え?あー、そうなの?

 じゃあ、もうそれって、ゴッドブレスユー!の目標だよね!

 うん!一緒にがんばろ!」


美紅:「えー!?私も混ぜてくださいよー!

 むー!あんたからもお願いしなさいよ!」



 そのあとも、なんやかんやのわちゃわちゃが続いたが、結局、美紅のクラン加入は保留。

 それって俺のせいなのか?


 後日、クランハウスD−318号室の壁には、大きな文字で書かれた1枚の紙が掲示されるのであった。


【打倒!黄色く光るやつ!!】



 ◇◇◇◇◇



 それから、先ほどの竹林地区から少し離れたところにある水辺近くの雑林地区に移動。

 ここがカピカピバラの狩場になる。


龍太郎:「結構いるな。」


カレン:「うん、早速行っちゃう?」


 着いて間もなく、戦闘開始!

 先ほどと同じく、3人が3方向に分かれてカピカピバラの周囲から攻撃を仕掛けた。

 すでにカレンと美紅は戦闘中!


 カピカピバラ。ずんぐりモフモフなカピバラのような初期モンスターの一種。

 ちょっと間抜けな顔のとおり温厚でまったく物理攻撃はしてこない。

 その代わり、近づいて来た敵に抱きつく。

 その力は強く、振り解くのにかなりの力を要する。

 抱きつかれたまま放置すると、その抱きつかれた者は、カピカピに干からびて死んでしまうことから、カピカピバラと名付けられた。



 龍太郎は、例の如く、カピカピバラのスキルチェックからスタート!


【固有超能】乾燥かんそう


 ふーん。そのままだな。

 やっぱり、こいつもスキルか。


 よっしゃ!行くぜ!


 ストリートファイター龍太郎は、抱きつきに来たカピカピバラの腹に掌底!

 からの〜衝撃波!x2!(両手)


 ふっ。俺は生まれ変わったんだぜ!


 見事!一撃でYOU WIN!


 

〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【乾燥】を登録しますか?〉


 登録します!


〈ピピプピプ……超能【乾燥】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【乾燥】の解放に成功しました。〉


 おっしゃ!またも成功!次!


〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【乾燥】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【乾燥】は超能【浄化】へと進化しました。〉


 おっしゃ!素敵!ファインプレー!

 進化の仕方が素敵すぎる!


 このスキルは、通常は非戦闘系に属するものなのだが、一部のモンスターには戦闘系としても有効になるハイブリッド系と呼ばれている。


 せっかくだから、ちょっと、自分に使ってみよう!


 浄化!


 うおー!スッキリするー!

 汚れもスッキリ!頭もスッキリ!

 綺麗さっぱり、浄化効果!気持ちええ!

 身体の疲労はスッキリとはいかないらしいが、それは回復系だもんな。


 よし!次行くぞ!


 リフレッシュ龍太郎は、次々とカピカピバラを討伐していく。


 周りを見ると、どーもカレンの装備肉弾戦はカピカピバラに相性が悪いみたいで、相性の良い美紅と龍太郎がサポートに入るという形で、無事に第一次討伐が終了!

 コア剥ぎ取りタイムに突入した。


カレン:「なんか、ごめんね。

 久しぶりだったんだけど、やっぱり相性良くないみたい。」


美紅:「そうみたいですね。

 装備が良くても抱きつかれてしまうと効果ないですもんね。

 次からは私とこの人で行きましょうか?」


 この人って俺のことだよな。


カレン:「ううん。大丈夫。がんばるから。」


龍太郎:「いや、夢咲さん。

 今日はこれくらいで良いんじゃないか?

 午前中に結構押したからちょっと早いけど、もういい時間だよな。」


 龍太郎的には、すでにスキルをゲットしたので、あえてカレンの危険になるようなことは避けるべきだと考えてのことだが、カレンがすんなり引いてくれるか?


カレン:「うーん。ごめんね。そうしよっか?」


美紅:「そうですね。そうしましょう!

 あんたもたまには気が利くじゃない。」


 良かった。安全重視だもんな。


 そして、コア剥ぎ取りも終了して、そろそろ帰ろうとした時……。


カレン:「ん?天堂くん?

 なぜ、そんなに綺麗なの?」


美紅:「あ!よく見たらそうですよね?

 あんた、それって浄化じゃないの?」


 ギクッ!


 しまった!やっちまったー!

 つい、さっき自分に浄化してしまった。

 だって、スッキリ気持ちいんだもーん!


カレン:「天堂くん!浄化使えるの?」


美紅:「いや、絶対そうですよ!

 私、アメリカの情報動画で見たことありますから、これは浄化ですよ!」


 えーーー?動画で見たことあるのー?

 もう、誤魔化せないかも……。


 龍太郎、痛恨の一撃!

 どうする?

 さあ、どうする?


 ◇◇◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る