第86話 ドライバーとしての危機
「こうやって集まってもらったのも他ではない」
「はい。何でしょう。キャ○テン=ハーロック」
ミクルが目尻を指で上げて、普段の可愛さとは似合いもしない勇ましい顔になる。
「あんな、ウチは宇宙海賊やなくて、タクシー運転手や!」
「またまた。伝説のロボットの義手を隠し持ってるんでしょ?」
「ウチは人造人間かい!」
それで持って、義手が包丁になって、もう片手の義手でフライパンを宙で操りながら、
口からの光線ビームで地球(目玉焼き)は壊滅的なダメージへ……。
……って、ただの失敗作の料理でそんなわけあるか。
「ミクルちゃん、こうなれば実力行使ですわ」
「リンカがケセラちゃんの背中を担ぎますから、ミクルちゃんは両足を持ってくれません?」
「了解です」
ミクルが足をリンカが胴体を持って、ケセラの体を部屋から出そうとする。
「ちょっと待て、そうやないやろ?」
「もうワガママな人ですね」
「どっちがだよ‼ ええからウチを下ろせ」
「はいはい。それでは一名様、天空の庭へご案内ー‼」
「うわっ、揺らすなや!?」
ミクルとリンカが担いでいたケセラを放り投げようとする。
「危ないな、物みたいな投げ方もすな‼」
「ケセラちゃん、天国というものはそんなものですわ」
「ウチは逝くとは一度も言ってないで?」
無事に地球に降りたケセラがやりたかったこと。
まずはこの三人の説教(ジーラは爆睡の容疑)から始まった──。
****
「──こうやって集まってもらったのも他ではない」
「……ひょっとしてリテイク?」
「いいからジーラもウチの話を聞けや」
本日、二度目の出だしとなる会議室。
ケセラが咳払いをして本題に入る。
その表情はいつにもまして険しかった。
「実はな、ウチらのグループの顧客の実績がほとんどなくてな、赤字な状態なんや。このままいくとウチら四人は解雇の可能性だってあるんやで」
「すなわち、もうリンカたちはここでは働けないということかしら?」
「……わーい、三食昼寝つき」
元からニート希望だったジーラが歓喜な顔つきで大きく喜びを表現する。
「あんなあ、お金が貰えなくなるんやで? そんなに気楽でいいん?」
「世の中、お金が全てではありませんわ」
「そうそう。打ち出の小槌を探せばいいのですから」
「……ヤ○オクの出番」
「あんたらの頭の中身は平和やな」
小槌を振って、お金ザクザクのアイテムなんて使うと自堕落になりそうだなと思うケセラ。
「それでや、自主退職するか、給料が減っても、まだこの運転手でいたいのか、二卓の選択や」
「それで私たちを読んだのですね」
ケセラがテーブルに着いている三人の前に契約書を並べる。
「期間は二週間ある。どうするかよく考えて記入をしてや」
身に覚えがないミクルたちは紙切れを見つめながら不思議そうに首を傾げる。
「……ふむ。これが婚姻届というものか」
「ジーラ、あんたの目は腐ってんのか‼」
「……人はこれを人生の墓場と呼ぶ」
「勝手に死亡フラグを立てんな!」
四人のタクシードライバーとしての命運はいかに!
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