46話 言い伝え

「次はどこに行くんだ?」


 俺はノレジに問いかける。


「じゃあ国の中心部にあるお城を見に行きましょう! 今も国王が住む由緒正しい建物なんですよ!」


 ノレジは意気揚々に答えると再び進みだした。


 そこで、俺は先ほどの庭園について気になったことがあったので聞いてみることにした。


「ノレジ、ほんとに庭園に入っても大丈夫だったのか?」


「ええ! おばあは僕が小さい頃からお世話になってたんですよ! だから今でもたまに会いに行ってるんです!」


「昔からの付き合いか」


「はい! おばあは耳が遠くて、大きい声じゃないと聴こえないんです! だから僕も自然と大きな声を出すようになりました! まあそのおかげてよく五月蠅いって言われるんですけどね……」


 そう言うとノレジはすこし落ち込む。


「元気なのはいいことでしょ」


 ハルが後ろからノレジを励ます。少し元気が出たみたいだった。


「そうそう! さっきの話の続きをしましょうか!」


 思い出したかのようにハルに向かって提案するノレジ。


 何の話をしていたんだろうか。


「さっきは何の話をしてたんだ?」


「えーと、三神獣の話から勇者の話をしてましたね! 勇者もまたあんまり情報がないんですよ。何しろ身を隠したり死んだりしてる人が多いですから」


「そういう情報はどこで集めてるんだ?」


「図書館の本とか人に聞いたりとか! まあ噂や嘘なんかもいっぱいありますけどね。そういうのを見極めなくてはいけないのでちょっと大変です」


「なるほどね。俺にも少し聞かせてくれないか?」


「いいですよ! 勇者の話でしょうか!」


 ノレジは目を輝かせる。


「ああそうだ。ぜひノレジのとっておきの話を聞きたい」


「わかりました! とっておきですか、そうですね……。じゃあ『言い伝え』はどうでしょう!」


「それは何だ?」


「知らないみたいなのでちょうどよかったです! えーとですね……」


 ノレジは懐からメモ帳のようなものを取り出す。


「『魔の勇者が現れるとき、時同じくして三人の勇者が現れる。それぞれが特異な能力を持ち、この地に立つ。全ては守るモノと壊すモノ。世界の破壊は魔の勇者の所業によって行われるであろう。世界の破壊を防ぎたければ、三人の勇者が魔の勇者を殺すがいい。さすれば、世界の秩序は保たれ、勇者は未来を捨て新たな道を進むであろう。』」


 ノレジは今までとは違い静かに読み上げる。


「まあ、これは読んだ本が少しわかりやすいように言い方を変えてるので原文ではないですが、概ねこんなことが『言い伝え』として残っているそうです!」


 少し補足をしてくれる。


「……それがどういう意味を持つのか解明はされているのか?」


「解明っていうか……。魔の勇者はもう実際に現れましたしね」


「……え」


 バレてるのか? 俺がその勇者に当てはまる条件を持っていることを。


 妙な焦りと緊迫感が体を包む。


 まずい。どうする。


「まあすでに殺されましたけどね。


「ちょっと、待て」


「? わかりました!」


 殺された? いや、俺は生きてるよな。


 さも当然のことを反芻する。


 あと、

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