第28話 イタイので天職目指して三千Re:
「……では、この剣と盾を持って」
ジーラ漫画家から伝説の武器と防具を渡され、勇者ケセラは思い悩んでいた。
何を思い悩んでいるかというと、発端はその道具にあるらしい。
「ただの割り箸と鍋のフタじゃん。これに何の意味が?」
これで食卓を囲めと言われても、肝心の鍋がないと意味がない。
具材をコトコト煮込んだ美味しい鍋料理が地球を救うのだから。
「……自分としては作風のイメージ」
「はあ? 何の?」
ケセラは何も知らないままで割り箸を構える。
この状態でカップ麺が出れば、いい構図になるだろう。
攻撃は出来上がったあちちなラーメンを食べるのみだが……。
「要するに今描いてるアクションシーンでの生の動きが見たいわけですわ」
「リンカ、今の言葉足らずでよく分かるな」
「まあ、ジーラとは小さい頃からの付き合いですからね」
ケセラがリンカの言いっぷりに驚きながら、人間の友情の気高さに胸を打たれる。
だけど、箸とフタを持って、お話として考えられるのは、人間の気高さと言うより、ただの腹ペコオオカミの話に近いものがある。
「乙女通しのお付き合い……。何て
ミクルがうっとりしながら自分の世界に入ってしまった。
こうなれば自力での復帰までの時間は無いに等しい。
毎回、面倒なのであまり関わりたくないのが本心だが……。
「まあ。ミクルちゃんの瞳孔が開いたままですわ」
しかし、今回はあのリンカが検視官として、立派になってやってきた。
検視できる腕前になる前に何回、刑事の職業を転生したのだろうか。
「いや、ボーとしてないで止めろや」
……と思いきや、いつものリンカらしく、そうでもないらしい。
「……とにかくケセラは勇者であり、モンスターのミクルスライムと戦う所からスタート」
ジーラ漫画家が早速、漫画のシナリオを練り始めた。
物語にはまぶたを擦りながら起床ではなく、起承転結が大切である。
「スタートじゃねーよ!」
でもジーラ漫画家の策略は勇者ケセラには通用しなかったようだ。
スタートダッシュは手強いよ。
「……リスタート?」
ジーラ漫画家が一つの答えを導きだしたが、ただ頭文字にRe:が付いただけである。
そう、ゼロから始めようがない現実生活であった。
天然成分な野菜生活のジュースとはちょっと違う。
「あたかも前にやったようなリアリティー増しで言うなや!!」
今まで怒りを堪えていたケセラが逆ギレして、ジーラ漫画家にその怒りの
向けた先にはリアル増しな大きなカジキマグロでも釣れるだろうか。
「もう、先生違いますわよ」
「おおっ、親友。ガツンと言ってやれ!!」
リンカがこの場を仕切り直すようにコホンと咳払いする。
真のリーダーでもあるリンカ隊長よ、己のド根性を見せてくれ!
「この場合、リプレイですわ」
「面白おかしく再生すな!」
YouT○beの再生数がどれくらい伸びるかは知らないが、こんな悪趣味なコントのような映像を誰が観るのだろうか……。
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